RADIO DAYS 2006


8.移動運用その37/東京都東大和市狭山富士移動(2006.10.8)

秋晴れの連休中日、全市全郡コンテストで移動運用に赴く。

今回の移動地は、東大和市多摩湖湖畔に位置する狭山富士という小高い人工の丘である。

この狭山富士は昭和8年に竣工し、当時は上部がコンクリートで覆われ、富士山の雪のように擬装されたという。

麓には玉湖(たまのうみ)神社という社殿もある。これも昭和9年に、東京都の水道局が水神を祀るものとして建立した比較的新しい神社。

しかし公共団体で神様をまつることが問題となったため、昭和42(1967)年12月、みたま遷しが行われ、空家となってしまい、今は廃虚同然である(詳しい説明はこちらのサイトにある)。

実は、此所には1988年に一度移動運用したことがあって今回は二回目の訪問となる。

地元の阿佐ヶ谷を13時頃出発。

西武線沿線への移動は出発最寄り駅を鷺宮にする場合が多いが、今回はJR中央線経由で赴く。

JR国分寺駅にて西武多摩湖線に乗り換え。この国分寺駅には西武国分寺線も乗り入れていて慣れていないと戸惑う。

多摩湖線は単線。趣がある。

だが多摩湖線と言っても多摩湖周辺まで直通運転はあまりないらしい。萩山で一旦乗り換えて西武遊園地駅まで向う。

そこから更に西武山口線に乗って西武球場前(今はインボイスとかいう名称)へ。

因にこの山口線は、1970年代には軽便鉄道のようなSLがユネスコ村まで走っていたという。

ユネスコ村は東京、埼玉近郊小学校の遠足先定番みたいな所だったのだが、何故か行った記憶がない。風邪で欠席したのかもしれないが。

山口線は「おとぎ電車」とも呼ばれ、元々は遊園地内の遊技乗り物の類だったらしいが、後に正規の鉄道として昇格したようだ。

だがユネスコ村もSL列車も今は無く、1980年代に新交通システムとして軌道内をゴムタイヤで走る電車になってしまった。

児童向けの遊園地は少子化で廃れる一方だが、軽便鉄道のような路線は文化財として貴重で、今からすれば残しておけばよかったのにと悔やまれる。

SLがこれほど近郊でちゃんと走っていたのに、当時は全然関心が無く、一度も乗りに行かなかったのは奇妙な感じ。

それはさておき、秋の陽射しに眩しく輝くドーム球場。この日はたまたまパ・リーグのプレーオフが開催されて歓声が響いていた。

その歓声を背に徒歩で狭山富士へと向う。

一度訪れたとはいえ18年前だ。道はもう憶えていない。地図とコンパスで勘を頼りに歩いていく。

球場から県道を南下すると自転車専用道路に突き当たる。多摩湖サイクリング道路だ。

此所を右折し多摩湖沿いに西へと向う。

湖は樹木に覆われて見えない。時たまサイクリングの自転車とすれ違う。

そして歩き始めてから20分程で玉湖神社に着いた。

伊勢神宮を模して作られたという此の神社は無人化して久しく廃墟の趣があって大変興味深い。その先に狭山富士の登り口がある。

少し登っただけですぐに頂上。

コンクリートの残骸のような構築物が転がっているのは18年前と変わらない。当時は周辺にサバイバルゲームの弾が沢山落ちていたが、今回は見かけない。

狭山富士は標高151m足らずだが周りに遮るものが無く、眺望は抜群。非常に視界のよい日だったので、遥かに本物の富士山もハッキリ見える。

また所沢の街並や西武ドームも望めて気持ちがよい。

この近郊に、荒幡富士という同じく人工の「富士山」がありよく無線運用が行われているが、狭山富士は地図にも載っていない場合もあり、余り無線家は訪れていないようだ。

15時過ぎよりコンテストに参加。

ロケーションも良いためか、0.5wQRP運用で17時前の二時間弱の間に50MHz23局(SSB12/CW11)、144MHz11局(CW/11)、430MHz13局(CW6/FM7)のトータル47局と交信出来た。

因に特定小電力無線でのCQを出してみたがタイミングが悪かったのか応答無し。

17時過ぎるとあっという間に周辺は暗くなってしまうが、黄昏空をバックに富士山がシルエットとなって大変美しい。

日が暮れると同時位にカラスの群れが東から西へ移動していく。

塒にでも帰るのだろうか?

17時半。富士の夕景写真を撮って下山。

結局、山頂滞在中に三人ぐらいのハイカーが登ってきただけ。好天の休日にも拘わらずあまり訪れる人は少ないようだ。

時間があれば、多摩湖周辺を散策したかったのだが出かけるのが遅かったため断念する。

実に気持ちのよい移動運用であった。

東京都東大和市狭山富士におけるFM放送受信リスト(コミュニティーFMのみ)

受信日/2006年10月8日・受信機/AIWA CR-D60・アンテナ/イヤホーンアンテナ・受信地/東京都東大和市狭山富士

周波数(MHz) 局名 信号強度(5段階)
77.7 FM入間

5(ST)
78.2 武蔵野FM?

4(ST)
79.0 レイクサイドFM?

83.4 FM世田谷

3
83.8 調布FM

3

使用RX/YAESU FT817 出力/0.5w運用 使用アンテナ/ミズホ製簡易6mDP


7.ハムフェア2006雑感(2006.8.19)

