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滄州の野草

1998年及び1999年に、中国河北省滄州市で確認したのは野草は下記のとおりでした。なお、これらのうち、牧草地内及びその周囲で確認された雑草には、備考欄に印をつけた。和名又は和名の下の数字をクリックすると別画面で写真が表示されます。

1.図鑑で確認し、名称等がわかったもの


和名 中国名 科属名 学名 備考
双子葉植物 ヤマジノギク/アレノノギク 狗哇花 きく科
はまべのぎく属
Heteropappus hispidus (Thunb.) Less. 路傍、圃場周辺等に生育。5月開花。
ヒメムカシヨモギ
       
小白酒草(小飛蓮) きく科
ヒメムカシヨモギ属
Canyza canadensis (L.) Cronq. 北アメリカ原産の外来雑草。
路傍、空き地、圃場脇等に発生。
(オグルマか?) 旋覆花(金佛草) きく科
オグルマ属
Inula japonica Thunb. 鮮やかな黄色の花。8月に運河堤防及び滄州市東部の村落内で開花しているのを見た。
中国の図鑑では学名に「japonica」が入っているが、日本の図鑑には同じ学名のものは記載されていない。あるいはオグルマ(Inula britanica L. var. japonica (Thunb. Ex Murray) Franch.et Sav.)か?
コバノセンダングサ 鬼針草 きく科
センダングサ属
Bidens bipinnata L. 路傍や運河堤防等に生育するが多くはみかけない。
タカサブロウ 鱧腸(干蓮草、墨草) きく科
タカサブロウ属
Eclipta prostrata L. 農林科学院敷地及び大化賓館敷地で確認した。
オナモミ 蒼耳 きく科
オナモミ属
Xanthium strumarium L. 圃場脇、運河堤防等各地に生育。
当地で最も多い広葉雑草の一つ。
ケショウヨモギ
       
野艾蒿 きく科
ヨモギ属
Artemisia lavandulaefolia DC. 農林科学院圃場脇に生育。多くはない。葉は2回程度羽状深裂するが茎の上部は開裂しない。葉色は白っぽい緑色で、葉裏は更に白に近い色である。
最近では学名をArtemisia dubia Wall. ex DC.としているようである。
ハイイロヨモギ 大+(米扁に子)+蒿 きく科
ヨモギ属
Artemisia sieversiana Willd. 滄州市郊外の路傍にあった。草丈70cmないし1m。茎の基部に近い葉は日本のヨモギに類似した形状であるが、茎の上部(花に近いところ)は2回程度羽状深裂する。
キツネアザミ
       
泥胡菜 きく科
キツネアザミ属
Hemistepta lyrata Bunge 路傍、圃場脇、圃場内の裸地等に発生。
オニノゲシ 続断菊(石白頭) きく科
ノゲシ属
Sonchus asper (L.) Hill. 路傍、農林科学院敷地等に生育
なお、類似したきく科植物もあり別種かもしれない。
ハチジョウナ 苣+(草冠に「買」)+菜(甜苣菜) きく科
ノゲシ属
Sonchus brachyotus DC. 滄州市東部の集落近くで確認した。
ムラサキハチジョウナ
       
