前線付近の情報を収集し、地上部隊の作戦に直接協力(直協)する目的で開発された小型の偵察機。
日中戦争の直前、まだ前線の地上部隊で使えるような無線機のない時代に開発が始まったから、地上部隊と情報を交換するには、前線の近くの野原に着陸するか、人文字のように並べた布板文字を使つたり、二本の竿の間に通信筒を結びつけた紐を張り、それを飛行機から鈎をつけた紐で吊り上げるという方法が使われていた。そのめ、外国では主翼を胴体の上にこ配置した高翼低速機が専ら使われていたが'、九八・直協・キ36では、低速飛行だけでなく、高速性能と機動力の向上を重視して、常識を破つたスマートな低翼単葉形態が選ばまれた。
このため地上がよく見えるように、操縦席は極力前方にしかも高位置に、偵察席は翼の後方にこ配置されている。また不整地着陸で転倒しないように、主脚を極力前方に配置するために、主翼は前縁に後退角がある独特の形になり、急角度低速の離着陸を可能とするためにスプリットフラップを設け、前縁には固定スロット、捻り下げ角をつけた。また本機をもとに九九式高等練習機がつくられている。
戦後も小数だが日本軍の残した機体が中国やインドネシア、タイなどの各国で使われていた。生産は立川で861機、川崎でも472機が作られた。 |