Kissの温度 S Edtion 












時は流れ・・
僕は少年から男になり、彼女は少女から女になった。


戦いが終わっても僕達を取り巻く環境に大した変化はなく、僕は変わらずに決戦兵器の
パイロット。

そして彼女も同様。


それでも世の中は常に変化を求めるようで・・

僕と彼女・・アスカとの関係も、恋人と呼ばれる関係に発展していた。


同居しているから気心がしれた。

ただ接点が多かっただけ。

すぐに振られる。


等々、アスカに思いを寄せていた・・いや、今でも諦めていない男達は何も知らずに
僕達の関係をそう言う。

彼らは本当に何も知らない。
僕達は普通の出会いをして普通の恋をしたわけじゃない。

異常な環境に放り込まれ、親から・・信頼していた人から見捨てられ心をすり減らした。

誰も助けてくれず、身近にいた縋ろうとした対象はお互いまだ子供。
自分の気持ちすら素直に言えない子供だった。

それでも僕達は戦い、生き残り・・今ここにいる。



他人には絶対分からない僕達の絆。
お互いの心の奥底までを知り尽くしている関係。


綺麗なところも醜いところも

自慢できる部分も、自分でさえ否定したい部分も

知られたくない秘部まで・・


僕とアスカはそれら全てを、お互い知ってる。
隠し事など無意味。

だから僕は自分の欲望に逆らわない。

キスしたくなればキスするし。
抱きたくなれば抱く。




ただ、場所は考えるけど・・・









<初号機の整備が終わったらさっさと帰ってくるのよ、分かったわね!?>


「わ、分かってるよアスカ」


エントリープラグの中にアスカの声が響き渡る。
緊急の電話だって言うから直接繋いでもらったんだけど、全然緊急じゃない。

この会話、発令所のみんなが聞いてるんだよアスカ・・勘弁してよ。


<大体、何でシンジだけ呼び出すのよ!
アタシ達を破局させる陰謀じゃないでしょうね!>


「そ、そんな事ないよ。
前から初号機の調子が悪いのは、アスカだって知ってたろ?」


<今日は天下御免の日曜日なのよ!
いつもの日曜日ならシンジとお昼頃までのんびりして、それからデートするのがアタシの生活
スタイルなの!>


モニターに映るのは、成長し大人に後一歩と近づいたアスカの綺麗な顔。

アスカが、自分でお金を出してまで料金の高いテレビ電話を入れた理由は未だに分からないけど
これはこれでいいかもしれない。

彼女の怒った顔も、拗ねた顔も・・
全てが僕だけの物と考えれば可愛いもの。


「もうすぐ終わるから、家で大人しく待っててよ」


<・・・仕方ないわね。その代わり、キスしなさい>


「え?・・・・・誰に?」


<アンタ、バカぁ?このアタシに決まってるでしょ!!
モニターに映ってるアタシにキスするのよ!>



瞬間・・

僕は、発令所で爆笑する職員のみんなを想像した。
いや100%の確率で、今頃発令所は爆笑の渦に巻き込まれているだろう。
ミサトさんなんか涙を流して笑っている筈だ。

それが証拠に、眼下に見える整備担当のみんなは腹を抱えて笑ってる。

アスカ、君が身銭を切って購入したテレビ電話の真の使い道・・・
今初めて理解したよ。


<どうしたの?早くしてよ>


彼女は僕の気も知らず、甘い声で誘う。
同時に少しだけ歪んだ頬が、更なる事実を僕に叩きつけた。

アスカはこちらの状況を全て知ってる。

知った上で僕にキスを求めてる。
多分、人に見せつけたいんだろう・・・授業中の教室でキスを迫るくらいだし。


僕は一生、こういうアスカと付き合っていかなければならない。
でも、こんな彼女が好きなんだな・・





ちゅ・・


モニター越しのキスは甘くも何ともない無機質なものだけど、アスカの僕を思う気持ちが
伝わってきたように思えた。


 


管理人のコメント
 「A」Edition に続き、アスカさん暴走中です。(^^;
 学校の暴走っぷりもすごかったですが、今回はネルフにまで。
 しかもそのための アイテム まで用意しておくとは……アスカさん、侮れません。(笑)
 
 しかし、今度こそシリアスかと思いきや……いい意味で裏切ってくれました。(^^;
 またまた、りびどー爆発の作品。
 でらさん、ありがとうございました♪
 
 
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