蒙山萵苣(紫花山萵苣) きく科
アキノノゲシ属
Lactuca tatarica (L.) C. A. Mey. 圃場脇等に生育する。滄州市東部の集落の敷地内に群生。 若芽を摘んで食用とする。野菜のレタスは同科同属
(オオジシバリ?) 山苦+(草冠に「買」) きく科
ニガナ属
Ixeris chinensis (Thunb.) Nakai 路傍等に生育。草丈は低い(十数cm程度)。花の色は黄色。
中国の図鑑では Ixeris chinensis は黄花でこれに該当すると思われるが、別の中国の資料では同名の植物は白花としている。日本の図鑑の類似した学名のもの(タカサゴソウ)は白花である。あるいは別種(オオジシバリ:Ixeris japonica(Burm.f.)Nakai あるいはアツバニガナ:Ixeris laevogata (blume) Sch.Bip ex.Maxim.あたり)か?
モウコタンポポ 蒲公英 きく科
タンポポ属
Taraxacum mongolicum Hand.-Mazz. 路傍等に生育。
4月〜5月及び9〜10月に開花。
アレチアザミ 刺児菜(小薊) きく科
アザミ属
Cephalanoplos segetum (Bge.) Kitam. 草丈20〜40cm。98年には滄州市東部のトウモロコシ畑に大発生。農林科学院、滄州市南部の草地にも多く発生している。5月に開花。
日本では対馬だけに生育が見られるとのこと。
エゾノキツネアザミ 大刺児菜(大薊) きく科
アザミ属
Cephalanoplos setosum (Willd.) Kitam. 滄州市東部の村落周辺及び滄州市郊外の路傍で確認した。刺児菜よりも大型で、大きいものは1mを超える草丈となる。7月下旬〜8月に開花。
オオバコ 車前 おおばこ科
オオバコ属
Plantago asiatica Willd. 日本のオオバコと学名は同一であるが、日本のものより大型で、特に穂が大きい。
ムジナオオバコ 平車前 おおばこ科
オオバコ属
Plantago depressa Willd. 日本のオオバコに似るが、葉がやや細く、葉先が尖る。
(日本にはない) 角蒿 のうぜんかずら科
インカルヴィレア属
Incarvillea sinensis Lam. 6月上旬に滄州市近郊の道路脇の空き地にあったが、それ以外観察していない。
日本では本種はインカルヴィレア・シネンシスの名で、また近縁種のIncarvillea delavayiはインカルヴィレア・デラビ―(ドゥラヴェーリー)の名で園芸植物として扱われている。ただし広く栽培されているものではない。
アカヤジオウ 地黄 ごまのはぐさ科
アカヤジオウ属
Rehmannia glutinosa (Gaertn.) Libosch. 圃場脇に生育。4月中旬〜5月中旬に開花。
根を加工したものは「地黄」と呼ばれる生薬となり、これを配合したものとして「六味地黄丸」、「八味地黄丸」等が知られている。
オオカワヂシャ 北水苦+(草冠に「買」) ごまのはぐさ科
クワガタソウ属
Veronica anagallis-aquatica L. 運河脇の湿気のあるところに生育。5月下旬頃から開花。
イヌホオズキ 龍葵 なす科
ナス属
Solanum nigrum L. 農林科学院圃場脇その他空き地、道ばた、運河堤防等各地でみかける。有毒。
ヨウシュチョウセンアサガオ(フジイロマンダラゲ) 曼陀夢 なす科
チョウセンアサガオ属
Datura stramonium L. 農林科学院の圃場脇や生産処建物脇に生育。葉や種子は猛毒
タチムシャリンドウ、ホザキムシャリンドウ(ムシャリンドウの近縁種) 香青蘭 しそ科
ムシャリンドウ属
Dracocephalum moldavica L. 農林科学院の圃場脇等にあった。
多年草で、東ヨーロッパから中国に分布しているとのこと。中国の図鑑ではもっと節間長があるが、当地で見たものは節間が詰まっている。
(メハジキの近縁種) 益母草 しそ科
メハジキ属
Leonurus heterophyllus Sweet 農林科学院の圃場脇で確認したが、他ではあまり見ない。
8月中旬より開花する。
ミゾコウジュ
(ユキミソウ)
       
茘枝草(別名:雪見草) しそ科
アキギリ属
Salvia plebeia R.Br 農林科学院の圃場脇に生育。
5月下旬から6月に開花
(日本にはない) 夏至草 しそ科
(属名不明)
Legopsis supina (steph.)Ik.-Gal 草地内の裸地部分や小麦畑に生える。
4月中下旬に開花
イヌゴマ 水蘇 しそ科
イヌゴマ属
Leonurus heterophyllus Sweet 農林科学院圃場脇に比較的多く発生している。
キュウリグサ
       
附地菜(鶏腸草) むらさき科
ミズタビラコ属
Trigonotis peduncularis (Trevos.) Benth. 5月上中旬に開花、結実。
滄州市東部の集落内で確認。他ではあまり見かけない。
コヒルガオ
       
打碗花 ひるがお科
ヒルガオ属
Calystegia hederacea Wall. 圃場内その他路傍、空き地等各地に生育。5月上旬より開花。
セイヨウヒルガオ?
       
田旋花(箭葉旋花) ひるがお科
セイヨウヒルガオ属
Convolvulus arvensis L. 打碗花に似るが、葉が細い。5月下旬より開花。コヒルガオよりも濃いピンクの花。
中国の図鑑の写真では左記学名のもの(田旋花)の写真は葉が細いが、日本の図鑑では同じ学名のもの(セイヨウヒルガオ)の葉は細くはない。果たして田旋花=セイヨウヒルガオであるのかどうか??
(アサガオの近縁種:日本にはない) 圓葉牽牛 ひるがお科
アサガオ属
Pharbitis purpurea (L.)Voigt 農林科学院の圃場脇等にある。花色は紅紫色及び紫紺色。
ハマネナシカズラ 莵絲子(中国莵絲子) ひるがお科
ネナシカズラ属
Cuscuta chinensis Lam. 運河近くの農地脇でみかけた。現在農林科学院等の草地近傍では確認されていないが、草地内に侵入した場合は強害雑草になる可能性がある。
(イケマの近縁種:日本にはない) 鵝絨藤 ががいも科
イケマ属
Cynanchum chinese R. Br. 圃場脇その他各地で確認。蔓性。
あるいはガガイモ(Metaplexis japonica (Thunb.) Makino)かもしれない。
(イケマの近縁種:日本にはない)
       