今年もハムフェア−が東京ビッグサイトで8/19〜20開催された。

自分は19日に足を運ぶ。猛烈に暑い日。そういえば此所数年ハムフェア−は猛暑好天に恵まれている。

今年はあまりゆっくりと見回る時間がなかったのだが、ハムフェア−30周年企画として「アイボール30アワード」という催しがあったのでチャレンジしてみた(左図参照)。

これは会場内で30人の局長さんと会ってコールサインを交換(申請用紙にコールサインと名前を記入してもらう)すればその場でアワードが申請出来るというもの。

会場入り口付近でこのアワードに参加している局長さん達が十数人屯っていたので比較的短時間にコールサインの交換を達成する事が出来た。

申請書は提出したら戻ってこないので、事前にビッグサイト内のコンビニでコピーしておくべきだった。コールサインを交換した局長さんの名前を控えておけなかったのは残念。

それはさておき、今回はアイボールアワードという企画があったにも拘わらず皮肉にも顔見知りの方と出会う機会に恵まれなかった。

晴海の頃からずっとお世話になっていたイラストのサークルも今年は出展しておらず寂しさは隠せない。

余談だが、最近は「JARL NEWS」の表紙やQSLカードのデザインを見ても保守的な傾向が著しい。

10年くらい前、QSLカードが送られてくるとアニメや漫画のキャラクターやアイドルの写真などがデザインされたカードが結構混じっていてバラエティーに富んでいた。著作権の問題や好き嫌いは別としても趣味としての「楽しさ」は当時の方が大きかった気がする。

一方最近は半導体とか無線機、アンテナの写真、コールサインのみが描かれたカードが大半で古典的アマチュア無線家以外のハムからすると退屈極まりない。

なにもカードや機関誌表紙のデザインが豊富なことが必ずしもアマチュア無線の活況に繋がる訳では無いし、本来のQSLカードの役割に写真や絵は関係ないかもしれない。

だが、半導体が並んでいる「JARL NEWS」の表紙を見て理工系以外の人がどれだけ興味を示すかと考えると些か疑問である。

10年程前のハムフェア−の活況は明らかに、趣味としての間口の広さが影響していたと思う。

当時は華があった。

6mのYLさんや企業ブースのコンパニオン等、無線には直接関係ないけれど、華やかさと熱気が備わっていた。

そのような初々しい華がない趣味のお祭りに未来はあるだろうか?甚だ残念である。

さて、今回ちょっと気になった事といえば特定小電力無線。

新製品では無く、そのユーザーの活況振りである。会場内で某サークルがロールコールのチェックインを実施していた。聞いてみると40局近い特定小電力無線の局長さんが出ていたようだ。それも比較的若い方ばかり。こういった特小を楽しむ人達の増加は、ある意味新たな無線のジャンルを広げる良い傾向なのかも知れない。

今回は、あまり長時間会場に留まる事が出来ず、企業ブースのカタログも持ってこなかった。近年、新製品で興味をそそられるアイテムが殆どないのが残念。

購入したものといえば、FT817に関する本とJARLのピン。

展示で面白かったのが巨大な電鍵。実際に叩くと音が出る。よく作ったものだ。

クラブブースはいつものように「日本短波クラブ」に寄ってアンケートに答え、局のグッズを貰ってくる位。

いずれにせよ例年に比べやや寂しいハムフェア−ではあったが、それなりにまだまだ楽しめる要素は大きい。

来年に期待しよう。


6.移動運用その36/神奈川県平塚市湘南平移動(2006.8.6)

今年のフィールドデーコンテストは神奈川県平塚市に位置する湘南平。

此所も無線移動運用のメッカなのだが、今回初めて訪れる。

東京から東海道線快速で約1時間。最近は新宿より新宿湘南ライナーが出ておりこっちの方が便利だったのだがすっかり忘れていた。

午前10時過ぎ、JR平塚駅に着く。

ここから神奈川中央交通バスの湘南平行きバスが出ている筈だ。

地図で見ると距離的に平塚駅よりも大磯駅からの方がずっと近いのだが、交通機関もなく徒歩のルートも解らないので、平塚駅からの確実なバスでのアクセスを選択した。

ところがである。

バスの時刻表を見てみると、湘南平行きはなんと一日に3本しかないではないか!次に来るバスはなんと2時間後。

またもやリサーチ不足に祟られる。バス利用を考えている人は事前に時間を調べておこう。

首都圏以外の移動地のアクセスは基本的に自家用車以外だと極端な困難を伴う事を改めて知る。

流石に2時間も待っていられないので涙を飲んでタクシーを利用する。車で約20分程で現地着。料金は2000円ちょっと。バスだと260円なので10倍近い。まったくトホホである。

帰りのバスの時刻を控えておいたのは言うまでも無い。

さて湘南平。

標高180m程の小高い丘なのだが、周りに遮るものが無く眺望は抜群だ。この日は若干視界が悪かったが、東に平塚の市街、南は大磯。その向うに広大な相模湾が広がる。

頂上の部分は広く、曾ては千畳敷と呼ばれたそうだ。現在はテレビ塔と展望台が設置されている。

この湘南平も第二次大戦中は高射砲の陣地だったそうだ。相模湾から侵入するB29を目標としていたらしい。

無線の移動最適地イコール軍事的要衝という定説が此所でも証明された訳だ。

詳しくは幾つかの戦跡サイトに詳しく述べられている。

さて、フィールドデーコンテスト当日とあって湘南平には大学の無線サークルらしいグループが大きなアンテナを張ってすでに運用中であった。

自分は少し離れた展望台に登り、正午過ぎより運用を開始した。

0.5wQRPにも拘らず、底底稼ぐ事が出来た。特に13時半頃から8エリアが50MHzでEsによりオープン。殆どパイルもなく4局程とQSO成立。15時までに50MHz38局(SSB12、CW26)、144MHz9局(CW9)、430MHz6局(FM4、CW2)のトータル53局と交信。

展望台の上は陽射しが強く、暑い日であったが相模湾からの風が心地よい。

午後からは海の方からガスがせり上がってきて幻想的な風景だ。

因に同じ展望台で特定小電力とCBを運用されている方もいた。その場ではお話出来なかったが、後にこちらがCQを出した時帰り際に応答してくださった。『かながわAC288』という方でよく湘南平に移動されるそうだ。

現地でのFM局受信リストは以下の表を参照。伊豆や小田原の局が良く聞こえた。

さて、無線運用も終え、バスを待つ間テレビ塔の下にある旧展望台に登ってみる。なぜか鍵が金網いっぱいに掛けられている。これは恋人同士がずっと一緒に居られるようにとカップルが一種の願掛けで鍵を取り付けるそうだ。ロマンティックな割には見た目がまるで虫がたくさん張り付いたようで無気味な感じ。

