『3度めの正直』という言葉がある。
8月22日の段階で今年の灯下の終わりを話あっていたのだが、時間が経つにつれ、灯下採集が8月までとは誰が決めたのだという気がしてきた。気温と湿度と月齢の条件さえ良ければ、虫は9月でも飛ぶのではないか。
生きてさえいれば・・・・(^^;。
なんともあきらめが悪い性格だ。しかし、ベストシーズンのヤナギでの採集はもっと魅力的だ。ここ2週間、採集に行けなかったこともあり、「ヤナギ」病は悪化の一途を辿っていた。
「灯火消化不良、ヤナギ症候群合併症」完全な病気だ。(^^;
こうなったら、昼も夜もやるしかないでしょう。
ヒメオオといえば檜枝岐である。しかし、あいにく彼の地は採集者で大賑わいとのこと。
でもヤナギは他にもいっぱいある。^^
新規開拓すればいいのだ。目的地は群馬だ。その先には新潟もある。^^ カンは密かに9/10の晩の灯下採集に期待していた。なにせ、月齢がよい。天気も良い。しかし、当日まであ〜さんにはそんな気はなかったみたいだ。
昼休みに天気を確認した。気温、湿度、風速、気圧配置どれをとっても言うことなし。否が応でも気分は灯下に傾いていく。灯下でオオクワ、ヤナギでヒメオオ・・・想像しただけで仕事が手につかない。
そこで早々と仕事を切り上げ、あ〜さんに電話をした。ところが、こんな時に限って、あ〜さんは残業だという。(T-T)
スタンバイしてから実に9時間も待って、あ〜さんは迎えに来てくれた。(^^;
明日に備えて、いつもの拠点へ仮眠をとりに向かった。
カラスに負けたくない。それにはポイントを1箇所に絞るしかなかった。
結局話し合いでは決まらなかったため、あ〜さんの実に楽しい妙案で行く先が決まった。(詳細はあ〜さんの採集記(9/11)でどうぞ^^)
行く先さえ決まれば、あとは気合いを入れるだけ。
時間が時間だけに不安を隠せない3人は、とある水銀灯で車を降りた。雨で濡れた草の中を、素手で探るのは、水滴やドロがまとわりついて気持ちが悪い。(;_;)
雨は大嫌いだ〜。
ややマイナス思考に傾きかけた時、ポンちゃんの第一声があがった。
「あっ、いた!」
ポンちゃんがノコ♀を発見。^^
ボウスを免れたこともあり、一気に勢いづいた3人は、安心して目的地に滑り込んだ。時刻はもう、午前4時をまわっていた。
車を降りると、3方に散らばった。
水銀灯を2箇所見て廻ったが、時間が時間だけに、道路にはいなさそうだ。戻ってみると、あ〜さんの両手いっぱいにノコノコ山(^^;;; うらやましい〜。
「いっぱい、いる」という、あ〜さんにつられて、そばに行ってみた。この時間じゃ、まともな所では採れないに違いない。それじゃあ、と思いついたのが、普段は避けている草むらの中。
右ひじで木の枝、左手で雑草を、かき分けて見てみると、案の定クワガタの尻(腹側)を発見。
(ラッキ〜!!こんな簡単に見つかるなんて(^^)。結構マヌケなやつ・・・ん?なんか、このノコの腹太いなぁ。ええっまさか!?こんな・・・でも・・・ひょっとしてオオ?)
あごはブシュの中で確認できなかった。
「ぅっっっお、ぅお〜?」変な言葉を口走っていた。
興奮気味に右手を伸ばした途端
「バシッ。」
右手で押さえたいた枝のことをすっかり忘れていた。枝は右目をかすめて頬骨に当たった。痛かった。(T-T)
右目が半分開かないまま、クワガタの尻をつかんだ。つかまれたクワガタもビックリしたに違いない。いきなりライトを当てられたと思ったら、尻をつかまれて宙づり状態。途端に、身体をねじ曲げ反撃に出た。
「ぅおお痛〜〜ぃ!いたたたたたたた」(T-T)(T-T)(T-T)
あまりの痛さに思わず、投げ出していた。
「何?なんかいたの?とにかく早くつかまえとき〜」
ポンちゃんの、おっとろし〜い激励が飛び込む。(^^;
「ぅっっっお、痛〜〜ぃ。」のに・・・・・(T-T)
慌ててブシュの中に落ちたクワガタを、再度拾い上げた。
まぎれもないオオクワ♂だった。
挟まれた小指からは、プックリと血が盛り上がっていた。
「オオクワじゃん!」駆け寄ってきたあ〜さん
うれしいはずの、いつもの握手が、この時ばかりは痛かった。
あ〜さんは車を運転しながらも、難なく見つける。
そしてカンが代わりに拾いに行くのだが、どこにいるのか良くわからない(^^;
たまらずあ〜さん自ら、登場。
「ここや」
なんと、カンの足先5cm位のところに小さな小さなアカアシ♀が手足を踏ん張っていた。(^^;
「小さすぎる〜」
今度は、30m先の橋の欄干をライトで照らしながら、あ〜さんの動きがピタリと止まった。
もちろんカンには、クワガタはおろか何も見えない。(^^;
「やっぱり、クワガタだった」
そう言って、18mm位のコ♀を手にしていた。ものすご〜〜いクワ目だ。8.0は間違いなくある。(^^;
そのことを言うと本人は、
「30mm以上のは見えへんねん。」という。
なんだ、そうだったのか〜。(^^; (そんなわけないだろ!)