地梢瓜 ががいも科
イケマ属
Cynanchum thesioides (Freyn)K.Schum. 農林科学院の圃場脇で確認。
(栽培されている花卉「スターチス」と同属:日本にはない)
       
二色朴血草 いそまつ科
イソマツ属
Limonium bicolor (bge.)O.Kuntze 滄州市南部の集落内及び草地に群生しているところあり。その他各地で見かけるが頻繁に見かけるという程ではない。
(センキュウの近縁種:日本にはない))
       
蛇床 せり科
センキュウ属
Cnidium monnieri (L.) Cusson 農林科学院圃場脇にある。群生しているところもある。アゲハチョウ類の幼虫に食害されているのも見た。
5月下旬より開花
ギョリュウ (木偏に聖)+柳
(紅柳)
ぎょりゅう科
ギョリュウ属
Tanarix chinensis Lour. 路傍、空き地等にある。草地周辺にも見かける。8月頃に開花する。
イチビ 青麻 あおい科
イチビ属
Abution theophraasi Medik. 農林科学院、滄州市東部・南部の圃場及びその周辺等で確認。
中国では以前にイチビから衣料用繊維をとっていたということから、雑草とみなしていない人が多い(現実的には雑草そのものであるが)。
ギンセンカ(チョウロソウ) 野西瓜苗(香鈴草) あおい科
フヨウ属
Hibiscus trionum L. 中部アフリカ原産。観賞用が逸出したものといわれている。特に滄州市東部の圃場内・周辺に多く発生しているのを見た。7月下旬頃より秋冷にかけて開花する。新播草地において、播種〜初期生育時期に発生して、アルファルファの発芽・定着を阻害することがある。
ヤブガラシ
(ビンボウカズラ)
烏+(草冠に斂)+苺
(五爪龍)
ぶどう科
ヤブガラシ属
Cayratia japonica (Thumnb) Gagnap. 大化賓館前庭に生えていたのを確認。
エノキグサ
(アミガサソウ)
鉄+(草冠に「見」)+菜 別名:榎草 とうだいぐさ科
エノキグサ属
Acalypha australis L. 畑、路傍、空き地等に生育。草地内にも侵入
トウダイグサ 沢漆 とうだいぐさ科
トウダイグサ属
Euphorbia helioscopia L. 草地周囲に稀に生える。
ニシキソウ 地錦(紅糸草) とうだいぐさ科
ニシキソウ属
Chamaesyce humufusa (Willd.) Prokh.
Euphorbia humufusa Willd.)
農林科学院敷地内、道ばた、他の雑草の少ない開けた所や空き地に生える。
ハマビシ
       
(草冠に「疾」)+藜 はまびし科
ハマビシ属
Tribulus terrestris L. 圃場脇、路傍等に生育する。
6月より開花する。
カタバミ(スイモノグサ) 酢奬草(酸味草) かたばみ科
カタバミ属
Oxalis cornicula L. 大化賓館前庭の樹木下に生えていた。他ではまだ確認していない。
(エンジュの類:日本にはない) 苦豆子(狐尾槐) まめ科
クララ属
Sophora alopecuroides L. 小灌木
圃場脇等に生育するが、多くは見ない。
(シナガワハギの近縁種)
       
草木+(木扁に犀) まめ科
シナガワハギ属
Melilotus suaveolens Ledeb. 農林科学院、滄州市南部の草地内ないしはその近傍で確認した。5〜6月開花
中国農田雑草図譜では左記学名となっているが、形態は原色牧野植物図鑑のシナガワハギ(Melilotus officinalis (L.)Pall.)と同一のように思われる。なお、原色牧野図鑑ではシナガワハギは中国北部原産としている。あるいはシナガワハギそのものか? ただし、中国農田雑草図譜ではシナガワハギと同じ学名の植物は記載されていない。
(シナガワハギの近縁種)
       