16時半、時刻通り平塚駅行きのバスに乗る。乗客は自分を含めて3〜4人。

湘南平はこの時間でも結構賑わっていたので、やはり大半の人は車利用なのだろう。

帰りは新宿湘南ライナーを利用し帰宅。

神奈川県平塚市湘南平におけるFM放送受信リスト

受信日/2006年8月6日・受信機/AIWA CR-D60・アンテナ/イヤホーンアンテナ・受信地/平塚市湘南平

周波数(MHz) 局名 信号強度(5段階)
76.1 インターFM

5(ST)
76.5 インターFM(横浜)

5(ST)
76.7 TFM(新島)

5(ST)
77.1 放送大

5(ST)
77.5 NHK新島

5(ST)
77.7 FM大和

4(ST)
78.0 BAY-FM

5(ST)
78.3 FMナパサ平塚

5(ST)
78.6 K-MIX東伊豆

3
78.9 葉山FM

4(ST)
79.5 ナック5

5(ST)
80.0 東京FM

5(ST)
80.4 横浜FM小田原

5(ST)
80.7 NHK千葉

5(ST)
81.3 J-WAVE

5(ST)
81.9 NHK横浜

5(ST)
82.5 NHK東京

5(ST)
82.8 鎌倉FM

5(ST)
83.0 K-MIX東伊豆

4(ST)
83.5 NHK小田原

4(ST)
83.9 FMさがみ

5(ST)
84.2 NHK熱海

5(ST)
84.7 横浜FM

5(ST)
85.1 NHK浦和

5(ST)
85.3 NHK伊豆長岡

4(ST)
86.6 K-MIX伊豆長岡

4(ST)
88.8 NHK静岡

2(ST)

使用RX/YAESU FT817 出力/0.5w運用 使用アンテナ/ミズホ製簡易6mDP


5.移動運用その35/埼玉県秩父郡東秩父村堂平山移動(2006.5.4)

ゴールデンウイーク恒例の有志クラブ員による特定小電力無線遠距離交信実験イベントが今年も5月4日に開催された。

昨年は大山見晴し台の移動であまりよい成績を残せなかったため、今回は関東随一と言われる無線のメッカ、埼玉県の堂平山へアタックしようと考えた。アマ無線を始めて20年近くになるが、今だこの堂平山移動は未体験のまま。

「気楽に行ける堂平山」と呼び声は高かったが、どうにもアクセス方法が解らない。ネットでいろいろ検索してみるが何故か車以外での交通手段が不明瞭。少なくとも高尾山のような電車一本で行けそうな場所ではなさそうだ。

とりあえず、徒歩の場合・・。

池袋から東武東上線で小川町駅へ。そこから「白石車庫」行きのバスに乗り終点で下車。更に登山道を徒歩で堂平山に至るという大まかなルートは解った。

だが、具体的な所要時間や明確な登山ルートがどうしても出てこない。

とりあえず、有名なところだからハイカーも多い事だし、行くだけ行ってみるかというレベルで出発。

当日は朝、7時半に自宅を出る。遠征にしてはやや遅い時間。

池袋を8時18分発東武東上線急行に乗って、一路小川町へ。所要時間は約70分。

この日は絶好の行楽日和。快晴のうえに気温も穏やかで風もない。車窓の新緑が眩しい。

9時28分、小川町駅着。

ここからバスに乗り換える訳だが、バス停の時刻表を見て吃驚。

1時間に1本しかない「白石車庫行き」は急行が小川町駅に到着する直前の9時20分にすでに出てしまい、次は1時間後の10時20分までないのだ。まったく接続を考えていないダイヤの組み方には呆れる。同じように困っているハイカーが10人程居た。

一応、バスの時間は事前に調べてはあったが、ゴールデンウイークなのだから臨時便でもあるのだろうと鷹を括っていた。しかし考えが甘かった。このバス会社は行楽シーズンでも商売する気が殆どないようだ。もっとも、この辺りは、車での移動が主流な訳で徒歩中心の利用者など、始めから切り捨てているのだろう。首都圏での交通事情に慣れていると非常に困惑する。

何人かのハイカーはタクシー相乗りで登山口最寄りの場所まで移動するようだ。

しかし、単独行動を考えている自分にとってタクシーは論外。一人で乗ったらいくら掛かるかたまったものではない。

仕方なく、次のバスまで1時間待つ事にする。まったく時間の浪費であった。ただでさえ遅い時間の出発だったのにここでまたロスとは前途多難だ。

待っている間に駅前で無線交信を試みる。飯能市移動の局と1局だけ50MHzSSBでQSO。ロケーションはNGな場所ゆえに、2、3局しか聞こえない。

10時20分。やっと「白石車庫」行きバスが来た。車内はハイカーでほぼ座席が埋まる。

およそ40分のバス移動。のどかな田園風景の中を川沿いに進むバス。総じて普通の路線バスの雰囲気。

川を跨いで鯉のぼりが飾られている場所があったが、この辺りの名物なのだろうか?

途中いくつか登山口最寄りの停留所があるらしく、次々ハイカー客が降りていく。なんと終点まで乗っていたハイカー客は結局自分一人だけ。

これは意外だった。

堂平山という有名な山の登山口「白石車庫」。それもゴールデンウイークである。天候もよい。にも拘らず何故に自分一人なのだ?

本当にここが堂平山登山口最寄りのバス停なのだろうかと一気に不安になる。

バス停に降り立つと殆ど人気がない。登山口の表示もない。大雑把な地図が描かれた看板が立っているだけ。

これではどうしようもないではないか!

一体どちらに向えば堂平山なのか皆目見当がつかない。持参した地図はハイカー用ではない埼玉県の都市地図なので堂平山登山道は記されていない。つまり全く役に立たないのだ。

仕方なく、近くに一軒だけあった食堂のような場所で、堂平山へのルートを訊ねてみた。

ところが、その食堂の人も余りよく解らない様子。

一体どうなっているのだ?

