目取真さんのことばの刃は

今日の世界の激動の本質に突きつけられた

 目取真さんをお迎えして講演集会を実現したのは6月8日でした。あの日から、まだ4ヶ月しか経っていないにもかかわらず、ずっと遠い過去のように思えます。この4ヶ月間、私たちをとりまく世界はめまぐるしく激動しました。否、現に、まだその渦中にいます。
 世界がオリンピック一色に染め上げられた8月6日、グルジアのサーカシュビリ首相はアメリカ軍事顧問団の訓練をうけた精鋭部隊を投入して、親ロシアの南オセチア自治州政府の武力制圧に踏み出しました。しかし、それを予期していたかのようにロシア軍は、逆に、グルジア全土の軍事拠点を電撃的に制圧してしまいました。そして、これを契機に、グルジア・カフカス地方は、いまや、米ロの両軍が直接にらみ合う、“世界大戦の火薬庫”となりました。しかも、カフカスの米ロ対決を焦点にして、アメリカはチェコ、ポーランドへのMD施設建設、極東MDシステムの洋上司令塔=空母G.ワシントンの日本配備をおこない、ロシアは、それに対抗して、新型ICBMの実験をおこないました。私たちの世界は、現在、いつ何時、軍事的暴走が起こってもおかしくない、そんな危機に直面しています。
 しかし、日本では、そんな危機とはおよそ無縁に、“永田町の町内での生き難さ”をもっぱら理由にして、福田首相が前任者安部晋三と同じように、突然、政権を放り出しました。与党自民党の生命力は、すでに完全に尽きてしまったように見えます。
 また、サブプライムローンの焦げつきをきっかけにした金融危機は米4大証券会社のうち第1位のゴールドマンサックスを除いて他の3社すべてが破綻をあらわにするという段階に突入し、全世界の金融恐慌と大不況はもはや避けられない状況になりました。
 いまふり返ると、6月8日の目取真さんの講演集会にみなぎっていたあの熱気と緊張感は、今日のこの激動を予感してのことだったのかもしれないと思えます。「教科書検定問題」と沖縄基地強化の根底を抉り出す目取真さんのことばの刃の切っ先をたどっていくと、それは、はっきりと今日の世界の激動の本質に突きつけられています。新たな世界の激動の中で強化される日米軍事同盟に鋭角的に反抗していくために、本ブックレットを広く活用していただきたいと思います。

(2008.10.21 目取真俊講演録『沖縄で考える 教科書問題・米軍再編・改憲のいま』の編集後記を転載)

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