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水力発電の特徴と問題点

吉田信威
 これは、平成21年度にいがた市民大学「暮らしとエネルギー」を受講した際の中間レポート(後期第5回「エネルギーの生産現場から学んだこと」で発表)として作成したものです。

−− 目  次 −−


  1. 水力発電の特徴
  2. 水力発電の問題点・課題
  3. 水力発電の今後の展望

1.水力発電の特徴

水力発電のエネルギー源は水の位置のエネルギーであり、その元々は太陽エネルギーに由来する。このためエネルギーの供給が枯渇することはない。ダムや発電施設を建設する際には多額の経費がかかるが、発電のためのエネルギー確保には経費はほとんどかからない。また干ばつや洪水による水量の変動はあるものの、太陽電池や風力発電よりも安定した電力供給を行うことができる。

特にダム式発電では各発電機の稼働・休止が比較的容易にできるため、電力需要の変動に対応することができる(原子力発電では出力を変動させることは困難)。ただし水路式発電では発電機の稼働・休止は行いにくいので、ダム式程には供給電力の大幅な調整は困難である。揚水発電所ではエネルギーの蓄積ができるため、原子力発電による電力が余った時には、その余剰電力により貯水池に揚水し、電力需要が多い時間帯にここで発電して電力供給を行うことができる。

2.水力発電の問題点・課題

水力発電所は大河川の上・中流に設置されるが、このようなところは大消費地(都市)からの距離があるため、搬送設備(送電線)に多額の経費を要すると共に送電時のロスもある。また干ばつになりやすい地域では渇水の危険性もある。

またダムや発電所を建設するためにはほとんどの場合、人が生活し、農林業を営む場所を水没させなければならず、建設には多くの犠牲とコストがかかる。水路式発電では取水口から下流側の流量が少なくなり、河川としての機能や生態系(魚等の動物や水生植物等)が破壊されてしまうことも多い。

加えて既に日本では水力発電に適した条件(河川の状況、地盤等)のところは既に開発済みであり、新たに水力発電を行える場所は少ない。ダムには土砂が堆積するため、その利用年限は有限であり、現在ある水力発電設備においても未来永劫発電が可能なわけではない。

3.水力発電の今後の展望

水力発電は自然エネルギーの利用ということで非常に有意義であるが上記のように問題点も多く抱えている。今後はダムの堆積土砂の効率的な除去方法等も技術開発する等により、既存の水力発電システムを永続的に使い続ける必要がある。水路式発電における取水口では、ほぼ全量を取水するというのではなく、河川機能の維持、生態系の保全も考慮した量を放流するように改めなければならない。

また大きなダムではなく、より小さな流れを利用する小〜中水力発電を推進し、自然エネルギーの効率的な利用を図るようにすることが望ましい。


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