堂平山への入り口最寄りバス停である食堂の人まで知らないなんてそんな事があるのか?バスの車中でハイカーが持っていたハイク用の地図付きチラシ(たぶん東武鉄道が発行しているもの)が置いてないかと訊ねたが、それもないと言う。まったくもって当てが外れっぱなし。

とりあえず、食堂の人が指差す方向にそれらしき山が見えた。山頂が芝で覆われた特徴的な形。そちらの方向に鋪装された林道が延びていたのでとにかくそっちへ進めばなんとか行けそうだとの事。

余りにもイージー。その上、堂平山らしきその山は、遥か彼方にも感じるが、とにかく進まないことには話にならず。

半分自棄になってその道を進むことに決めた。時計を見ると11時10分。すでに交信実験が始まる時刻を過ぎている。

とにかく急いで行けるところまで行くしかあるまい。

姑くは車も楽に走れる舗装道路を歩く。坂も急ではない。すぐ近くに沢が流れており民家も点在して、とても長閑な風景が続く。

幸いだったのは、堂平山キャンプ場への道標が道端に立っており、少なくともこの道が堂平山へ続いている事は間違いなさそうだった。

30分程、舗装林道を行くと道標に従い、右折して登山道に入る。

ここから次第に道も狭くなり坂も急になってくる。それ程暑くはなかったが息が切れてきた。周りは鬱蒼とした杉の針葉樹森林で視界は遮られる。

とにかく地図がないので道標だけが頼り。目的地まであとどれくらいなのか、今、自分が何処を登っているのかさっぱり解らない。

すれ違うハイカーも皆無。携帯ラジオから途切れ途切れに聴こえるナック5だけが救い。

登山道を進むにつれて坂は急激になり足元も危険な情況に。息も絶え絶えだ。

これはきつい。本格的なハイクをするつもりではなかったので身体がついてこない。でも登らねばどうしようもないのだ。

どこが「気楽に移動運用が出来る堂平山」だ。

全く話が違う!

途中、休みを取りつつ這い上がるようにして登る。バス停を出てから30分。すると前方に視界が開けてきた。

もしかして山頂?と足を速めるが、登り切ったところは鋪装された林道との交差点。まだまだ先に登山道が延びている。がっくりと道端で座り込んでいると巨大なムカデがウネウネこちらにやってきた。

恐ろしい!

気を取り直して更に這い上がるようにして登っていく。風景は針葉樹がら天然の落葉樹帯に変わり、周辺は明るくなった。新緑が眩しくそれが幻想的な「清涼剤」として働く。

すでに正午も回った。しかし今だ山頂に辿り着くメドもない。途方に暮れつつも尚も登っていく。

すると再び前方に視界が開けてきた。今度こそ山頂に違いないと足を速めるが出たところは、またもや鋪装された林道。

しかし先ほどとは違い、かなり眺望が効く場所で小さな駐車場もあって車が何台も止まっていた。後になって知ったが、ここは標高695mの七重峠という場所らしい。

もう息も絶え絶え、体力も限界を感じさすがにここで諦めようかとも思ったが、また中途半端な場所での無線運用をしても昨年の二の舞いと思い、更に登山道を行く。ここからはすれ違うハイカーも増えたので、あとどれ位で山頂に辿り着けるかを訊ねてみた。すると40分位だとの返答。

まだまだという印象ではあったが、山頂は近いという確実な情報が手に入ったため、不安は解消された。

七重峠から上は再び針葉樹林の中を進む。

地肌が流出して根が露出している。暗い日光の届かぬ人工的な針葉樹林は大地を疲弊させる事を物語っているようだ。

そして12時40分。「白石車庫」バス停を出てから1時間半ちょっと。最後の急坂を登り切ると視界がグンと開け、芝の広場が現れた。

更にその向こうには天文台のドームが。

やっとの思いで遂に堂平山を登り切ったのである!

正に「やっと来たあ〜」と心で叫ぶ感じ。

堂平山は標高876m。登山口の「白石車庫」バス停は標高350mだから520m近くの標高差を90分程で登ってきた訳である。下界には、その出発点の集落が小さく見おろせた。

近年、こんな山登り等した事がなかったので本当にしんどかったが、大きく開けた快晴のパノラマを見た時は達成感があり、精神衛生上大変よろしい。

時間も13時近かったので急いで運用場所を捜す。

都心方向に開けている場所を捜したがよく解らず、結局、眺望のよいパラグライダー滑走場で運用する事に決めた。

実はこの辺りは、あとで詳しく調べてみると秩父郡東秩父村の領内であるらしい。

山頂付近は比企郡ときがわ町と小川町とも接しているので、てっきり比企郡と思い込んでCQを出してしまった。

まったくのリサーチ不足。完全に行き当たりばったりの移動運用だ。

さて、このパラグライダー滑走場は方角が北西方面に開けた場所なので首都圏とは反対側。

その影響もあってか、殆ど飛ばない。50MHzでCQを出しても空振りばかり。堂平山だから0.5wでも飛ぶだろうと考えていたが、そうでもないらしい。これでは高尾山の方がロケーションとしては上だ。

430MHzでCQを出してやっと2局程応答があった。しかしそれもすぐ下の麓でキャンプをされている移動局。遠距離にはまったく飛んでいないようだった。

結局、アマ無線は13時半から1時間程の運用でわずか9局。50MHz5局(SSB3、CW2)、144MHz2局(SSB2)、430MHz2局(FM2)。

一方、特定小電力無線も飛んでくれず、予定された有志との交信(神奈川県大山、円海山、栃木県霧降高原)も全くダメ。

予備の430MHzメインで呼んでみたが応答無し。昨年の大山よりも結果が悪い。

これも後で知ったのだが、堂平山のアマ無線はこの山頂よりも、白石峠寄りの電波中継所のある剣が峰のほうがロケーションがよいとのこと。

堂平山移動で強力に聴こえる移動局はこの辺りの駐車場に車を停め、更に大きな八木アンテナを立てて運用しているらしい。

天文台周辺は立ち木も多く、あまり見通しも良くなく、同じ「堂平山頂」でも微妙にロケーションによって情況が変わる。

リサーチ不足が祟って無線の方はまったく不本意な結果に終ってしまった。

さて、無線がこんな調子なので早々に無線機を片付け、天文台周辺を散策する。

天文台自体はすでに業務は終了しており柵に囲まれているが、何故か敷地内まで立ち入る事が出来た。

ここはいずれ再利用するのであろうか?

