10月2日 月曜日
7時 ラッシュアワーで混雑するオクラホマ市内を避けて バイパスに迂回し40号線をテキサス州に向かう。

TVの天気予報によると僕の進行方向には寒冷前線による嵐が予測される。
進行方向の空は真っ黒い雲一色に覆われ まさに嵐を予感させるのに十分な迫力であった。
まもなくすると フロントガラスに雨滴が付着しだし 雨脚が強くなると同時に視界も悪くなって、路面も右側の走行車線はトラックの重量車両によってできた轍の窪地には水が溜まり、きわめて走りにくい状況となった。

あたり一面に暗雲がたれこめ 朝とはいえ暗闇の中に強烈な稲光が空気を引き裂くように走る。
その太く鋭い閃光で 周囲がストロボ・フラッシュを浴びたように明るく照らしだされた。


    

途中 マクドナルドで朝食を摂る。
日本のM
cと違って 年輩のスタッフが働いているせいか 落ち着いた雰囲気がお店に漂っている

 
 
      
↑は朝食メニュー ホットケーキ ハンバーグ スクランブル卵 ソーセージ サラダ フライドポテト コーヒーは小カッフ。
 左側にあるのは 地図、手帳と携帯電話です。
それにしても アメリカで飲むコーヒーは美味しい。
日本では味噌汁にご飯と定番であるため 食後のコーヒーは飲まない習慣だが 毎朝コーヒー美味しく飲めるのは アメリカの食べ物と風土のせいであろうか。

上は今日の天気図です。
KS(カンザス州)からOK(オクラホマ州)TX(テキサス州)NM(ニューメキシコ州)へと寒冷前線が停滞している
図面左下の T-stormsのTはThunder(雷さま)のことで、恥ずかしながらモーテルのお姉さんに教えてもらいました。









朝から40号線を230マイル走り12時半 テキサス州 EXT143 Mc Leanに到着


写真の右隅にある緑色のMc leanの看板 
POP849は この街の人口は849人
の意味だそうです

このまま40号線を西へ向かって走行してはあまりにも早く太平洋岸に到着してしまうので、ここからインターステイツ40号線を離れてテキサス273号線を北へ向かうことにした。

ところで 写真の左に黄色い物体が、ぶら下がっていますが 交差点の交通信号機です。
交差点の四方からのワイヤーで中央にぶら下がっています。
 シンプルで低コスト。とっても見やすい。


  
この街は 幌馬車の匂いが残る ルート66号の哀愁の街でもあった。

↓は 道を教えてくださった 1913年生まれ 82歳の MR.R.J.Turner おじさんです。この↑の写真の標識の前で 車のボンネットの上に地図を広げて これから どこへ行こうかと逡巡していたら、古ぼけた小型トラックからドアを開けて出てきて 緑青色の瞳をした優しい眼差しで 「何処に行くんだい?」 と声をかけてくれました。
被っている帽子には白抜きのCowboysの文字が浮き出ていて とっても格好いいし、ご自身の過去と現状を手短に話してくれました。
補聴器 白内障手術 心臓のバイパス手術 右足の脛には農機具で10センチの傷跡、薄くなった頭髪とは反対に 白い肌に褐色の毛が生えていて 口も体もお元気そのものの、元アマチュアボクサーです。
帰国してから写真をお送りしました

          
                                
13時 大陸横断幹線道路40号線を離れ TX273 Northに進路をとる。
マックリーンの街並みをあとに片側一車線の穏やかな登り勾配を抜けると 周囲の景色が一変した。
カントリーロードの登場である。


広大な平原の真ん中を 切れ味鋭い日本刀で一刀両断に切り裂いたような道路が 限りない地平線にむかって真直ぐに伸びている。 
どこまで走っても直線の道路 そして360度周囲は平坦である。
地平線とは このようなものだったのか。   


