イスラーム建築の種別 |
そのことが 建築にも反映していて、ヨーロッパにおいては 宗教建築と世俗建築が 別のスタイルをとるのに対して、イスラーム建築においては、宗教建築としてのモスクが、世俗建築としての隊商宿や病院などと ほとんど同一の建築語彙によって建てられている。まして 両者の中間的存在である学院や墓廟は、モスクと ほとんど何の区別もない。 別の言い方をするなら、イスラーム建築というのは、アーチやドーム、ヴォールトといった きわめて初源的な構造要素の 反復と組み合わせで構成された、ムスリムのための あらゆる用途の建物をさすのである。時としてそれは ある種の退屈さを導きもするが、建築の原型的な構築性といった性格が、他のどんな文明の建築よりも 強く発揮される。
イスラーム建築が モスク以外に包含する建築種別には、住宅や宮殿、学院や修道場、隊商宿や浴場、病院や給水所、さらには聖者や王侯のための墓廟などがある。そしてまたそれらが庭園と組み合わせられながら集合して、宮廷地区や商業地区、公共施設複合体や城塞、そして都市全体をも構成していった。この章では、そうした多様なイスラーム建築の種々相を、機能別に見ていくことにする。 |