白香草木+(木扁に犀) まめ科
シナガワハギ属
Melilotus albs Desr. 農林科学院草地に生える。5〜6月開花
上記 Melilotus suaveolens Ledeb. の近縁種で、これに似るが花の色は白色である。
コメツブウマゴヤシ 天藍苜蓿 まめ科
ウマゴヤシ属
Medicago lupulina L. 運河の堤防に生育。草丈10cm程度と小型。
ムラサキモメンヅル 直立黄+(草冠に「氏」) まめ科
ゲンゲ属
Astragalus adsurgens Pall. 農林科学院の草地内に生育していたが、数は多くない。日本の図鑑では「茎は…地面に広がり」とあるが、現物及び中国の図鑑では茎は直立している。当地で見たもの及び中国の図鑑にあるものが日本の図鑑の「ムラサキモメンヅル」と同じものかどうか?
ヤハズソウ 鶏眼草 まめ科
ヤハズソウ属
Kummerowia striata (Thumb.ex Murray) Schindl. 運河堤防にあったが、他では見かけなかった。
(キジムシロの近縁種:日本にはない) 朝天委陵菜 ばら科
キジムシロ属
Potentilla supina L. 葉の形はヒロハノカワラサイコ(Potentilla nipponica Th. Wolf)あるいはエゾツルキンバイ(Potentilla egedai Workmsk. Var. grandis (Torr. Et A.Gray)H.Hara)に似る。
(コショウソウの近縁種) 独行菜(腺茎独行菜) あぶらな科
コショウソウ属
Lepidium apetalum Willd. 草地内の裸地部分や小麦畑に生える 4月中下旬に開花
(コショウソウの近縁種)
       
寛葉独行菜 あぶらな科
コショウソウ属
Lepidium latifolium L. var. affine C.A.May 滄州市南部の圃場脇に群生。滄州市郊外の小麦畑脇にも生育が見られる。
5月中旬開花。
グンバイナズナ 遏藍菜 あぶらな科
グンバイナズナ属
Thlaspi arvense L. 路傍等に生える。4月中下旬に開花。
クジラグサ
       
播娘蒿 あぶらな科
クジラグサ属
Descurainia sophia (Li.) Webb ex Prantle 草地内の裸地部分や小麦畑に生える。4月中下旬に開花。
アルファルファを播種したが旱魃によりよく生えなかった圃場(農林科学院)に大発生した。
(イヌガラシの近縁種) 風花菜 あぶらな科
イヌガラシ属
Rorippa palustrs (Leyss.) Bess. 運河近くに見られた。葉の形から風花菜と推定したが、茎が褐色を帯びることからすればRorippa indica (L.) Hiernかもしれない。
ナズナ (くさかんむりに"斉")+菜 あぶらな科
ナズナ属
Capsella bursa-pastoris (Li.) Medik. 草地内の裸地部分や小麦畑に生える。
4月中下旬に開花。
エゾスズシロ 小花糖芥 あぶらな科
エゾスズシロ属
Erysimum cheiranthoides L. 路傍、草地脇等。4月中下旬に開花。
(ムラサキケマンの近縁種) 地丁草 けし科
ムラサキケマン属
Corydalis bungeana Turcz 圃場脇等に生育するが、生育数は多くない。
スナビキソウ
     
砂引草 ムラサキ科
スナビキソウ属
Messerschmidia sibirica 4月中旬〜5月中旬開花。草丈は10数cm程度。滄州市の郊外、運河堤防近くの空き地にあった。
アオビユ 反枝+(草冠に「見」) ひゆ科
ヒユ属
Amaranthus retroflexus L. 5月中旬より開花。
イヌビユ 凹頭+(草冠に「見」) ひゆ科
ヒユ属
Amaranthus lividus L. 根本から分岐し、背は高くならない。葉にはシロクローバのような斑紋がある。葉先は凹むものが多い。
ホナガイヌビユ 皺果+(草冠に「見」) ひゆ科
ヒユ属
Amaranthus viridis L. 外来雑草。
(ヒユの類:日本にはない) 腋花+(草冠に「見」) ひゆ科
ヒユ属
Amaranthus roxburghianus Kung. ヒユ類の中では小型。基部より分岐し背は高くならない。
アカザ 藜(灰菜) あかざ科
アカザ属
Chenopodium allbum L. 各所の路傍、圃場脇等に見られる。
コアカザ 小藜 あかざ科
アカザ属
Chenopodium serotinum L. 葉はアカザより細い感じである。
アカザより早生で、5月中旬より開花する。
ウラジロアカザ 灰緑藜 あかざ科
アカザ属
Chenopodium glaucum L. 市内各地で見るが、多くはない。
アカザの中では小型。葉裏は緑灰色。茎は赤味を帯びる。
ホウキギ 地膚(掃帚菜) あかざ科
ホウキギ属
Kochia scoparia (L.) Schrad 路傍等に生育する夏型雑草の中で、最も普通に見るものの一つである。空き地等では群落を作ることもある。
マツナ
       
("減"の偏を石偏にかえたもの)+蓬 あかざ科
マツナ属
Suaeda glauca (Bunge.) Bunge. 路傍、畑地周辺等各地で見られる。
(マツナの近縁種:日本にはない) 塩地+(上記マツナの中国名)
別名:翅+(上記マツナの中国名)
あかざ科
マツナ属
Suaeda salsa (L.) Pall. 塩分濃度の高い土壌に生育する。
マツナに似るが茎が赤紫色を帯びる。
(オカヒジキと同属:日本にはない)
       