いつにも増してあ〜さんの動きが早まったぞ〜と思うと、看板の陰にネコの目が光っていた。あ〜さんに先に獲物を採られたネコは、「チェッ!」という顔で、斜めに道を横断しながら、うらめしげに我々を見ていた。たとえコ♀1匹でもネコには採られたくないのだ。とてもあ〜さんらしい行動だ。
こうしたあ〜さんの大活躍があって、明け方1時間くらいの間に20頭余りのクワガタが採れた。
案の定、起きていた。
「おはよう。採れたでぇ、60♂」
あ〜さんは冷静な声でそれしか言わない。いつもそうだ。こちらが、ジレと興奮で血管が切れそうになるまで、ジワッと待つ。電話の向こうで、クワ道さんのもどかしさが伝わってくるようだ。と、いうより何のことだわからなかっただろう。時間が時間だけに・・・・。
あ〜さんありがとう。それから6番ありがとう。^^
あ〜さんが妙なことを思いつかなかったら、この楽しい夜明けの採集はなかったかもしれない。
仮眠を採った後、いよいよ本命のヒメオオ採集だ。
地図で、ポンちゃんの調べてきたブナ帯を確認。目指すはその先の標高1,000m超地帯。車は快適に走り出した。途中からブナの手前にヤナギもちらほら確認できた。
いい感じだ〜。
目的地の林道をルッキングするが、すでに木々は赤や黄色を身にまといかけている。ヤナギも黄色く枯れかけていた。あ〜さんが、ヤナギにかじり痕を見つけたが、時期が遅かったのか結局ボウズだった。
一旦下って、川沿いの大きなヤナギの木をルッキングしていると、あ〜さんの第一声があった。アカアシのペアだった。^^
1ペア見つけると、必ず他にもついているのがアカアシの木だ。あれよあれよという間に数頭のアカアシが採れた。でも残念ながら一番大きい個体を、『川ポチャ』してしまった。
あ〜カン共同作業の、『5m上下2段構え』も功を奏さなかった。
川面に、落ちたクワガタのシルエットがはっきり見えた。あきらめきれないあ〜さんは橋の上から網を川に中に突っ込んでいた。(^^;
そんな姿を見て、つりに来ていた人たちが興味を持ち出したらしい。彼らはあ〜さんに話かけていた。「何を採っているんですか?」と聞いたに違いない。採れたアカアシを見せてあげることになった。中にひとり、目を輝かせながら、あ〜さんの話を聞き、あ〜さんの勇姿を眺めていた青年がいた。(ああ、なんという罪つくりなことを・・・。どうしようもないクワ馬鹿を、またひとり増やしてしまったかもしれない。(^^;)
少なくとも、つりをする人には、そもそも、素質があるとカンは思う。
ふと気がつくと、そんな3人を囲むように物見客の輪が出来ていた。(^^;(見せ物じゃないぞぉ〜〜〜(^^;)
灯下採集の時間が迫っていた。おまけに採れすぎて、ルアーケースに余裕がなくなったため、もう採るのはやめることにした。それにしても、わずかな時間で44頭も採れて大満足だ。
さあ、夜の部である。
気温はまずまずだった。ところが、昨日からテンションを上げてきたカンは、ここでいきなり睡魔に襲われた。今朝♂が採れた付近で、まだミヤマが採れたとポンちゃんに一度おこされた。
次に意識が戻った時、あ〜さんは屋根の上だった。(^^;
すでに5目、数十頭も採っていた。涼しめの風に当たって、やっと睡魔から解放された。気合いを入れ直して、懐中電灯を持ち出して採集に参加した。
ある水銀灯近くの土に何か埋まっているのを見つけた。拾ってみると、デカイ甲虫の胴体だった。よく見ると背中にスジがあった。
しっかり握りしめて持っていき、あ〜さんの手のひらにポトリと落とした。
悲しかった(T-T)
「なんで、生きてないんじゃ〜〜〜!!」
この頃になるとあ〜さんにも疲れの色が隠せない。
あ〜さんには内緒だけど、カンに手渡してくれた最後から3番目の虫・・・・・・あれはゴミムシや〜。(^^;
なんだか匂うと思ったら、カンの手の中からだった。ライトを当てて確認すると、触覚が違っていた。
「んん?(^^;」
そのまま何もなかったように、車中から出来るだけ遠くに投げ捨てた。(またあ〜さんが拾ってきたら大変だもん。(^^;)
次の虫を拾ってきたあ〜さんは、鼻をクンクンさせながら言った。
「ん?どこかでカメムシに触ったみたいや・・・」
「・・・・・・(^^;」
『弘法も筆のあやまり』とはよく言ったものだ。こんなことは『あ〜さん史上』初めてのことだ。人間味溢れる、ユーモアたっぷりのあ〜さんの一面が紹介できてちょっとうれしい。^^
ポン&カンの中部採集記は以上をもって終わりです。
これで1999年夏の採集はおしまい。
何はともあれ9月に入って、119頭も採れたのだから大満足です。
でも一旦かかってしまったヤナギ病は、そう簡単には治らないようです。(^^;
この後、またまた檜枝岐に行っちゃいました。(^^;
ほんと採集って楽しいですね。では、また近い将来お会いしましょう。
bye-bye ポン&カン