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当家の冬季における暖房方式の変更による
二酸化炭素排出量等の比較


にいがた市民大学「暮らしとエネルギー」を受講したことを契機として、試みに居室の暖房方式を灯油からガスに変更すると共に、数年来のガス使用量、灯油購入量を含めて分析し、同講座終了後の反省会の際に提示したもの。

−− 目  次 −−


1.調査を行った背景と目的
2.調査方法
(1) 従来使っていた暖房器具(居室)
(2) 今期使用した暖房器具(居室)
(3) 住宅建物、暖房器具を使用している居室
(4) 居室における暖房器具使用時間
(5) 比較した暖房器具以外に使っている暖房器具
(6) 二酸化炭素排出量(kg)を計算する方法
3.調査結果
(1) 2007-08期以前の燃料使用量の変化
(2) 暖房方式の変更による燃料使用量等の変化
(3) 暖かさ等の体感上の変化
4.結果の要約と今後の対処方針を検討する上での問題点
5.当家では暖房方式をどうするか

参考

1.調査を行った背景と目的

化石燃料の消費により地球温暖化の要因ともなっている二酸化炭素の排出が問題となっている。家庭においてもその削減努力を図ることが重要と考える。当家においてもまだ道半ばとはいえ、いろいろと工夫している。その一環として今冬は居室の暖房をそれまでの石油ストーブからガスストーブに変えた。これは同一熱量を得る際に発生する二酸化炭素排出量はガスの方が灯油に比べて少ないためである。

当家では2007年1月以降において電気、ガス、水道、灯油の使用量と料金についてのデータを保存していたで、これにより暖房としての熱源を灯油からガスに変えることによる経済性や二酸化炭素発生量の違い等について考察することとした。

2.調査方法

従来は居室に石油ストーブ、ダイニングキッチンにガスストーブを使っていた。今冬(2009年11月末〜2010年3月)は居室の暖房を石油ストーブに代えて以前に使っていた反射式ガスストーブを使い、燃料の使用量、二酸化炭素発生量及び光熱費について比較した。ダイニングキッチンについては従来と同じガスストーブを使用した。

当方、居室ではパソコン作業のために机に向かうことが多いため、暖房器具は変更の前後共に椅子の後ろ約1mに置いてある。

なお、供給されているガスの規格は13Aである。

(1) 従来使っていた暖房器具(居室)

機種:石油ファンヒーター(コロナ FH-HiX345BY-W)
購入時期:平成17年
燃料消費量 (最小)0.064〜(最大)0.334リットル/時
暖房出力  (最小)0.66〜(最大)3.44kW
(なお、設定温度を低めの20℃程度に設定し、暖房出力を低めに運転した)
定格消費電力 22W

(2) 今期使用した暖房器具(居室)

機種:赤外線ガスストーブ(リンナイ R-613PMSV-402)
購入時期:平成13年
暖房出力:3.26kW(13A)
(出力調整が2段階となっており、通常は「弱」とし、暖房出力を上記の半分として運転した)

(3) 住宅建物、暖房器具を使用している居室

木造一部二階建て(建物は古く、断熱機能はあまり良くない)
居室は1階(2階が乗っていないところ)
約9畳、畳敷き、北側に窓(175cm(W)×120cm(H)の窓と80cm(W)×75cm(H)の小窓)

(4) 居室における暖房器具使用時間

一日のうち、朝の起床から夜の就寝までは16〜17時間程度あるが、居室を不在にする時(食事、外出等)には暖房器具は消すため、厳寒期(1月、2月)における1日当たりの暖房器具使用時間は約10〜12時間程度と見込まれる。なお厳寒期以外(12月、3月)はこれより短時間となる。11月と4月の使用時間はわずかであった。

(5) 比較した暖房器具以外に使っている暖房器具

機種:ガスストーブ(リンナイ R-452PMS II)
購入時期:平成6年
暖房出力:1850kcal/h(13A)
使用場所:ダイニングキッチン
1日当たり使用時間:2時間程度(調理及び食事時間)
〜使用時間は居室の暖房器具を変更する前後においても同じ程度)

(6) 二酸化炭素排出量(kg)を計算する方法

電気:使用量(kWH)×0.47
ガス:使用量(m3) ×2.3
灯油:購入量(リットル) ×2.5
(係数(排出係数)は「新潟市環境カレンダー2010」による)

3.調査結果

(1) 2007-08期以前の燃料使用量の変化

2008年11月から2009年3月にかけて(以降「2008-09期」という。他の年も同様)の灯油購入量は前年に比べて180リットルから。140リットルに減少した。これは前期より約10リットルの繰り越しがあったこと(即ち消費量で言えば2007-08期が170リットル、2008-09期が150リットル)及び当方の体が当地の冬の寒さに慣れてきたために、暖房の程度をやや弱くしたことが理由と考えられる。一方でガス使用量もこの間に233m3から151m3に減少した。これは冬期間における入浴頻度が少なくなったことが大きな理由と考えられる。(表−1,2)

(2) 暖房方式の変更による燃料使用量等の変化

次の年(2009-10期)は試験的に石油ファンヒーターを使用せず、代わりに赤外線ガスストーブを使用した。以下、主に2008-09期と2009-10期の比較を中心として考察する。

居室の暖房の熱源をガスにすることにより、灯油購入量140リットルからゼロとなったが、その一方でガス使用量は151 m3から277 m3へと126 m3の増加(対前年比183%)となった。(表−2,3,4:購入量の欄)

