Diff Lockers その2


 前回で溶接デフロックはひとまず成功したので、今回はその後の継続テストの様子とSOFカットの模様をお伝えしよう。


●オフロードコース

 こちらはみなさんご存じのモビリティーパーク。某紙の取材があるというので、テストがてら同行させて頂いた。

 モーグルのコースはこんな感じ。(自分の写真は撮れな〜い! 写真は、おっさん@溶接デフロック)
 走った感じとしては、グリップの状況によりステアリングへの入力がダイナミックに変化するので気を抜いてステアしているとどっちの方向に進むのか分からなが、フロントLSDのジムニーよりは全然まともで実用には全く差し支えない。また、トルクフローが起こらないためハンドルを切った方向に進むので、多少足場の悪いところでも全然走り易い。但し、泥が深くなればデフロックも全く意味がないので、T川やすばらしい道などの関東ローム層系のフィールドでは効果が薄いと思われる。

 こちらはダートでのコーナー。FF車のような感じで、インリフト気味になってもフロントが前に出ていくので意外と具合が良い。



●ロック

 お次は秘密の花園でのテスト。やはり『ロックは素晴らしい!』 の一言に尽きる。乗り上げ性能が格段に良くなったので、ジムニ的なライン取りができる。(但し、あまり攻めると白煙吹いたりサイドシルが凹むのでRVなUBSとしてはそこそこにしておく)





●問題点

 意外と問題になったのが走行後の動作。通常、仲間内でこういったフィールドに行った場合、適当なセクションをみつけては順番にアタックするといった走りになるのだが、アタック後は後続車があるので足場の良さそうなスペースを見つけて停車することになる。
 で、人の走りを茶化した後は斉発進するワケだが、Ddの場合トランスファのシフトはコンピュータ制御のモーターで行われているため、少しでもトルクが掛かってると抜けない…。(^^;)
当然、斉スタート時は切り返しやUターンしたりする場合が多いので、足場が良いのも手伝って  …曲がんない! >マニュアル・トランスファ車はたぶん問題にならないのだろ〜ね。

 2L(DdのシフトはH←→Lの直線パターン)に出来れば一番良いのだが、トランスファを改造するのは大事になるので、取りあえずはSOFのマニュアルカットを試してみることにした。


●まずは実験

 いきなり作業に入る前に、疑似環境で実験! と言っても、何も難しいことはなく、左のフリーハブをFREEにするだけだ。

  【舗装路】

四駆にすると、ちょっと(たぶん溶接の遊び分)しか曲がらない! かな〜り大回りになる。駆動系にも、かなりのストレスが掛かっている様子。
ハブをFREE(三駆)にすると、ハンドルは重いながらも曲がることは出来る。まずは実用性あり。

  【舗装路直線】

四駆の場合には、当然、普通に走れる。三駆にすると、トルク・ステアがすごい! 気をつけないと事故りそう。

  【ダート】

四駆の場合でもハンドルが多少重い位でそこそこ走れるが、三駆にすると、より、スムーズに曲がることができる。

 そこそこ効果はありそうだが、実用性についてはもう少し試してみないと分からないのでSOFカットを真面目に考えることにした。


●調査

 まずはSOFの動作について調べてみる。SOFは基本的にはドッグクラッチによりドライブシャフトの接続/切断を行っているだけなのだが、バキュームを制御するVSV(2個ある)の動きを理解する必要がある。
 当研究所の資料によると構成は下図のようになっていて、何れのVSVも同タイミングでON/OFFが行われる。

  【二駆】

  【四駆】



●制御方法

 さて、肝心のSOFの制御方法だが、Ddの場合『4WD制御ユニット』と呼ばれるECU(エレクトロニック・コントロールユニットと呼ばれるコンピュータらきしもの)でコントロールされている。センターコンソールの下にあるのがそれだ。

 取り出してコネクタの隙間から中を覗いてみると、中身はほとんど空っぽでリレーの後ろに少量の電子部品がある模様。詳しくは確認することが出来なかったが、4〜8ビット程度のマイコンでも載っているのだろ〜か? やけに軽いユニットである。 >怪しい…。

