ざぁぁ・・・ 雨音。 ・・・っ・・。 隠し切れなかった泣き声。 地面を覆い尽くす雨粒。 その中に紛れ込んだ涙。 『新一君?』 園子の抑えられた声。 周りの喧燥の中どこか上滑りして耳に聞こえた。 『蘭・・今日の練習試合。負けちゃったの。』 その時新一は目暮警部に呼ばれて埼玉県某所に居た。 犯人も無事逮捕され、現場は既に撤収作業が行われていた。 ちらりとそちらに目線をやり、自分の役目が既に終わった事を確認すると新一は短く「そっちに行く。」と返事をして携帯を切った。 外はまだ雨が降っている。 練習試合会場だったのは帝丹高校。 パトカーで送ってもらった為、新一は40分程度で戻って来る事が出来た。 気掛かりなのは蘭の状態。 今朝二人で言い争いをした事が裏目に出ていなければ良いが・・・ 足早に体育館に向かうと、丁度渡り廊下の場所で他校の生徒の集団と擦れ違った。 中心に居る女生徒が得意満面の笑顔で何か隣の人間に話している。 「都大会優勝って言っても大した事無かったわ。」 新一は拳を強く握り締めただけでその表情を変える事はなかった。 そのままやり過ごして体育館に入る。 まだ練習試合の熱気が篭ったままの生暖かい空気の中、帝丹空手部の部員が後片付けをしている。 入り口付近に居た生徒が新一に気が付き寄って来た。 「毛利先輩裏庭です。」 心配そうなその表情に新一は小さく笑みを漏らした。 こんなにも自分が大切にされている事を蘭は気が付いているのだろうか? 蘭は本気で自分の状態を誰にも気が付かれていないと思っているのだろうか? そうだとしたら、蘭は大馬鹿だ。 「ありがとう。」 踵を返して体育館を出て行こうとする新一の背中に掛けられる他の部員の声。 「工藤!毛利を頼む!」 ――― 皆があいつを心配してる。 ざぁぁ・・・ 止む気配の無い雨。 強くも無く弱くも無くただ一定調に降り続ける雨。 白い空手着が暗い空間にぽつんと立ち尽くしていた。 「蘭。」 振り向くその顔は苦笑いを浮かべていた。 「新一?事件は片付いたの?」 「ああ。」 前髪から雨の雫が滴れる程濡れそぼった体。 青白い頬。 傘も差さずに一体どのくらいここで雨に濡れていたのか? |