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今後のエネルギー源の展望とその利用を考える


にいがた市民大学市民大学「暮らしとエネルギー」を受講した際の修了レポートです。なお、紙数の関係で十分に言い尽くせなかったこともあり、今後これをベースに更に書き足したものを作成することを考えています。

−− 目  次 −−


1.はじめに〜エネルギー利用について進むべき方向
2.エネルギー源についての今後の展望
(1) 火力発電
(2) 原子力発電
(3) 水力発電
(4) 太陽光発電
(5) 風力発電
(6) バイオエネルギー
3.家庭においてエネルギーをどう使うか
(1) 乗用車
(2) 暖冷房
(3) 給湯(入浴等)
(4) 調理
(5) 食糧や身の回りの品々を見直す
(6) 生活スタイル〜現代文明を見直す
4.私の実践
(1) 自転車、公共交通機関の利用
(2) 家庭内の省エネ
(3) 気に入ったものを長く使う
(4) 食べるものは国産のもの、近くでとれたもの、時期のものを主体に

1.はじめに〜エネルギー利用について進むべき方向

現代文明は化石燃料や原子力等の使用を前提に発展してきた。

しかし、化石燃料やウランは有限の資源であり、既に限界が見えてきている。また、化石燃料の使用は空気中の二酸化炭素を増加させ、気候にも影響を与えるとされている。

国内では温暖化ガスの排出削減(化石燃料の消費を減らす)について、悲観的な見方も強いが、ここではエネルギー生産について、ある程度楽観的にその展望を論じてみたい。一方でその消費の大きな部分である家庭における省エネの可能性について考察したい。

2.エネルギー源についての今後の展望

(1) 火力発電

火力発電は当然のこととしてそこから二酸化炭素を排出する。しかしこれをすぐに廃止することは現実的には不可能なことである。このため燃料を発電量あたりの二酸化炭素排出量の少ないLNGにシフトするとともに、発電方式をコンバインドサイクル化しエネルギー効率を高めることが一層進む

また石炭火力発電においても、超々臨界圧発電技術や、石炭をガス化してコンバインドサイクル発電を行う技術の開発・普及を進めるとともに、発電に際して発生した二酸化炭素を回収し、大気中に出さないようにする技術が開発されつつあり、更に将来の話にはなろうが、その実用化と普及を図っていきたい。

(2) 原子力発電

原子力発電はエネルギー供給面からすれば非常に重要なものではある。しかし一度問題を発生した場合には極めて重大な事態になるという危険性を抱えている。柏崎刈羽原子力発電所等でも軽度なものとはいえ、これまでも数々のトラブルに見舞われている。今後更に大きなトラブルが発生する危険性もある。このようなことに鑑みるならば、できれば原子力発電は現在以上には増やさないこととしたい。

(3) 水力発電

水力発電は自然エネルギーの利用であるが、日本では水力発電に適した条件(河川の状況、地盤等)のところは既に開発済みであるため、新たな発電所建設は困難であり、既存の水力発電所の継続利用が基本となる。なお農業用水路や小河川における中小規模の水力発電について、技術開発と普及がなされることも期待される。

(4) 太陽光発電

太陽光発電は家庭での設置を含め、日本においても、また世界的にもその利用が進み、家庭での電力消費のかなりの部分をまかなうようになることが期待される。

(5) 風力発電

日本は風速、風向ともに不安定であり、加えて台風という問題もある。しかし今後は海上も含め、風が安定して強い地域を中心に風力発電が広く行うようになることが期待される。台風等の強風対策技術が確立されれば、より広い地域での利用が可能になる。

(6) バイオエネルギー

農地で生産される穀物、サトウキビ等によるエタノール生産は、ブラジル等での現実を見ると、そのための農地開発により自然環境を破壊している。また食糧生産とも競合する。またその生産のために化石燃料を使っている。このようなことを鑑みるならば、バイオエネルギーの利用を拡大するのも考えものである。

一方で現在あまり利用されず、多くが放置されている間伐材等の森林資源については、森林の維持保全を図りながら極力活用するようにしたい。

3.家庭においてエネルギーをどう使うか

家庭におけるエネルギー利用としては、①乗用車、②暖冷房、③調理や入浴の3つが大きい。この他に購入する品々(食品、家庭用品、衣料品等)はその製造から私たちの手に届くまで多くのエネルギーを使っている。これらをどうしていけば良いのであろうか。