 因みに、SOFシステム全体の制御タイミングは下図の通りで、これを見るとちゃんとコンピュータで制御している模様。

 回路図の方をチェックすると、下図の通りでインパネの4WDスイッチをトリガーにしてトランスファのモーターとVSVを制御している。

 テスターを当てて調べてみると、VSVはダイレクトに+12Vで制御されているようだ。各センサについては、+5Vで吊っておきショートでONを検出しているのかと思ったが、実測では+2.5V程度しか出ていない…? 流している電流がごくごく微量でテスタの負荷で電圧ドロップしたのだろ〜か? シフトが失敗した場合には3回リトライして動作を中断するし、動作中は4WDの表示が2Hzで点滅、シフト失敗による動作中断は4Hzで点滅するなど、マイコンの類の物で制御されているようだ。


●実現方式検討

 さて、SOFカットの方法だが、各センサの動きによる動作をチェックすればこのユニットの機能が分かるのだが、それも大変なので安直にVSVを直接制御することにした。制御と言っても+12VをON/OFFするだけなので大した仕掛けではない。また、SOFの動作状態もモニターしたいので状態を示すランプ(LED)が欲しい。

 SOFのシフトを検出する10番ピンの電圧は、二駆がHIGH(+5V?)、四駆がLOW(0V)なのでレベルを反転してやる必要がある。当初、トランジスタを使って実現することも考えたが、安直にロジックICのNOT回路を使って反転できないものだろ〜かと考えた。
 データシートを入手して調べてみると、汎用のロジックIC 74HC04(Hex Inverter)で、入力電流は1μA程度、出力電流は25mA程度なので、消費電流も少なくLEDの表示位は出来そうだ。(素人的発想!)
 で、考えたのがコレ! ロジックICでLEDを直接ドライブしてしまおうという恐ろしい回路だ!試しに、74HC04を入手し接続してみたら、見事に点灯!

 しかし、あまりにも乱暴なのでこうなった。こちらの方がまだマシだろう。 >機能すれば問題な〜し!

 結果、回路図(という程の物でも無いが)こんな感じ。VSVはスイッチで直接切り替えもできるがスイッチの選択肢を増やしたいのでリレー駆動とした。



●実験

 上記を元にユニバーサル基板に追加回路を組んでみた。右側の端子が、電源とスイッチ&LED。左側の端子は4WDコントロールユニット系への入出力。

 74HC04は三端子レギュレータの下に隠れている。

 ケースに収めたところ。

 設置作業中! スイッチを4WDスイッチの近所にしたかったので、アイドルアップスイッチを右側に移設する必要があり、大騒ぎな状態となってしまった。おまけに、雨も降ってきて室内でのハンダ付け作業となってしまった。(^^;)

 VSVへの配線はノーマルをカットしてギボシ端子で接続。(戻すことも考えて) アクスルポジションスイッチの信号はエレクトロタップで取り出す。



●結果

 ハブをロックして四駆へシフト! LED点灯〜! >まずは、めでたしめでたし。
 続いて、SOFカットスイッチOFF〜! LED消灯〜! >さらに、めでたしめでたし。
 と思いきや、よく見るとインパネの4WDの表示も2Hzで点滅! …なぬ!?

 オ〜マイガ〜〜〜ッ!

 どうやら、四駆シフト完了後もアクスルポジションスイッチのON/OFFは有効な様子。

 ま、動作中も2Hzで点滅するから、純粋にロック/解除を認識する意味では良いカモ…。
  >と、自分を納得させる。

 さて、肝心のSOFのマニュアル解除の方は、大きなトルクが掛かっていなければ割と素直に抜ける。ロックの方もレスポンスは良く、こちらの方はまずまず。 >たぶん、スプラインの掛かりが浅いためだろう。

 因みに、マニュアル・トランスファ車の場合には、トランスファポジションスイッチで四駆へのシフトを検出しVSVを切り替えている。(要はスイッチ1個でOKだね。Ddの場合もそれでも実現可能かも知れない。但し、TOD車の場は、もっと複雑だろうなぁ…。)

 作業後のテスト風景。雨にも関わらずDiff Lockers予備軍の怪しい光りがT川に灯る。


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