天文台の周りはキャンプ場や駐車スペースが完備されている。ログハウス調の真新しい建物がいくつも建っており利便性はよい。

トイレも綺麗(有料100円)。

ただ、ドリンクの自販機や食堂等は見た限り存在せず、あくまでキャンプ場として堂平山頂は整備されつつあるようだ。

ここは天文観測のメッカでもあるからアマチュア望遠鏡の小屋まで作られていた。


とにかく舗装道路が山頂まで延びているので、車で快適に「登山」出来る。

「気楽に行ける堂平山」とは、あくまで車に限った事である。

車道があるのだから路線バスがあってもよさそうなものだが、何故にないのだろうか?

徒歩ではとても気軽どころか相当の体力と時間を要する場所だ。この点は強調しておきたい。

なお、この日、堂平山頂の三角点近くでCBerや特定小電力無線愛好家のミーティングが開かれていたので、暫しアイボールし名刺を交換。

歩いて登ってきた事を告げるとちょっと驚かれていたようだ。

帰り際に15分程、FM放送受信チェックをして15時45分頃下山開始。登ってきた道をそのまま下る。バスの時間を控えてきたので余裕を持って歩く。

往路とは違い、道が解っている上に、下り坂なので精神的にも体力的にも非常に楽だ。

道端の草花を眺めたり静寂の森林の中で暫し瞑想に耽ったりでゆっくり歩く。帰路もハイカーはほんの僅かで、カップルを一組目撃しただけ。本当に此所は徒歩でやってくるところではないのだ。

沢沿いの民家の庭は色とりどりの春の花が綺麗に咲き競っていて、並みの植物園より見ごたえがある。17時近くの低い陽射しに栄えて素晴らしい。

17時少し前、「白石車庫」バス停に到着。一時間に一本のバスにはなんとか間に合う。

小川町駅行きのバスに此所から乗ったのは自分と、先程目撃したカップルハイカーのみ。途中のバス停で多くのハイカーを拾い、終点までには、朝の往路と同じく座席が埋まっていた。

これまた、後で知ったのだが堂平山のみを単独で登る人は元々少なく、一連のハイキングコースの中間点として堂平山が位置付けられているようだ。

本来は白石峠を経由して堂平山に向うルートが一般的で白石車庫がら直接、堂平山に登る今回のルートは余り紹介されていない。

東武鉄道のサイトに詳しく載っているので、此所の地図をダウンロードして活用するのがベターだ。

17時40分頃、小川町駅到着。

夕日が美しい。

今回、無線は不本意であったが、好天と季節に恵まれてハイクとしては最高のコンディションであったかもしれない。

事前のリサーチが余りにも不足し過ぎたのは反省材料だ。何せ行った事もないところに地図無しで挑んだ訳だからね。下手をすると山道で迷ったかもしれぬ。

ただ、秩父や丹沢等はハイクが主で無線が従の心持で挑まないとダメであろう。高尾山や多摩丘陵のような気軽さはない。ある程度の予備知識と準備が必要。当日思い立って行ける場所ではなさそうだ。

17時58分小川町駅発池袋行き急行で帰途につく。

埼玉県秩父郡東秩父村堂平山におけるFM放送受信リスト

受信日/2006年5月4日・受信機/AIWA CR-D60・アンテナ/イヤホーンアンテナ・受信地/埼玉県秩父郡東秩父村堂平山

周波数(MHz) 局名 信号強度(5段階)
76.1 インターFM

4(ST)
76.4 ベリーFM宇都宮

3(ST)
76.8 FM群馬(草津)?

2
77.1 放送大

5(ST)
77.5 ナック5(秩父)

5(ST)
78.0 BAY-FM

5(ST)
78.4 不明局

4(ST)
78.8 放送大(前橋)

4(ST)
79.5 ナック5

5(ST)
80.0 東京FM

5(ST)
80.3 NHK宇都宮

5(ST)
80.7 NHK千葉

5(ST)
81.3 J-WAVE

5(ST)
81.6 NHK前橋

4(ST)
81.9 NHK横浜

5(ST)
82.2 FM群馬(榛名)

2
82.5 NHK東京

5(ST)
83.2 NHK水戸

4(ST)
83.7 NHK足利

5(ST)
84.0 NHK今市or長野

4
84.2 NHK草津?

2
84.7 横浜FM

5(ST)
85.1 NHK浦和

5
86.3 FM群馬(前橋)

5(ST)
89.0 NHK(三波川)?

5

使用RX/YAESU FT817 出力/0.5w運用 使用アンテナ/ミズホ製簡易6mDP


4.移動運用その34/東京都多摩市鶴牧東公園(2006.4.30)

GW二日目。せっかくの好天に加え、昨日の悪天下の消化不良もあって連続移動運用を決行。

場所は、以前から多摩周辺で移動運用候補地に挙げていた多摩市鶴牧東公園

新宿から京王線で多摩センターへ。そこから徒歩15分ぐらいの所。

地図で確認しながら進むが、「未来都市」のような多摩センター周辺での方向感覚がうまくつかめず、暫し迷う。

この辺りも、駅周辺を除いては車移動が主流。独りとぼとぼ道路の端を行くが、自分以外に人影など殆ど見ない。間違えて駐車場の中に入り込んだりして違和感多し。

暫く進むと芝で覆い尽されたこんもりとした小山が視界に広がる。そこが鶴牧東公園だ。

この山は人工的なのか、元々の地形なのか定かではないが、周りからかなり盛り上がっているので眺望はよい。標高は148m。多摩センタ駅が標高97mだから周囲より50mほど高い。といっても近郊に建っている高層住宅に視界を遮られがち。

