ブリス 1992年03年25日〜 2000年12月03日 享年:8才8ヶ月 |
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アメリカンショートヘア (シルバータビー) オス |
― その2 ―
つれあいと旅行に行くことになって、私の実家でブリスを預かってもらったことがありました。旅行そのものは2週間ほどだったのですが、その後しばらく居候させてもらいました。
預 かってもらったときにまだ若かったということもありましたが、ブリスはののと違ってとにかく元気一杯だったので、両親がブリスに慣れるまでは(ブリスが両 親に、ではありません)ずいぶん迷惑をかけてしまったようです。突然ダーッと走り出して、椅子に飛び乗ったのはいいのですが、勢いあまって椅子が倒れて、 みごとサッシの窓ガラスを割ってしまいました。両親は、しかたなく窓にダンボールかなにかを貼り付けて、しばらく過ごしたということです。
ま たそのころブリスはなぜか慢性的な下痢でした。ブリードの猫(犬)には多い、一種の「体質」のようです。元気だったので下痢そのものはなんでもありませ ん。問題だったのは、ブリスの動きの激しさに加えて下痢気味だったということなのです。夜ふとんを敷くと、ふとんの動きがおもしろいらしくて、特に若い猫 はじゃれつくことがよくあります。ブリスは爪をたてながらふとんに突進するたびに、おなかに力が入って、出るものが出てしまうということなのでした。せっ かくこれから寝ようと思ったところでこれですから、毎晩両親もたまったものではありません(その節は大変お世話になりました)。
当 時両親の家には、2匹の猫がいました。1匹は「奈々」という名前のシャムネコ(メス、血統書なし)で、私が高校生のころにきた猫でした。奈々はとても気の 強い猫でしたが、年のせいもあってブリスとは上手に折り合ってくれていたようです。奈々はもう何年も前にかなりの高齢で亡くなりました。もう1匹は「茶々 丸」という三毛猫(メス)でした。茶々丸は、庭で茶殻のなかに混じっているアラレを拾って食べていた元野良で、警戒心と猜疑心が強く、基本的に母にしか慣 れていませんでした。ですから、ブリスが家にやってくると、「裏のお山」と呼んでいる場所に逃げてゆくのです。そうした中で、ブリスはずっとまるで自分の 家にいるように自由に振る舞っていたそうです。ですから、その後、しばらくぶりに実家にブリスを連れて行ったときも、勝手知ったるなんとかで、テーブルの 端っこにちょこんと座って、にぼしやかつをぶしを母におねだりしていました。
ブリスはそういう猫でしたから、のののような落ち 着いたふんわりとした雰囲気はまったくもちあわせていませんでした。でも、そのしぐさや表情に愛嬌がありましたし、自分のテリトリーではない場所での強引 なまでの「遠慮のなさ」に、ブリスらしさがよく表れていました。ブリスの居候生活が終わったときは、さすがに猫好きの母もほっとしたらしいのですが、結局 その後、両親はこんなブリスもとってもかわいがってくれました。
そういえば、私はブリスでも大怪我をしたことがあります。ブリ スは「ブラインド」を操作するときの、鋭くて高い音が苦手でした。ひもを引いてブラインドを上げるとき、逆にひもをゆるめてブラインドを下げるときのあの 「シャーッ」という音です。ブリスはこの音に驚くとやみくもに突っ走るくせがありましたので、勢いよくブラインドを上げ下げしないように注意していたので す。
それが、たまたま私が床に横になっていて、たまたまブリスが私の頭のところにいたのです。そこに、つれあいが勢いよくブラ インドのひもをゆるめたものだから、ブリスはその音を聞いて驚いてしまって、私の顔を踏みつけて逃げていきました。一瞬なにが起こったのか分かりませんで したが、顔面に激痛が走りました。みてみると、眉間をちょっとはずれたところに小さいけれど深い傷がついていました。どうみてもブリスの爪の跡です。その ほかにも、四足で蹴ったらしい小さな傷がいくつかついていました。
痛さというのは、まあ時間が経てばなんとかおさまっていきま す。一番困ったのは、その顔で仕事に行かなければならなかったことです。事故当日は、傷はいかにも「ちょっとした切り傷かなにかですよ」というふうにみえ ました。それが日が経つにつれ、傷口は変な風にもりあがるし、周りは内出血で赤から紫色、黄色と変化していきます。それまではなんともなかったと思えた箇 所も、奇妙な顔色になっていました。とても化粧でかくせるものではありませんでした。それでも仕事を休むわけにもいきませんから、普通どおりでかけまし た。職場では会う人いちいちに「実は猫がこれこれこうで」と説明するのもなんですから、適当に過ごしていました。それが、1週間ほど経った昼食のときに、 同僚が、なにげないふうを装って、でもかなり不自然に私の傷をちらちら見ていることに気づきました。私も居心地が悪かったので、「いやー、これ、猫なんで すよ」と、ことの経緯を話したら、その人いわく「もしかしたら、家庭内暴力かもしれないと思って、ずっと聞けなかった」とのこと。今後もし同じようなこと があったら、さっさと事実を話してしまったほうが無難だということが分かりました。
(2001年09月28日、記)
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