the holy wings
〜side:Angelique〜






「お前こそが女王に相応しい」

あなたにそういわれる事は嬉しくて、でもとても悲しかった。
私はあなたにとって女王候補。
女王候補として相応しくなければ存在する価値のない人間。
笑顔でそう誉めるあなたが、私の心を知りもしないあなたが憎らしかった。










悲鳴をあげている宇宙。
どうして泣き叫ぶ子を知らぬ振り出来るだろう。
女王になれば。
女王になれば、この子の笑顔を見れるかしら?
あなたの微笑みも。
いつの間にかあなたを想う心も、泣く子を想う心も一緒だと思える様になった。
はずだった。










皇帝レヴィアスと名乗る男に襲われ、閉じ込められて、私のサクリアは吸収され続けている。
私はまだ女王なのだろうか?
背の翼は掻き消えたまま。
身体は黒い霧が纏わりついて、思い様に動かない。
思考もうまく働かない。
宇宙をあなたと同じ様に愛せると感じたのは、私の想いがさせた事?
宇宙だけを取れなかった私が、皇帝を招いてしまったの?
ねえ、目を閉じてもあなたの顔さえ浮かんでこない。
何故?
なぜ・・・・・。










「陛下!アンジェリークです。御無事ですか?」

懐かしいあの子の声。

「塔の外に皆様いらっしゃるんです。魔物はもう出ないと思います。歩けますか?」

「ええ、ありがとう。あなたには新宇宙を見守る責務があるというのに、本当にごめんなさい」

ふらつく身体をロザリアに支えてもらって歩く。
確かに魔物たちは消えていた。
もうそこは出口。
でもレヴィアスはただ去っていった訳ではなかった。

「あの番人は私が」

まだ私が女王であるなら、この塔からロザリアとアンジェリークを出す事が出来るはず。
サクリアよこの女王の手に二人を守る力を。










「アンジェリーク!!!」

番人が消滅し、扉の封印が解けて・・・・・
崩れ落ちる私の身体を抱きとめる、あなたは?
名前を呼んでくれたの?
私の名前を・・・・・。










目覚めるとそこは私の寝室。

「目覚められましたか?」

ふと、傍に誰かがいる事に気付く。
そして、その人が私の手を握り締めている事にも。

「・・・・・ジュリアス?」

ポタリと暖かい雫が頬に落ちる。

「泣いているの?」

「良かった。よくぞ御無事で・・・・・」

手からあなたのぬくもりが伝わってくるのに、私の心は冷えていく。
そう、誇り高いあなたに涙を浮かべさせるのは、女王。
決してアンジェリークじゃない。
それは私が選んだ道。

「ロザリアはどうしているかしら?出来れば呼んで欲しいのだけれど」

「ロザリアは隣室に控えております。ですが今少し」

ジュリアスの澄んだ蒼い瞳が私を見つめている。
私の見苦しい想いを見透かす様に。
それは息苦しい程に。
私が再度ロザリアを呼ぶ様口にしようとした、その時だった。

「あなたを抱き締めてもよいだろうか?アンジェリーク」










一瞬何を言われているのか理解出来なかった。

「あなたが確かにここにいると、このジュリアスの傍にあると教えてはくれまいか?」

「ジュリアス?」

ふわりと私を包む腕、温かな胸。

「もう一度名前を、私を呼んで・・・・・」

「アンジェリーク・・・・・」

息が止まるかと思った。
私を呼んで。
ずっと抱き締めていて。
それが本当の、私の願い。















to epilogue