猪毛菜 あかざ科
オカヒジキ属
Salsola collina Pall. 草地の周囲や空き地、路傍等に生える。農林科学院の圃場の一部(アルファルファ播種したが寡雨により定着不良となったところ)に群生した。
スベリヒユ 馬歯+(草冠に「見」) すべりひゆ科
スベリヒユ属
Portulaca oleracea L.var.oleracea 日本のスベリヒユと同じ。
6月中頃より路傍、空き地等開けたところに多く発生する。
(ギシギシの一種)
       
歯果酸模 たで科
ギシギシ属
Rumex dentatus L. 生育数は少ない。そう花に付着している宿存がく片にはとげ状の突起がある。(=巴天酸模との相違点)
(ギシギシの一種)
       
巴天酸模 たで科
ギシギシ属
Rumex crispus L. 生育数は少ない。地上部全体は日本で見られるエゾノギシギシに似ている。
そう花に付着している宿存がく片にはとげ状の突起は無い。(=歯果酸模との相違点)
あるいはナガバギシギシ(皺葉酸模:Rumex crusoys L.)?
ミチヤナギ (草冠に扁)+蓄 たで科
ミチヤナギ属
Polygonum aviculare L. 路傍等に生育。農林科学院近くに群生しているところがある。
オオベニタデ 紅蓼(東方蓼) たで科
タデ属
牧野:Persicaria orientalis (L.) Assenov
中国:Polygonum orientale L.
日中の両図鑑で学名表記が異なる。
農林科学院敷地内に自生しているが、除草の際も花穂が美しいため取り除かれず、観賞用とされている。
オオイヌタデ 酸模葉蓼(早苗蓼、大馬蓼) たで科
タデ属
牧野:Persicaria lapathifolium (L.) Gray subsp.nodosa (Pers.) A.Love
中国:Polygonum lapathifolium L.
日中の両図鑑で学名表記が異なる。
あるいは綿毛酸模葉蓼(Polygonum lapathifolium L. var. salicifolium Sibth.)?
(エゾノミズタデの近縁種) 旱型両栖蓼 たで科
タデ属
Polygonum amphibium L. var. terrestre Leyss Fl. Hal 農林科学院圃場脇の側溝に見られる。9月に開花する。
母種と見られる両栖蓼(和名はエゾノミズタデ)の学名は、中国の図鑑では Polygonum amphibium L. となっているが、日本の図鑑では Persicaria amphibium L. となっている。
(カナムグラの近縁種:日本にはない)
       
葎草 くわ科
カナムグラ属
Humulus scandens (Lour.) Merr. 日本のカナムグラ(Humulus japonicus Siebold et Zucc.)に酷似。日本の図鑑ではカナムグラの分布域に中国が含まれているが、中国の図鑑では日本の図鑑とは学名表記が異なる。
7月頃から急に旺盛に伸長するようになり、塀や立木にからみついたり、草地脇にあるものは蔓が草地内に侵入する。
単子葉植物 チャガヤツリ 阿穆爾莎草 かやつりぐさ科
カヤツリグサ属
Cyperus amuricus Maxim. 大化賓館の芝生の中(刈り込み等されていないところ)に混生していた。
日本の図鑑では鱗片の色を茶色としているが、中国の図鑑(及び当地で実際に見るもの)の鱗片はやや黄褐色を帯びた緑色であった。
ヌマガヤツリ 聚穂莎草(玉穂莎草) かやつりぐさ科
カヤツリグサ属
Cyperus glomeratus L. 滄州市南部の窪地で生育していた。
ハマスゲ 香附子(莎草) かやつりぐさ科
カヤツリグサ属
Cyperus rotundus L. チャガヤツリとともに大化賓館の芝生の中(刈り込み等されていないところ)に混生していた。
鱗片の色は茶褐色。
イセウキヤガラ
       
