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おいらはこうやって久し振りに青子ちゃんの部屋へとお邪魔することとなった。
最近ご主人様は青子ちゃんの家に来てもこの部屋にまでは上がり込んで来ない。
多分、年頃の可愛い青子ちゃんと青子ちゃんの部屋で二人っきりになるのを避けてるんだろうな。
本当はそれを望んでるくせにいまいちご主人様は押しが弱いと言うか、肝心な所で腰が引けているというか、男らしくない(?)というか、まぁそんな感じなのだ。
全体的に落ち着いたパステルトーンの部屋の中には青子ちゃんの匂いがうっすらと残っている。
なんだかおいらまで変な気分。
小物なんかは所々フリルがついてたりするので、可愛らしいトーンで纏められていて、青子ちゃんらしいなぁと感じたな。
青子ちゃんはおいらの目の前で制服から私服に着替えた。
ああ、おいらの足に今、怪盗キッドが偵察に使用する小型カメラが付いてれば!!
ちょっと早いけど、ご主人様への誕生日プレゼントが出来たのに・・・
実に惜しいなぁ・・・
しょうがない、おいらがご主人様の代わりに隅から隅まで目を皿のようにして見ておこう。
ミルク色の肌と、細い身体と・・・
結構目の毒かも。
おいらだから良いものの、もしここにいるのがご主人様だったら確実に鼻血を噴出していることだろう。
この前、性質の悪い盗撮野郎から奪い取った写真の中に青子ちゃんのいわゆるパンチラ写真が一枚だけ入ってたんだけど、ご主人様、それ手にした途端鼻を押さえて上向いてたからなぁ。
おいらの視線に気が付いてバツが悪そうにしてたっけ。
自分で青子ちゃんのスカート捲る分には幾らか平気な振りが出来るらしいけど、不意打ちは全然心構えが出来てないから駄目らしい。
その違いがおいらには分からないけど、ね。
あ、コレは付けたしだけど、その写真は当然ご主人様の秘密コレクションの中にこっそり付け加えられたし、その写真を撮った男は二度と不埒な真似をしないようにばっちり懲らしめてやったさ。
おいら達ハト軍団がくちばしで容赦なく一斉に突ついてやったから、結構な痛みとトラウマが残ったんじゃね―の?
これからハトを道端で見るたびにきっとあの時の恐怖を思い出すんだろうな。ザマーミロ。
着替え終わった青子ちゃんが小さな小鉢に水を入れておいらの方に差し出してくれる。
それとパンくずを手においらの相手をかいがいしくしてくれた。
おいらは遠慮なくそれらを頂きながら、青子ちゃんの独り言の聞き役を勤める。
青子ちゃんは可愛らしく首を傾げてぽつぽつと喋る。
「快斗に電話したら、迎えに来るって。それまで良い子にしててね。」
「ぐるっぽぅ。(合点承知!)」
「あ〜〜あ。青子、ちょっと憂鬱なんだ。快斗に会うの。」
「ぐるっぽぅ?(へ?な、何で?!ご主人様何かしたの?)」
「青子、今日後輩に聞かれちゃった。『中森先輩は黒羽先輩の何なんですか?』って。あの子、絶対快斗のファンなんだよ〜。嫌だなぁ・・・」
「ぐるっぽぅ!(そんなの気にすることないよ!青子ちゃん!無視無視!無視が一番だよ。)」
「やっぱり、幼馴染ってだけで快斗の傍に居るのって、人から見たら目障りなんだよね。きっと。」
「ぐるっぽぅ。(ただの幼馴染じゃないじゃない!青子ちゃんはご主人様の大切な人なんだよ!)」
「ね。ハトさん。快斗、そういうの、どう思ってるんだろ?」
「ぐるっぽぅ!!(ああっ!もう!おいらが人間の言葉喋れたら!!!もどかしいったらありゃしないよ!)」
おいらは何処となくしょんぼりしている青子ちゃんを慰めようと、その周りをうろうろと歩いた。
ハトに出来る事なんて限られていて、おいらは次第に自分の無力感に打ちのめされる。
青子ちゃんが元気ないとおいらも元気出ないよ。
そんな瑣末な事気にしないでいつもの青子ちゃんに戻ってくれよ。
そんな事を願いながら、一刻も早くご主人様が来る事をおいらは待ち望んだ。
そして待望のベルが鳴る。
「あ、快斗、来たみたい。ちょっと待っててね。」
青子ちゃんのポーカーフェイスはあまり上手でない。
笑顔を浮かべているけど、きっとご主人様は見抜いてくれるだろう。
おいらはご主人様の手腕に期待して、青子ちゃんのベッドの上で丸くなった。
ちょっと動き回ったり頭を使ったりしたから疲れちまったみたいだ。
少しだけ・・・休もう。
おいらは瞳を閉じた。
† TO BE CONTINUED †
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