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過活動膀胱 overactive bladder syndrome

 我慢できない尿意を急に感じ、時にトイレに間に合わずに尿をもらすのを過活動膀胱という。過活動膀胱は尿意切迫感が中心症状であり、過活動膀胱と言うためには、尿意切迫感が必ず必要である。しかし過活動膀胱であっても、切迫性尿失禁はないことがある。過活動膀胱と言うために切迫性尿失禁が必ず必要というわけではない。また過活動膀胱は昼間の頻尿と夜間の頻尿を伴うことが多い。
 夜間は6〜8時間ほど眠るが、この睡眠の間は尿に行かないのが正常である。時間が長いのに1回も尿に行かなくてすむのは、睡眠中は抗利尿ホルモンが働き、尿量が少なくなるからである。
 過活動膀胱は英語でoveractive bladder と言うため、OABと略して言うことがある。
 40歳以上の8人に1人が過活動膀胱であると言われ、頻度の高い疾患である。
 過活動膀胱を診断するために、overactive bladder syndrome score (OABSS) という評価尺度が日本のHomma Y.などによって、開発されている。これは過活動膀胱を昼間の尿回数(daytime frequency)、夜間の尿回数(nighttime frequency)、尿意切迫感(urgency)、切迫性尿失禁(urgency incontinence)という4つの症状から評価するものである。
 昼間の尿回数を評価するには、
How many times do you typically urinate from waking in the morning until sleeping at night? (朝目がさめてから、夜寝つくまでに何回尿をしますか。) と聞く。日本人の開発したものであるのに、英文と日本で使われている日本語版にずれがある。日本語版は「朝起きた時から、夜寝るまでに、何回くらい尿をしましたか」とする。この訳では、朝目がさめてから起きるまでに行った尿の回数と、夜床についてから寝つくまでに行った尿の回数が含まれない。英語版では含まれる。
 夜間の尿回数を評価するには、
How many times do you typically wake up to urinate from sleeping at night until waking in the morning? (夜寝ついてから朝目がさめるまでに何回尿をするために目がさめますか。) と聞く。日本語版は「夜寝てから朝起きるまでに、何回くらい尿をするために起きましたか」となっている。日本語版では、夜床についてから寝つくまでに行った尿の回数と朝目がさめてから起きるまでに行った尿の回数が含まれるが、英語版では含まれない。
 尿意切迫感を評価するには、
How often do you have a sudden desire to urinate, which is difficult to defer? (我慢できない尿意を急に感じることは何回ありますか。) と聞く。
 切迫性尿失禁を評価するには、
How often do you leak urine because you cannot defer the sudden desire to urinate? (我慢できない尿意を急に感じて尿をもらしてしまうことは何回ありますか。) と聞く。
 英文では、during the past week の期間のこれらの回数を聞くことになっている。 during the past week を日本語版では、「この1週間」と訳している。「この1週間」とは、「7日前から今日までの7日間」という意味だが、これでは尿意切迫感と切迫性尿失禁の質問の回答の選択項目にある「なし」と「週に1回未満」の項目の意味がなくなる。この7日間で尿意切迫感や切迫性尿失禁が「週に1回未満」というのは、「なし」と同じことになる。わざわざ「週に1回未満」と「なし」を分けた意味がなくなるのである。この場合 past week は過去の1週間という意味にとるべきである。過去の1週間という意味にとれば、先週は週に1回であったが、先先週は週に0回であれば、平均して週に0.5回になり、「週に1回未満」だが、「なし」でない場合が起こり、「週に1回未満」という項目が生きてくる。
 過活動膀胱の群と過活動膀胱でない群に分けて実施した研究では、過活動膀胱の群はOABSSは8.36であったが、過活動膀胱でない群は1.82〜5.14であったと、Homma Y.などは報告している。

参考文献
  1. Homma Y.,Yoshida M.,Seki N.,Yokoyama O.,et.al. 2006. "Symptom assessment tool for overactive bladder syndrome--overactive bladder symptom score." Urology. 2006 Aug;68(2):318-23.
  2. Yi-Ting Lin, Eric Chieh-Lung Chou. 2009. "Assessment of Overactive Bladder (OAB) Symptom Scores" Incont Pelvic Floor Dysfunct 2009; 3(Suppl 1):9-14
  3. 過活動膀胱スクリーニング質問票. https://www.higashino-clinic.com/content/images/oabss.pdf (2012/1/15アクセス)

2012年1月15日作成

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