扁稈+(草冠+鹿+れっか)+草 かやつりぐさ科
ホタルイ属
Scirpus planiculmis Fr. Schmidt 運河の水際ないし水深の浅いところに生育。茎の断面は三角形。
水に浸っているものは草丈が30〜50cmあるが、陸地にあるものは土壌水分の関係か、あるいは常に羊・山羊に食べられているためか草丈が低い(十数cm)
ヨシ(アシ) 芦葦 いね科
ヨシ属
Phragmites australis (Cav.) Trin. ex Sterd. (P.communis Trin.) 圃場周囲の排水溝等やや湿気のあるところを好むが、乾燥したところにも生える。浅水にあるものは2mを超えるが、旱地では3〜40cm程度にしかならない。日本の川岸等に生えるアシ(ヨシ)と同じ?
(エゾムギの類:日本にはない) 肥披+("減"の偏を石偏にかえたもの)+草 いね科
エゾムギ属
Elymus excelsus Turcz. 滄州市近郊の路傍等に成育。芒が反り返った形をしている。
(コメガヤの類:日本にはない) 臭草(槍草) いね科
コメガヤ属
Melica scabrosa Trin. 麦畑脇等に生育。穂はライグラス類にやや似る。
(画像はややピンぼけのものしか撮れなかった)
ハマヒエガエリ 長芒棒頭草 いね科
ヒエガエリ属
Polypogon monsperliensis (Cav.) (L.) Desf. 運河の水辺に近い湿潤なところに生える。
5月に開花、結実
カズノコグサ (草冠+冂+又)+草 いね科
カズノコグサ属
Beckmannia syzigachme (Cav.) (Steud.)Fern. 運河の水辺に近い湿潤なところに生える。
5月に開花、結実。
(カゼクサの類:日本にはない) 小画眉草 いね科
カゼクサ属
Eragrostis poaeoides Beauv. 草地周囲や路傍、空き地に生える。雑草の中では多くみかける程ではない。
あるいは画眉草(Eragrostis pilosa (L.) Beauv.)又は無毛画眉草(Eragrostis pilosa (L.) Beauv. Var imberbis Franch.)か?
オヒシバ 牛筋草(蟋蟀草) いね科
オヒシバ属
Eleusine indica (L.)Gaertn 夏期に路傍、空き地等において普遍的に見られる。
ギョウギシバ 狗牙根 いね科
ギョウギシバ属
Cynodon dactylon (l.)Pers. 運河堤防に群生。
日本の図鑑では穂が太く描かれているが、中国の図鑑及び現物はそれよりも細い。当地で見られたものは日本の「ギョウギシバ」と同じものであるか?
オヒゲシバ 虎尾草 いね科
オヒゲシバ属
Chloris virgata Swartz. ローズグラス(Chloris gayana Kunth.)と同属。
コオニシバ 中華結+(糸扁に楼の旁の部分)+草 いね科
シバ属
Zoysia sinica Hance 運河堤防で確認。5月下旬〜6月上旬に出穂、開花。穂の色は紫褐色。
チゴザサ 柳葉+(竹冠+若) いね科
チゴザサ属
Isachne globosa (Thumb.ex Murray)Kuntze 運河の水辺に近い湿潤なところに生える。
5月に開花、結実。
エノコログサ 狗尾草 いね科
エノコログサ属
Setaria viridis (L.)Beauv.var.viridis 日本のものと同一。
アキノエノコログサ 大狗尾草(法氏狗尾草) いね科
エノコログサ属
Setaria faberii Herrum エノコログサよりも大型。6月中旬頃より出穂。
あるいは「オオエノコロ」か?
キンエノコロ 金色狗尾草 いね科
エノコログサ属
Setaria glauca (L.)Beauv. 日本のものと同一。
メヒシバ 馬唐 いね科
メヒシバ属
Digitaria sanguinalis (L.) Scop 夏期に路傍、空き地等において普遍的に見られる。
あるいはメヒシバ(Digitaria cilliaris (Retz.)Koeler.、中国名:毛馬唐)?
(イヌビエの近縁種) いね科
イヌビエ属
Echinochloa crusgalli (L.)Bearv.var.caudata(Roshev.)Kitag. 日本のイヌビエに似ているが芒がある。
あるいは旱稗(Echinochloa crusgalli (L.)Bearv.var.hispidula(Retz.)Hack.)?
(イヌビエの近縁種) 無芒稗(落地稗) いね科
イヌビエ属
Echinochloa crusgalli (L.)bearv.var.mitis(Pursh.)Peterm. 夏期に路傍、空き地等において普遍的に見られる。
上記の稗(芒がある)よりも多く見かける。
日本のイヌビエと類似(同一?)あるいは「西来稗」(Echinochioa (L) Beauv. Var.zelayensis (H.B.K.) Hithc.)か?
(イヌビエの近縁種) 長芒野稗 いね科
イヌビエ属
Echinochloa crusgalli (L.)bearv.var.caudata(Roshev.)Kitag. 紫紅色の芒がある。運河堤防等でわずかに見かける。
ナルコビエ(スズメノアワ) 野黍 いね科
ナルコビエ属
Eriochloa villosa (Thumb.ex Murray) Kunth 圃場周囲等に稀に生えるが多くはない。
(ウシノシッペイの近縁種) 牛鞭草 いね科
ウシノシッペイ属
Hemarthria altissima (Poir.) Stapf et C.H,Hubb 運河堤防に群生。8月上旬に出穂、開花。
1本の茎から出る穂の数は日本のウシノシッペイよりも少ない(牧野〜図鑑との比較)。
チガヤ
       