さてこの山のてっぺんは、石畳風になっており、石製のベンチもある。

ただ、アンテナを設置出来るような柵も樹木もなく、いつも使っているダイポールアンテナは床に置くか、手で掲げなければならない。

更に、好天ではあったが、風が強く、吹き曝しのこの場所では本まで飛んでいく始末。

風に飛びそうなものはすべて固定しておかなければならず、何度かログ用のメモ帳が風にさらわれ、それを山の下まで追っかけなければならなかった。

常に手が塞がっていて、電鍵、アンテナ、メモ、ペン等、使う度に持ち替え、何かが風に飛ばされる状態。

これまたマトモに無線運用出来ない。雨も困るが風が強いのも閉口する。

今年はやたら風が強い日が多く、風対策も考えねばならぬ。

また散歩に上がってくる家族連れの小さな子供がアンテナにぶつからないかと気になり、落ち着けない。なので、ダイポールを諦め、垂直ホイップに代えて運用した。

結局、無線運用は13時半から15時半までの2時間、50MHz6局(SSB5、CW1)、144MHz3局(SSB3)、430MHz2局(FM)の計10局。

ここはユニークな場所ではあるが、無線運用には余り向かぬ気がした。

16時前に撤収す。

帰りは多摩中央公園を横切って駅へと向う。

「人工未来都市」の雰囲気漂うこの公園と、多摩パルテノン周辺はいつ来ても独特な感覚におそわれる。

連休中で人出は多かったが、映画セットのエキストラにも見えて不思議だ。

使用RX/YAESU FT817 出力/0.5w運用 使用アンテナ/ミズホ製簡易6mDP


3.移動運用その33/神奈川県三浦市城ヶ島公園(2006.4.29)

ALL JA コンテストの日、今回移動地に選んだのは、神奈川県三浦市にある城ヶ島公園だ。

標高は殆どないが、相模灘に突き出て外洋に面した場所なので一度は移動してみたかった場所。

さて、この日は天気予報で関東地方南部ほど雨が降りやすいとのこと。やや心配ではある。

品川から京浜急行の快特で三崎口まで向う。

それにしても京浜急行は路線図が複雑で、普段使っていない人間からするとどれに乗ってよいか解らない。とにかく快特に乗れば終点まで行けそうだ。途中金沢文庫駅で切り離しがあってややこしい。横須賀中央駅を過ぎた辺りから凄い雨。先が思いやられる。

品川から1時間ちょっとで終点三崎口に。

駅前はコンビニとお土産屋が数軒だけで寂しい。観光客より地元の中高生が目立つ。GW初日なのにちょっと拍子抜け。

雨は小やみになっていたがどんよりと曇った空。ここから路線バスで「城ヶ島行き」に乗る。土曜日は1時間に2本程度しかない。ゴールデンウイーク初日とあって渋滞が懸念されたが、悪天とあってそれ程混んでいない。

三崎口から30分程でバスは城ヶ島大橋を渡って島に入る。「白秋碑前」バス停で下車。ここが城が島公園最寄り停車場。

バスを降りるとそこは一般車両の駐車場なのだが、公園の入り口等案内が一切なく戸惑う。

駐車場の西側に公園へ向う小さな入り口をやっと見つけるまで結構時間を要す。

正直、バスで城ヶ島公園に来る人など想定していないのだろう。困ったものだ。でもこの駐車場に車を停めて公園に来場する人もある訳だからもう少し案内をはっきり出してはと思う。

さて、駐車場から10分程坂道を登ると、公園入り口に至る。

横長の南国風ゲートをくぐると、すぐに断崖に波がぶつかる音が聞こえてくる。

城ヶ島東半分を占めるこの公園は、かつて戦争中旧海軍の砲台が設置され、要塞化されていた場所だという。今でも地下には遺構が残されているようだ。

詳しくはこのサイトに記されている。

暫く歩くと2ケ所程展望台が設置されているのが伺える。実はこれも旧軍の射撃観測所の上に建てられたものだそうだ。

この観測所から東京湾に侵入せんとする敵艦を日夜監視していた訳だ。

なんとなく、昔要塞だった雰囲気が何処かしこに残された公園。それ故に入り口が不案内だったのだろうか?

いずれにせよ無線移動運用場所は得てして軍事的要所だった場合が多く、此所もまたその例に漏れず。

さて、現地に到着したのは14時過ぎ、相変わらず小雨模様で激しい風だ。視界不良で対岸の千葉房総半島も見えず。上空には猛禽類らしい大形の鳥がホバーリングしている。観光客も疎らで寂しい。

さっそく運用ロケーションを捜す。

天蓋のない展望台の上から出るのがベストだが、とてもこの天候では無理。仕方なく風雨を凌げる展望台下で運用を始める。

しかしそこでも風で雨が吹込んできて落ち着いて無線が出来ない。気温はそれ程低くはなかったが、風で体温を持っていかれ、1時間半が限度。

結局、50MHzで15局(CW10、SSB5)の交信のみ。

地形的に2エリアに開けていたのだが、その方面は3局程。あとは千葉、神奈川、東京、埼玉の局が2、3局づつで芳しくない。0.5Wでこのロケーションではこの程度か。CQを出しても空振りばかり。

FM局受信は表の通り。館山とか新島、静岡、伊豆辺りの局が強い。予想された範囲内だ。天候的にゆっくり受信する事が出来ず、早々に引き上げる。

因にこの公園には何故かネコが多い。

風雨を凌ぐために展望台下に数匹屯していた。いくらか人に慣れているらしく余り逃げない。

16時半頃、撤収を開始。このような天候ではゆっくり見て廻る事も間々ならず。やはり風と雨の日は移動運用には向いていない。

運良く帰りのバスにはそれ程待たずに乗れた。

三崎港はマグロ漁船の拠点として有名らしく、マグロの店が街道沿いにたくさんあった。しかしGWとはいえ生憎の天候で人は疎ら。

人口減やマグロの枯渇もあってこの漁村も寂れつつある感だ。

京浜急行快特で帰路を急ぐ。品川に着くとそれ程雨の振った形跡は為し。

結局、神奈川南部だけが悪天だったようだ。

神奈川県三浦市城ヶ島公園におけるFM放送受信リスト

受信日/2006年4月29日・受信機/AIWA CR-D60・アンテナ/イヤホーンアンテナ・受信地/三浦市城ヶ島公園

周波数(MHz) 局名 信号強度(5段階)
76.1 インターFM

5(ST)
76.5 インターFM(横浜)