これを二酸化炭素量に換算して見ると、灯油からの排出量が350kg減となった一方でガスからの排出量が290kg増加しており、差し引き60kgの減少となる。(表−2,3,4:二酸化炭素排出量の欄)

ただし、ガスは暖房だけでなく調理や風呂にも使っており、こちらにおける変動もあると思われる、このためこの60kgの減少のうちどれだけが暖房方法の変更によるかは解明が困難であるが、かなりの分が暖房方法の変更によるのではないかと思われる。

一方、燃料費については時期による単価の変動もあるために、正確な比較は困難であるが、灯油代が9,440円減となった反面でガス代が11,895円増加し、差し引きで全体としては2,455円の燃料代増加となった。(表−2,3,4:料金の欄)

(3) 暖かさ等の体感上の変化

石油ファンヒーターでは暖気を足元に向けて吹き出すようにしており、足元付近を通った暖気は机の下にたまり、下半身を温める形となり比較的快適であった。一方で赤外線ガスヒーターは赤外線を出す方向が水平方向よりやや上向きとなり、椅子に座った腰の部分に向かう。しかし背もたれに遮られ、十分に体を温めることはない。また足元が冷たく、足温器を併用したにもかかわらず2010年の1〜2月には足先が「しもやけ」になってしまった。

4.結果の要約と今後の対処方針を検討する上での問題点

ガスは灯油と比較して発熱量当たりの二酸化炭素排出量は少ない。このことが暖房方式を従来の灯油からガスに変更したことにより二酸化炭素排出量が減ったことにつながったものと考えられる。一方で発熱量当たりの料金はガスの方が高いため、燃料代の増加となった。

もし家を建て替えるようなことにでもなれば、あるいは本格的に暖房方式の変更を考えるならばヒートポンプ方式の暖房も視野に入る。しかし当面現実的に考えた場合、二酸化炭素排出を減らしてかつ暖かく快適に過ごすためには、今回の調査の結果を総合的に判断すれば、来期にはガスファンヒーターを購入してこれを使うのが良いということになる(購入価格は2万数千円の見込み)。しかし、このことによりこれまで使ってきた石油ファンヒーターはまだこれからも長く使うことができるものであり、これが無駄になってしまう。どちら(買い換えるか、石油ファンヒーターをそのまま使うか)が良いかの判断は容易ではない。

関連して、本論からは多少外れるが製品の買い換えにあたっては以下のことをも考慮する必要がある。

石油ファンヒーターを作る(原料鉱石を採掘するところから考える)際にも二酸化炭素は発生する。これを使用期間で割り算すれば、使用期間1年当たりで負担すべき二酸化炭素量となる。もし短期間で使用中止するとなれば、年間当たりより多くの二酸化炭素を負担しなければならない。このことは経済学における「減価償却」の考え方をこの場面に準用することにほかならない。

これは「ライフサイクルアセスメント」、「ライフサイクル等価二酸化炭素評価」という考え方に通じる。前者は製品の製造、輸送、販売、使用、廃棄、再利用までの各段階における環境負荷を明らかにし、その改善策を検討するものであり、後者は構造物などの評価を,建設から運用,解体に至るライフサイクルを通じて発生する二酸化炭素の排出量をもとに行うことであるが、後者の評価法については建築物にとどまらず、その他の物品にも適用できる考えであるようにも思われる。新たにガスファンヒーターを購入し、従来の石油ファンヒーターを不用にしてしまうことと、石油ファンヒーターを使い続けることを「ライフサイクル等価二酸化炭素評価」の手法で比較した場合には、必ずしも今買い換えることが経済的な面でも、二酸化炭素排出量削減の点からも得策ではないかもしれない。相対的な二酸化炭素排出削減のためには買い換えた方が良いのか、あるいは買い換えずに従来の機器を使った方が良いのか、比較的容易に判断できる手法が使えるようになることを期待したい。

5.当家では暖房方式をどうするか

前項の検討や問題点を踏まえて、当方としても来期の居室における暖房方針を決めなければならない。結論を先に言うならば、来期はガスファンヒーターを購入して使用することとしたい。このたびの暖房方式をガスストーブにしたことによる最大の問題点は、足元等の下半身がよく温まらないことであった。ガスファンヒーターならば以前に使っていた石油ファンヒーター同様に足元や下半身をよく温めてくれる。また同じ暖かさを得るのに発生する二酸化炭素量はガスの方が石油より少ない。

昨期に居室の暖房用として用いていた石油ファンヒーターについては、このまま廃棄してしまえば前項で問題としたような「ライフサイクル等価二酸化炭素評価」の面でも問題であるが、これを中古品としてリサイクルショップに出せば、今後も誰かが使うことになり、この点でも問題は少ない。

暖房方式については、二酸化炭素排出量を更に削減するとなればヒートポンプ方式によるもの等もあるが、当家の条件では現時点でこれを導入するには経済的な問題もあり、また現在住んでいる家とのバランスという問題もある。もし今後家を建て替えるようなことになれば、その時点で検討したい。

なお、エコキュートシステム等の本格的なシステムについては、現時点では設備費が高いことに加え、暖房効率や騒音(低周波騒音)等の問題もあり、今すぐにこれを採用するというのにはまだためらいがある。今後において当方がこれを導入するかどうかは技術開発によりこれらの問題点が解決、改善されたかどうかをみきわめてからということになろう。


参考

環境カレンダー2010(新潟市)
CO2チェックシート(新潟市)
PDFファイル、 Excelファイル
環境家計簿における二酸化炭素排出量の計算方法
ライフサイクルアセスメント(Wikipedia)
ライフサイクル等価二酸化炭素評価(goo辞書)

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