Dancin on the moon 【11】
「蘭ちゃ〜ん!」
長いドレスの裾を翻しながら青子がたたたっと蘭に走り寄った。
思わず両腕を広げて青子を迎える蘭に、青子も嬉しそうに飛び付く。
ふわりと泳ぐ軽いドレスの裾は二人の歓喜の風に揺らされて、目にも鮮やかに広がった。
何事か内緒話をして二人顔を赤らめて小さく笑い合う。
秘密を持った何処か強烈に惹かれる笑顔に、男性陣は気が気ではなかった。
堂々と抱き合う二人に密かな嫉妬心さえ抱いて、そんな自分を少し恥じ入って、なかなか二人の輪に入っていけない。
蘭が小さく青子に耳打ちして、青子が嬉しそうに微笑んで新一を見る。
「え・・・?」
突如青子の視線を一人占めする事となった新一の戸惑いを余所に、青子は小さく蘭に頷いてみせる。
蘭がそれを受けてぱぁっと花弁が綻ぶような嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「新一!」
弾んだ声がその傍らに立ち尽くす恋人を呼ぶ。
二人の空間が漸く他の人間の空間への出入りを許された事にほっとして、新一と快斗は1歩二人に近付いた。
「お願いが有るんだけど・・・」
「何?」
胸の前で両手を握り瞳をきらきらさせて蘭がちょっぴりおねだり口調で言葉を紡ぐ。
「今日新一の家に皆で泊まっても良い?」
そんな顔でそんな声でお願いされて、新一が断れる筈も無く。
結局精一杯のポーカーフェイスを纏って了承の返事をした。
本当は嬉しいのだけれども。
今日の蘭は人一倍綺麗で、魅力的で、とてもこのまま家になんか帰せやしなかったのだけれども、それを悟られるのはどうにも恥かしくて、渡りに船のこの状況を喜ぶ心を押し隠した。
「みんなって俺も入ってるよな?」
不安そうに青子に尋ねる快斗に青子が悪戯っぽく微笑む。
「嫌だって行っても引き摺って連れてっちゃうから♪」
青子がにこにこと惜しみない笑顔を快斗に向けて、そんな嬉しくなるような事を言う。
蓋をしても溢れてしまう愛しい気持ちを口元に浮かべて、快斗が青子の解れ毛をゆっくりと撫で付けて笑う。
優しい仕種に青子がくすぐったそうに笑い、それがまた強烈に愛しくて愛しくて快斗は破顔した。
到底敵いやしないのだ。
「今日は一晩中騒ぐか。」
宿主がそう言って笑い、許しを得た客が嬉しそうに笑う。
これから過ごす楽しい時間を考えて笑いが止まらない。
「楽しみ〜♪合宿みたい!!」
「本当だねvv」
喜ぶ二人の頭上で男性陣二人が目配せして、ダンスホールに流れていた曲の切れ目にすっと腕を差し出した。
「ラストダンスだ。」
「ほら?」
自分に向けて伸ばされた指にそぉっと手を重ねて、その恋人は可憐にYesと呟いた。
† END †
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