5(ST)
76.7 TFM(新島)

5(ST)
77.1 放送大

5(ST)
77.5 NHK新島

5(ST)
78.0 BAY-FM

5(ST)
78.5 FMブルー湘南

5(ST)
78.9 葉山FM

4(ST)
79.1 川崎FM

4(ST)
79.5 ナック5

5(ST)
80.0 東京FM

5(ST)
80.7 NHK千葉

5(ST)
81.3 J-WAVE

5(ST)
81.9 NHK横浜

5(ST)
82.5 NHK東京

5(ST)
82.8 鎌倉FM

4(ST)
83.1 レディオ湘南

4(ST)
83.7 NHK勝浦

5(ST)
83.9 FMさがみ

2
84.2 NHK熱海

2
84.7 横浜FM

5(ST)
85.1 NHK浦和

3
85.3 NHK伊豆長岡

4(ST)
86.0 NHK三ヶ峠

2
86.6 K-MIX伊豆長岡

4(ST)
87.4 BAY-FM(勝浦)

5(ST)
88.8 NHK静岡

4(ST)

使用RX/YAESU FT817 出力/0.5w運用 使用アンテナ/ミズホ製簡易6mDP


2.特定小電力無線交信の環/高尾山でのCFM最新受信情況(2006.2.11)

関東UHFコンテストの日。特に新たな移動地を開拓する時間的余裕も無く、例によって高尾山ケーブルカー高尾山駅上の展望台(通称ビアマウント)で運用することにした。

さて今回はアマチュア無線の他に特定小電力無線も積極的に運用する。使用機種はケンウッドのUBZ-L5。

これまで毎年5月にクラブ局有志の間で交信実験はやっているのだが、最近はこの特定小電力無線交信を趣味としている人達が結構いるようで休日に各チャンネルをワッチしていると盛んに移動局同志が交信しているのを耳にする。

この情況を傍観するだけでは勿体無い。

QRP無線の醍醐味を味わう上ではこの無線ジャンルは重要である。

さて特定小電力無線は420MHz帯のいくつか指定されたチャンネルを使用する。変調方式はFMモード。送信出力は僅か10mW。コードレスフォンレベルの出力しか出せない。通常であれば見通し距離範囲内の通話に限られる無線ツール。

だが高所で条件さえ揃えば100km以上のDX交信も不可能ではない。

フリーライセンスなので免許が要らず指定されたコールサインもない。だから自局を識別するためにユーザーは自分の住んでいる地名やアルファベット、番号を組み合わせて任意に呼び出し符号を設定する場合が多い。

いままで自分は特にこの呼び出し符号を設定していなかったのだが、昨今の特定小電力無線の盛り上がりに合わせてコールサインを作ってみた。

「すぎなみYA34」

これを自分の識別符号とした。

さて、穏やかな冬晴れの中、午前10時過ぎに高尾山展望台に到着。

さっそく430MHzにてコンテストに参加。いつものFT817を0.5wQRPで運用。15時までにCWモード41局、FMモード35局、SSB モード1局トータル77局と交信。

まあまあの局数を稼げたか。

13時10分頃、待機していた特定小電力3cHから東村山市固定局「とうきょうAM601」のCQが聴こえていたので早速応答する。

流石にここからは見晴しが利くのでメリット5で交信できた。

またその後、13時28分には八王子市長沼公園移動の「みなみたまFN533」と2chにてメリット5。

16時17分には稲城市みはらし緑地移動の「ながのDJ37」と3cHにてメリット5。

16時26分には横浜市旭区固定の「よこはまAA815」と3cHでメリット5。

と次々に交信した。いずれの移動局も以前自分がアマチュア無線で移動運用したお馴染みの場所からだ。

また、13時過ぎには「トウキョウEH101」という局長さんがこの展望台までいらっしゃってアイボールQSO。

パソコンを持参し、ネットを通じた交信方法を興味深く伝授して頂いた。

わずか10mWの無線ツールで思わぬコミュニケーションの環が広がってしまった。

思いのほか、多くの方が特定小電力無線を楽しんでいられる事を実感し吃驚する。無線というロマンは世代やツールを越えて普遍的に脈々と受け継がれているのだ。

それはさておき、今回、この展望台に登ってきたもう一つの理由として、ここからのコミュニティーFM受信情況を詳しく調べる事である。

前回、高尾山山頂に登った時も一応チェックはしたのだが受信性能が低いラジオだったため、十分な調査が出来なかった。またこの展望台でのチェックも久しくやっておらず、改めて最新の受信情況を確認したかった。受信機はAIWA CR-D60。アンテナはイヤホーンコード兼用だがコンパクトながら性能は良い通勤型ラジオだ。

結果は以下の通りである。CFMだけでも14局受信出来た。

横浜のFMサルースや伊勢原のi-FMなど此所からは初受信の局を確認。神奈川方面のCFMは殆ど受信出来る。77.7MHzはなぜか大和ではなく入間が聴こえていたが概ね神奈川方面が強い。

ところでJR中央線内でCFMをチェックしてみると、FM世田谷が思わぬところでも受信出来る事に驚く。

日野、豊田辺りを走行中の車内でも断続的にステレオで聞こえる。

これはなかなか興味深かった。

東京都八王子市高尾山ケーブルカー展望台におけるFM放送受信リスト(コミュニティーFMのみ)

受信日/2006年2月11日・受信機/AIWA CR-D60・アンテナ/イヤホーンアンテナ・受信地/東京都八王子市高尾山ケーブルカー展望台

周波数(MHz) 局名 信号強度(5段階)
77.6 FM多摩

4(ST)
77.7 FMいるま

2(ST)
78.2 武蔵野FM

1
78.4 シブヤFM

3(ST)
78.9 湘南ビーチ(葉山)

1
79.1 FM川崎

5(ST)
82.8 鎌倉FM

5(ST)
83.1 レディオ湘南(藤沢)

4(ST)
83.4 FM世田谷

4(ST)
83.8 調布FM

2
83.9 FM相模原(相模原)

5(ST)
84.1 FMサルース(横浜)

2
84.3 FM江戸川

2
85.7 i-FM(伊勢原)

2


1.FM浦和を聴きに行く(2006.1.29)

昨年末に埼玉県さいたま市に開局した新しいCFM「FM浦和(REDS WAVE)」

久々に自宅で受信出来そうなCFMであると共に、スタッフ、DJさんがかつて馴染みのCFMで活躍された方が移籍されており、大いに楽しみにしていた。

しかしながら距離的に十分受信可能なロケーション(普段快適に受信出来る葛飾、入間、市川よりも近い)にも拘わらず、地上高8mのDX用ログぺリアンテナでもまったく受信することが出来ない。

首都圏での後発CFMは混信などの問題で出力、周波数、アンテナ高等の条件が既存のCFMと比べ著しく悪い。比較的可聴範囲が広い入間や江戸川と比べたら、恐らく面積にして1/10以下ではないか?