白茅 いね科
チガヤ属
Imperata cylindrica (L.) Beauv. 圃場脇の側溝に多い。
トキンガヤ 隠花草 いね科
(属名不明)
Crypsis aculeata (L) Alt. 運河の干上がった河床にあった。
(日本にはない) (けもの扁に"章")+茅 いね科
(属名不明)
Aeluropus littoralis (Gouan) Parl. Var. sinensis Debeaux 滄州市東部及び南部の圃場脇等に生育していた。6月中旬に出穂、開花。

(注.名称等未確認のもの)

当地で撮影した雑草の写真については、日本及び中国の植物図鑑により分類、和名、中国名を調べたが、不確実なものも少なくない。それらについては表中にも記したが、以下表中に記し得なかったものを書き記す。

  1. ヒユの類(Amaranthus …)
    葉にクローバのような斑があることからすればイヌビユのようでもあり、一方葉先の切れ込みが無いことからすればホナガイヌビユにも見えるような個体が多く見られる。
    また、Amaranthus roxburghianus Kung(と思われるもの)は、図鑑では斑は無いが、実物にはイヌビユよりもはっきりした斑がある。(図鑑ではAmaranthus roxburghianus Kungに似た形態で斑点のあるものは記載されていない)
  2. アカザの類(Chenopodium …)
    アカザとコアカザ及び市藜、東亜市藜(中国名)の違いがよくわからない(現物はどちらか?)

3.名称等未確認のもの

区分 中国名 科属名 備考




(不明) (科属名不明) 滄州市南部の集落近傍で確認。
(不明) あかざ科
マツナ属あるいはオカヒジキ属?
滄州市東部の道路脇の溝及び滄州市内の運河堤防に生育。
(不明) (科属名不明) 滄州市東部の集落近傍で確認。

     
(不明) (科属名不明) 農林科学院の圃場脇。
茎は細いが木質である。木本のようであるが、冬季寒冷のため、あるいは山羊等に食されるためか早春には茎は見られず、毎春地際から萌芽する。

     
(不明) (科属名不明) 滄州市南部の圃場脇に生育。
(不明) まめ科か? 路傍、草地脇等。4月下旬に開花
(不明) まめ科か? 圃場脇等に稀に見る。





     
(不明) かやつりぐさ科か? 農林科学院で芝生状に植栽している。

表中、「農林科学院」とあるのは滄州市街地の南部にある「滄州市農林科学院」のことである。「大化賓館」は滄州市内にあるホテルで、プロジェクトメンバーが宿泊していた所である。また、滄州市東部、同南部とあるのは、プロジェクトが指導を行った、「黄驊市孔店村」、「南皮県李皋家村」のことである(いずれも滄州市の下の行政区である)。

この雑草リストは当方が実際に調査したものに加え、プロジェクトのカウンターパートである趙花其(滄州市農林科学院飼料作物研究中心)がとりまとめた「滄州地区飼料作物主要雑草名録」を加味して作成した。

また、伏見昭秀氏(東北農業試験場)、森田弘彦氏(農業研究センター)、高木圭子氏((株)プレック研究所)のご助言をいただいた。心よりお礼申し上げます(ここに記載している関係者の所属は当時のものです)。

なお、その後において得られた情報等により一部修正を加えた(和名、学名等)。

4.草地内及びその近辺での野草の状況

上記雑草のうち草地内又はトウモロコシ畑で特に目立った雑草及びその状況は次のとおりである。なお、上表のうち下に記さないものは、牧草との競合力が弱い等から圃場周囲にはあっても圃場内にはあまり侵入しないもの(オナモミ、ハマビシ、小画眉草等)、あるいは元々個体数が少ないもの(ミゾコウジュ、ナルコビエ等)である。

なお、雑草の名称は、日本名があるものは日本名(カタカナ)を、日本名がないものは中国名(漢字)を記した。

  1. クジラグサ、刺児菜
    農林科学院の98年アルファルファ新播草地で、定着不良のところに翌春大発生した。
  2. イチビ
    圃場周囲にも多く見られるが、孔店村のトウモロコシ畑にも多く発生した。
  3. コヒルガオ
    圃場周囲に多く見られるが、草地内の裸地部分にも多く発生する。
    耕起しても地下茎が土壌中に残存するため、新播草地では牧草の発芽より早く芽を出し伸長する。このため、発芽直後の牧草を抑圧してしまうことがある。また、同様なことからトウモロコシ畑にも発生する。
  4. マツナ、猪毛菜
    圃場周囲に多く見られるが、草地内の裸地部分にも発生する。
  5. 寛葉独行菜
    李皋家村のアルファルファ圃場周辺部分の裸地となっているところに見られる。
  6. ギンセンカ
    98年、孔店村の新播草地に多く発生した。
  7. 大刺児菜
    98年、孔店村のトウモロコシ畑(生育初期)に多く発生した。
  8. アシ
    農林科学院、孔店村、李皋家村とも空き地、草地周辺等に生えており、これが生えているところを草地造成した場合、地下茎から再生する。
  9. エノコログサ、キンエノコロ
    圃場周囲に多く見られるが、孔店村・李皋家村の圃場で、塩類濃度が高いことにより牧草が定着していないところに多く発生している。

