■上賀茂神社の山を借景とする住宅
景観的に良好な立地に建っており、クライアント夫婦がゆっくりと落ち着ける場所となることを目指した。
敷地は前後に生産緑地があるため開放感があり、景色がすばらしい場所であると感じた。しかし、いずれ宅地化される可能性があった。将来を見据えて敷地内で完結した建築を考えるという解決もあったが、果たしてそれが敷地に対して正しいのか、そうすることでその場所の持っている特徴や良好な景観とは何か、どういう建ち方がその場所に相応しいのか、ということを考える余地すら奪ってしまうのではないかと思った。そこでこの場所に相応しい建ち方、景観を楽しみまたその一部となることとはどういうことか、ということを考えた住宅にしたいと思った。そして、周辺の変化を受け入れつつ、住まう人と共に年月を重ねていくことを目指した。
■時の移ろいを眺める現代の町家として
町家のように風が抜ける余白となる庭を建物の前後に配し樹木を植えることで建物内からの近景を確保した上で、現在得られるその借景を生かし環境の良い方角に向かって開放した屋内空間を作り、光や風、季節の移ろいがダイレクトに感じられることを意識した。また、土間を介して主な居室を最大限その庭に開放出来るように設計している。その為に必要だったのは、表通りに面した杉板格子の門扉や、植栽、裏の木塀、そして全面開放が可能な木製建具である。
また、軒高を抑えることで、全体のボリュームを低く抑え旧来の町家のように道路に対して心地よいスケール感となるようにしている。
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