(1) 乗用車

現代では多くの人々が自動車を運転する。生活においても自動車は不可欠との意識が強い。一方で多くの人が自動車を使うことから、路線バスや鉄道といった公共交通機関の利用者は少なくなってきており、廃止に追い込まれる路線もでてくる。

自動車の利用は多くの化石燃料を消費することとなる。公共交通機関においてもその運行のためには化石燃料等のエネルギーが必要であるが、同じエネルギーで人をどれだけ移動させられるかということでは公共交通機関の方が有利である。

自動車においても近年はハイブリッドカーが普及しつつあり、電気自動車もこれを追っている。しかしハイブリッドカーといえども走行のためのエネルギーはガソリンに由来する。また電気自動車においてもその電気の多くは化石燃料や原子力から生産される。

最近ではカーシェアリングも行われるようになってきた。自動車を利用するにしてもより効率的な利用を行うことが望ましい。カーシェアリングの更なる普及が望まれる。

また若者の自動車離れも言われている。自転車の利用も見直されてきている。今後においてこのような流れが促進され、自動車への依存が一層低下していくことがエネルギー消費の面からも望ましいことである。

(2) 暖冷房

暖房については、エアコン利用を除いては石油やガスを燃やした熱、あるいは電気エネルギーをそのまま熱エネルギーに転換して利用する方法が主体である。最近エコキュートが言われるようになってきているが、まだあまり普及していない(エコキュートについては給湯の項で再度触れる)。エコキュートのようなヒートポンプによる暖房とすることでエネルギー消費が少なくなる。この方式が早期に普及することが望まれる。

なお、家の窓や壁を断熱構造とすることにより、暖冷房効率を改善することができる。冬季に日照が得られる地域(太平洋側)では昼間は日照を多く取り入れることにより暖房コストがかなり節減できる。このような自然エネルギーの利用も十分に考慮されて良い。

冷房に関しては冷房技術というよりも、できるだけ冷房を必要としない工夫を心がけたい。欧米で見られるように、長期間の夏休みをとることも職場での冷房によるエネルギー消費を低減させるのに効果的と考える。また家庭においても通風を考えた家の構造とする一方で、多少の暑さには我慢するということも大事では無かろうか。

「災難に逢う時節には、災難に逢うがよく候。死ぬ時節には、死ぬがよく候。是ハこれ災難をのがるる妙法にて候」という良寛の言葉がある。現代文明は暑さ寒さを人為的に(冷暖房によって)取り除き、年間を通して快適な生活を求めようとしたが、良寛の言葉を敷衍すれば(暑さや寒さも災難ととらえるならば)暑いときには暑いのが、また寒いときには寒いのが自然であり、冷暖房は耐えられないような暑さ、寒さを耐えられる程度に和らげるものであれば良しとする考えもあって良いのかもしれない。

(3) 給湯(入浴等)

現状では給湯の熱源としてはガスを燃焼した際の熱を利用するものが主体であり、一部で夜間電力を使うものもある。よりエネルギー効率の高い方法としてヒートポンプにより湯を沸かす方式(エコキュート:原理的には冷蔵庫やクーラーと同じ)がある。これにより単純に熱源により水を加熱するよりも少ないエネルギーで給湯を行うことができる。

今後はこの方法や太陽熱温水器の利用(両者の併用等も考えられる)の普及により、より少ないエネルギー消費でお湯を得るようにすることが望まれる。

入浴に関して言うならば、入浴する人数が少ない場合は浴槽に湯をはって入浴するよりもシャワーの方が使用する湯の量が少なくて済むとされている。寒い時期、浴槽で体を温めたい場合は別であろうが、夏場は浴槽に浸かるよりもシャワーの利用を勧めたい。

入浴以外の場面においても、人々は安易にお湯を使い過ぎているのではなかろうか。洗い物をする時、水でも十分に洗い流すことができるにもかかわらず、お湯を使っているように思われる。これも冷たい水で手がかじかんでしまうような寒い時期には別として、(湯ではなく)水でも事足りる場合には水を使うようにするようにしても良いように思う。

