「第1次世界大戦の飛行機では、これが一番好きだなぁ」。そんな小池さんの好みにあったスパッド。第1次大戦初期のフランス戦闘機は、軽量の回転式空冷星型エンジンを使用したニューポールが主役だったが、そこに登場したのがイスバノスイザ社のマーク・ビルギ一が開発した8A水冷V型8気筒。当時としては画期的な軽量大出力エンジンで、飛躍的にスピードと上昇力、安定住、高速ダイブ能力がアップした。このエンジンを搭載したスパッドは、同世代の他には見られない、洗練されたいかにもフランスらしいデザインに仕上がっている。スパッドはアメリカ、イタリア、ベルギーの部隊も使用、日本にも輸入され、フランス航空教官団の教材として使われた。当時、最速の性能であったが、操縦性においては好まれなかった。一方、このイスバノスイザのエンジンは、イギリスで名機R.A.F.SE5a戦闘機を生み出すことになる。作品は、フランス第2位のエースで54機を撃墜したジョジュ・ギンヌメールの愛機ボー・シャルル。でも小池さんには、そんな飛行機の性能も撃墜王の話も重要な意味を持たないらしい。「好きな飛行機と空の濃いブルーをきれいに出したかったからこの作品を描いたんです」と。 |