下手をするとミニFM局並みだ。とても同じCFMとは思えない。

特に浦和の周波数は条件が悪い。78.3MHzはちょうど渋谷と武蔵野の間。近距離CFMの強力なサイド混信に挟まれていくらスーパーナローの選択度機能&ファインチューニング機能が付いたF-777チューナーといえどもこのサイド混信から微弱な(電波が届いているかも解らない。因に出力は僅か3w)浦和FMの信号を拾い上げることは不可能だ。

受信不可能ならば聴きに行くしかない。

そこで高性能通勤型ラジオAIWA CR-D60を持参しJR線を利用して、どの辺りがFM浦和の受信可能範囲なのか調べてみた。

出発駅のJR阿佐ヶ谷駅ホーム。ラジオを78.3MHzにあわせると隣接する78.4MHzのシブヤFMが強力に入感。JR中央線で新宿に向う車内でも情況は殆ど変わらず。東中野から新宿辺りで別の混信局があったが、浦和とは考えられず。

新宿から埼京線に乗り換え、一路大宮へ。

池袋付近ではやっとシブヤFMの混信も僅かとなったが、聴こえるのはノイズのみで浦和は確認出来ず。

赤羽を過ぎ、荒川を渡っても浦和らしき放送は聴こえてこない。此所まで来ても受信出来ないということはやはり受信範囲は相当狭いと考えられる。

戸田を過ぎて武蔵浦和に向う辺りからやっと浦和の番組らしき音声がラジオから流れ出した。ちょうどこの時間帯、日曜夕方の生放送で女声のゆったりとしたDJが聴こえる。

やっと武蔵浦和を過ぎた頃から安定して受信出来るようになる。アンテナ指向性が北向きと聞いていたので浦和より北は比較的安定した受信が見込めるようだ。

18時半頃、JR大宮駅到着。夜景に浮かぶ西口広場にはストリートミュージシャンで賑やか。傍らのベンチで暫しFM浦和をモニター録音する。「ピュアエッセンス」という生番組。癒し系の曲が心地よい。此所だとSINPO45454でステレオ受信可能である。やはり大宮方面では都心方面より情況がよい。

試しに近くの大宮ソニックビル31階展望ロビーに登って受信を試みる。

FM浦和は比較的強力に入感するがラジオを微妙に動かすと、ノイズや混信を受けて聴きづらい。このような高所でも不安定ということは如何ともしがたい。

たしかレインボータウンFM(江東区)も開局当初は自宅で全く受信出来なかったが、後にアンテナが改善されて受信出来るようになった例がある。浦和FMも今後の受信情況改善の努力を望みたい。

それはさておき、せっかく大宮ソニックビル展望ロビーに来たのだからFMDXをやってみる。開けている方角が北東なので栃木や群馬の県域FMもいくつか受信出来た。

因にこの場所も時々アマ無線や特定小電力無線の移動局が利用する絶好のロケーションだ。

ただ、例によって最近はこのような場所での無線運用は警備員に注意される場合が多くなっており、余り目立つ無線機は使用しない方がよい。ハンディー機でこそこそやるのが原則だ。

なにせ携帯電話はお咎めないのだから基準はいい加減なのだ。電波を発信してはいけないのではなく、「無線」がいけないらしい。だが携帯電話だって無線には変わらないのだから矛盾きわまりない。どうやら「CQ」がだめで「もしもし」ならよいらしい。「CQ」だと周りの人が「怖がる」そうである。アメリカ貿易センタービルテロ事件以来、こういうことに五月蝿くなっているとはいえ、過剰な反応であることに変わりはない。はっきり言えば一種の「差別」であろう。

JARLとかもう少しアマ無線の理解に努める活動に力を入れてほしいものだ。

無線もやりにくい時代になったものである。

さて、帰途、埼京線車内でラジオをチューニングしていると赤羽の北辺りから葛飾FMが聴こえ始めた。ノイズ混じりにお馴染みのDJさんの声が流れる。いつもは自室でリスニングしている番組がこんな場所でも聴こえてくる面白さ。

移動する乗り物とラジオって妙にシンクロする。移動しながら聴こえてくるラジオが目まぐるしく入れ代わり、戯れのトークや懐かしい音楽が意識の中を通過していく。ノイズや混信も一興だ。

ラジオってやっぱりいいね。

追記/

2月に入って改めて自宅(東京都杉並区)にてエフエム浦和の受信を試みたところ、武蔵野と渋谷のサイド混信に悩まされながらもSINPO22242で受信することが出来た。2月以前は全く受信不能であったので、もしかすると送信側が何らかの処置をしたのかもしれない。ただ、混信はきつく状態が良い時でも番組内容を聴き取ることはかなり難しい。

(受信機/パイオニアFー777・アンテナ/ログペリ地上高約8m)

大宮ソニックシティービル31階展望ロビーにおけるFM放送受信リスト(コミュニティーFMのみ)

受信日/2006年1月29日・受信機/AIWA CR-D60・アンテナ/イヤホーンアンテナ・受信地/大宮ソニックシティービル31階展望ロビー

周波数(MHz) 局名 信号強度(5段階)
78.3 FM浦和

5(ST)
78.9 葛飾FM

4(ST)
83.4 世田谷FM

3(ST)
84.3 江戸川FM?

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