(4) 調理

調理の場面では省エネの余地は少ないが、圧力鍋の利用による加熱時間の短縮、保温鍋による調理(加熱した後に保温状態で煮炊きが進行する)等が考えられる。

炊飯器の保温機能等は長時間電力を使うため、多くのエネルギーが消費される。大家族であれば食事毎に炊飯することも可能であるが、家族の人数が少ない状況ではそれも困難である。「新潟気軽に省エネくらぶ」では炊いたご飯を冷凍保存し、食べる時に電子レンジで解凍加熱する方法を推奨している。このような方法も普及される事が望ましい。(ただし、当方はまだこのことは実践していない。1食分ごとにパックして冷凍しておくと、その時々の食欲に応じてご飯を食べる量の調節ができないためである。当方は家庭菜園等の外作業を行う場合とそうでない場合とでは食事の量、特にご飯を食べる量がかなり違うのである。)

なお、冷蔵庫の利用にあっては、たくさん詰めすぎない等の配慮が必要である。また現状では食品を必要以上に買い込み、これを保存するために大型の冷蔵庫を備えるということも多い。大きすぎない冷蔵庫をうまく使うことも必要である。

(5) 食糧や身の回りの品々を見直す

私たちは安さや便利さそして目先の変わったものを求めるために、本来は近くで生産されたものでも良いのにあえて遠くで作られたものを買ってはいないだろうか。食べ物にしても季節外れのものを求めてはいないだろうか。

季節のもの、そして近くで生産されたものを求めるようにすること(旬産旬消、地産地消)によりエネルギーの消費も少なくて済む場合が多い。

また余分なものを買ってはいないだろうか。本来はもっと長く使えるものを「飽きてしまったから、古くなったから、時代遅れだから」ということでどんどん買い換えてはいないだろうか。余分なものは買わない、そして買った物は長く使うことが資源やエネルギーの無駄遣いを少なくすることになる。

(6) 生活スタイル〜現代文明を見直す

現代の文明は私たちに快適で便利な生活を提供している。しかしそれは化石燃料等の有限な資源を浪費しつつ得ているものでもある。今やこれら資源に限界も見え始め、また地球温暖化等の原因ともなっている。高度経済成長前は化石燃料は使っていたにせよ、現代に見る程の大量消費ではなかった。更に江戸時代には化石燃料は使われておらず、また資源は徹底的にリサイクルしていた。これから私たちが構築すべき文明は、高度経済成長以前や更には江戸時代の文明の要素(リサイクルを原則とし、化石燃料にそれ程依存しない)をも取り入れたものでなければならないと考える。

4.私の実践

私自身も以前から環境やエネルギー等にも関心があり、自分なりに実践している。以下、私が実践していることについてお示ししたい。

(1) 自転車、公共交通機関の利用

当方以前から自動車には乗らず、買い物等で近くに出かける場合には主に自転車を、更に遠くに行く場合には公共交通機関(主に鉄道)を利用している。時に不便さを感じないわけではないが経済的なメリットもあるので現在も続けている。

(2) 家庭内の省エネ

家の中の電灯はほとんどを蛍光灯にしている。またそれほど明るくなくても良いところは蛍光管の数を減らしている。また不要な灯りはこまめに消すようにしている。

暖かい時期(5月中旬〜10月頃)は浴槽に湯を張って入浴するのではなく、ほとんどシャワーで済ませている。一人暮らしではシャワーの方が省エネになると考えている。

また電気、ガス等の使用量から当家における月別二酸化炭素排出量を計算している。これを行うことは省エネ意欲の向上にもつながる。なお、冬季の暖房は昨年までは灯油を使っていたが、この冬は試みにガスストーブに変えて比較しているところである。

(3) 気に入ったものを長く使う

衣類や耐久消費財等は、本当に気に入ったものを買うようにしている。そうすれば結果的に長く使うことになる。電気製品やパソコン等は良いもの、気に入ったものは値段が高くなってしまうことが多いが、それでも本当に気に入ったものを買うようにしている。

(4) 食べるものは国産のもの、近くでとれたもの、時期のものを主体に

このことが結果的に生産・流通過程におけるエネルギー消費量が少ないものを食べることになる。野菜も9割近くは家庭菜園でとれたものを食べている。


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