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ニューヨーク・シティ
1981年 5月


注釈

KATHRYN:キャサリン:(文脈では)おそらくアートの姪

LOCH LOMOND:ロッホ・ローモンド【ローモンド湖】:スコットランド中央部、ドンバートンの北部に位置する湖 【訳注:lochはスコットランド語で湖の意】
(同名の)スコットランドの民謡:"Oh, you'll take the high road and I'll take the low road, and I'll be in Scotland before you: But me and my true love will never meet again, on the bonnie, bonnie banks of Loch Lomond." 
「ああ、君は本街道を行き、僕は裏道を行く。僕は君より先にスコットランドに着くだろう。でも僕と真実の恋人は2度と会うことはないだろう、あの美しい、美しい、ローモンド湖の岸辺で。」

PEZ:ペッツ:Pez-Haas, Inc.製のキャンディ。取り出し口の部分に色々なキャラクターを使ったディスペンサーに入っている。
【訳者注:日本でもよくスーパーで売られている】

【訳者注釈】

DAZZLING:目もくらむ[まばゆい]ばかりの,眩惑(げんわく)的な,めくるめく

LIP GLOSS:リップグロス:唇につやをつける化粧品

RADIANT:光を放つ,輝く;明るい,燦然(さんぜん)たる

ROOTBEAR:ルートビア:砂糖とイーストで発酵させた根・樹皮・草のジュースにシロップで味付けした炭酸飲料

WAKE:波の跡、航跡:通った道、跡
 
 

解説
この詩はニューヨーク・シティを観光した一日を、時間の経過にそって描いている。アートは(十中八九)兄弟のどちらかと、姪のキャサリンの2人を、みんなで楽しめそうなところへ観光に連れていっているところである。

これは、想像力を働かせて、彼らがどんな一日を過ごしたのか考えるだけで楽しくなる詩である。次の解釈はほんの一例。

キャサリンとパパは、アートに会う前に買い物をしてきた。彼女は香りつきのものを探していて、風船ガムの香りの消しゴムと、ルートビアの匂いの"lip gloss brush"「リップ・グロス・ブラシ」、それに"a bottle of cologne"「コロン一瓶」を買ってきた。キャサリンとパパがアートおじさんのアパートに着いたとき、彼女は"cautious and curious"「慎重かつ好奇心でいっぱい」だった。彼女はアートの家にあるものが気に入った。アートのやりかけのジグソーパズル、「瞑想」用に使っていたIBMのタイプライター、そしてピアノ。

もしかしたら、彼女はチェスのセットを見つけたのかも。もしくはパパが、アートがチェスを好きなことを教えたのかも。でもキャサリンは詮索好きだったから、こう尋ねた。"Do you play chess?"「チェスをするの?」

アートとキャサリンと彼女のパパは、おもしろいし、3人だけになれるから、リムジンに乗った。エンパイア・ステート・ビルに行って、エレベーターでてっぺんまで上った。キャサリンはゆっくりと時間をかけてニューヨークを眺めた。静かで美しい彼女を見て、アートはスコットランドのロッホ・ローランドを思い出した。

3人は食料雑貨店に立ち寄り、キャサリンはグレープソーダとチョコレートとペッツのディスペンサー入りキャンディを選んだ。3人で無理やり電話ボックスに入ろうとしたときにはみんな大笑いした。アートと彼のお兄さん(か弟)は回転木馬までセントラル・パークを通って連れていってくれる馬車を楽しんだ。キャサリンは回転木馬の馬を気に入って、内側の馬に乗ることにした。

キャサリンにとって一番面白かったのはセントラル・パークの運動場【訳注:セントラル・パーク内にいくつかある、子供用の遊具が置いてあるミニ公園】だった。それは彼女にとって、"the cat's whiskers"(ねこのひげ)だった。運動場にいる間に、アートはサインを頼まれた。キャサリンはなんのことかあまり分からなかったけれど、自分もおじさんにサインをもらうことにした。アートは"tried to sign [her] nose"([彼女の]鼻にサインしようとした)。キャサリンは笑い転げた。アートもパパも、笑い出した。"Art Garfunkel"は5歳の女の子のちっちゃな鼻には書けそうにもなかった。

午後も終わりに近づいた。パパとおじさんが歩道で話している間、"white cotton dress with pale pink satin"「淡いピンクのサテンつきの白いコットンの服」を着たキャサリンは"in the corner of the limousine"「リムジンのすみっこ」に座っていた。

パパは"She'll never be five again"「あの子はもう2度と5歳になることはないんだね」と言った。アートはリムジンの中にかがみこんで、キャサリンにさよならのキスをした。彼は姪っ子にキスをして、君のおかげで今日は本当に楽しかったよと、お礼を言った。アートは、彼女の父親は子育てに成功したなぁ、と思い…そして自分が子供を持つこと、について考えた。


備考

アートの弟、ジェローム(ジェリー) (Jerome/Jerry)はコンピューター・サイエンスの専門家として知られている。コボル言語【訳注:高水準の事務処理用共通プログラム言語の一種】に関する論文を多数発表している。

お兄さんのジュールス(Jules)は Still Water の献辞に名前があげられている。また、アートの1988年のアルバム、Lefty のジャケット写真の撮影者としてアルバムにクレジットされている。


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