春、気温の高まりとともに生育が旺盛となり、特に播種後土壌が露出している 期間が長いトウモロコシ畑(4〜6月播種)や、定着不良であったアルファル ファ圃場(播種翌年)で発生が多いもの。
クジラグサ、コヒルガオ、イチビ、刺児菜、大刺児菜
夏期においても地下茎等から出芽し、アルファルファ新播圃場で発生した場合には初期成育の遅いアルファルファよりも先に伸長する。横に這うようにして成長するもの(コヒルガオ等)は発芽したアルファルファの上を覆ってしまい、発生量が多い場合には結果として定着不良となる場合がある。
コヒルガオ、刺児菜、大刺児菜、ギンセンカ、アシ
アルファルファの定着不良又は欠株により生じた裸地に入り込むもの。また、1〜2番草の時期には目立たないが、7月以降アルファルファの生育が鈍るのに伴い圃場内で目立つようになるもの。
寛葉独行菜、刺児菜、コヒルガオ、マツナ、猪毛菜、鵝絨藤、稗、エノコログサ、キンエノコロ
(多種の雑草が侵入しうるが、実際に多く侵入しているのを確認したのは上記のものである)

上記のA及びBは、それまで耕作されなかった荒れ地に新たに作付を行った場合に発生が著しい。特にコヒルガオやアシ等の地下茎を有するものにあっては、耕起・砕土を行っても地下茎は残存するので草地造成後早期に再生してくる。種子繁殖で早春に発芽し初夏までに開花・結実を行うクジラグサは、これが繁茂していた所を草地・トウモロコシ畑とした場合に、土中の種子が発芽、生育することになる。コヒルガオは生育期間が5〜10月と長期にわたるとともに、地下茎及び種子により繁殖するため、新播草地やとうもろこし畑にも発生する。また、圃場周囲より圃場内に侵入するとともに、圃場内のわずかな裸地に定着したものが裸地の拡大とともに生育範囲を拡大する(このためA,B,Cのいずれにも含まれることになる)。コヒルガオは蔓性で地表を這うような生態であるために牧草収穫時にも刈り取られず残存する。このことがコヒルガオの定着、拡大には有利となる。

アルファルファは種子が細粒のため発芽個体は小さく生育初期の生育速度は遅い。このため雑草が密に発生した場合は定着が阻害されやすい。一方降雨が少なく、土壌が乾燥しやすい場合には、地面を被覆するように生育する雑草(コヒルガオ)がある程度あった方が土壌表面からの水分蒸散が抑制され、牧草の定着に有利に働く場合もある。しかし、これら雑草の生育が旺盛になれば、牧草の定着を阻害する。

アルファルファは発芽直後の雑草との競合に弱い時期を乗り切れば、その成長力(再生力)の強さから雑草の侵入に対して抵抗性を有することになる。一方において利用年数が長くなると欠株による裸地が増加し、雑草侵入の拠点となる。

アルファルファの品種に関しては、キタワカバ等の旺盛な生育を示すものにあっては、雑草との競合力は強いが、滄州苜蓿等の1番草収穫以降における再生力の弱い品種にあっては、特に夏型の雑草との競合力は弱い。

時期的には、アルファルファは1番草の生育が最も旺盛であり、2番草以降は順次生育が衰えていく。このため草地内において1番草の時には目立たなかった雑草も2番草収穫以降の7月末ころになるとかなり目立つようになる。中国の人たちは少々の雑草も気にしないようであるが、雑草の混入は生産した乾草の品質にも関係する。特に有毒植物の「ヨウシュチョウセンアサガオ(なす科チョウセンアサガオ属:Datura stramonium L.)」や「イヌホオズキ(なす科ナス属:Solanum nigrum L.)」も多くはないが草地の周辺にあり、収穫した牧草の中に混入する可能性もある。

雑草の中にはメヒシバやオヒシバのように日本でも一般に見られるものや、近縁種のものがある。また、イチビ等のように日本では強害外来雑草として問題になっているものもある。農林科学院では牧草地周辺に、また孔店村ではトウモロコシ圃場内にイチビが多く生えているのを確認した。イチビは草地やトウモロコシ圃場内、道端や畑の周囲等に生えているにもかかわらず、当地では強害雑草として問題視されてはいない。当地における夏作物の主要なものはトウモロコシであるが、これは長大作物であるために、多少のイチビの混入は穀実収量の減少につながらないことが大きな理由であり、これに加えてイチビからは繊維をとることができるとのことで、かつてはこのような有用な面があったためであると思われる。



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