周囲は家も人も車もまったく視界に入らない。
草原 木 道路 そして青空に浮かぶ白い雲だけが自分の前に展開する。
一瞬 思考が停止したような錯覚に陥った。
言葉では表現しにくい感動のドラマだ。
 

     

     
               

たまに この片側一車線の道路で大型ドラックとすれ違うと 両者が高速走行しているために、乗用車の運転席側の真横をビュンッと通過するトラックに 一瞬車ごと吸い寄せられるような気分になる。

また 遠くの車が接近してくる時間が随分とかかるなあ なんてのんびり考えていて、いざ前車を追い越しにかかると 遠くにいたはずの対向車が 急接近してきて慌ててしまうことがある。車の速度と遠近感が、いままでに体験したことの無い感覚だ。
そのためにも 荒野とか森林・山岳地帯そして太陽を背にして走るときには 自己の存在を明確にするために、真昼でもヘッドライトを必ず点灯することの必要性を痛感した。

 耕作地には水撒き用の自走式灌漑車(
irrigator)が見える。
 横幅は3−400メートルあるのだろうか

          
Pampaで初めて踏み切りに遭遇

踏み切りは通常 一旦停止禁止?である
これだけ両サイドの視界がきけば止まる必要はない。

遮断機が正常に稼動しているのに
一旦停止を強制している日本が不思議なのだ。
一旦停止の制限を解除すれば 大気汚染とか燃費向上など環境にも優しいし 渋滞の緩和にもなりそうだ。

3時過ぎ Borgerに到着。砂漠の中の街のサンプルみたいだ。
銀行 ガソリンスタンド レストランが建ち並ぶ。
建物は ほとんどが真四角な二階建てレンガ造りである。
車と信号、舗装道路、建物こそ昔とは違うが 雰囲気は銀行、酒場、保安官が登場する 映画の西部劇そのものだ
。 
    
ここボルガーから152号線に変わり Dumasから87号線へと続く。
この街のはずれにカントリー・ジェネラルと大きな看板を掲げた店があったので 覘いてみた。農場で使用する道具工具類 馬具など 見たこともない品が陳列されている。


          




 
16時過ぎ 87号線Clayton手前に HI-HOと看板を掲げたメキシカン料理のお店があった。遅めの昼食はアイス(Iced)ティーと野菜サラダ そして この皿の食べ物は何でしょう? 答えは 注文通りの 「ビーフ・サンドイッチ」 なんです
出てきたものを見て パンの姿が見えないので オーダーを間違えたかと思いました。
マッシュポテトと野菜が両サイドにみえて 真中は 手のひら大の肉が4枚重なっていますその上にソースがたっぷりとかかり そして その肉の下にトーストが隠れていました。
オープンサンドイッチだったんです。
味は極上 野菜も甘味があって美味しかった。
でも トーストまでは私の胃袋には収めることは出来ませんでした 
($8.65)

それと テーブルと椅子が大型のテキサス人向けにできているため 僕がいっぱいっぱい背筋を伸ばして座っても テーブルの高さが 僕の胸と高さが同じでは 子供が食べている姿みたいで 恥ずかしい
しかも 靴のかかとが 床から浮いている感じがして 落ち着かない。

テキサス州では いたるところで牛が放牧されていた。 それらの牛はプリプリに肥った日本の牛とは違って、引き締まったというか あばらが見えて やや痩せ気味である。
ここで食べた牛肉は今までアメリカで食べたような野獣臭さがなく ソースをつけない方が肉そのものの味を堪能できるのではないかと思うほどに美味しかった。
それにしても この店にいる中高年の男女は アメリカの牛とは違って そろって肥りすぎだと思う。

17時 ニューメキシコ州 Clayton着この町は 東西南北に通じる鉄道の要衝でもある


     

アメリカの貨物列車はとてつもなく長〜く カメラのファインダーを通して原野を走る列車を見ていると 巨大なムカデが動いているように見える。
↑ これは三重連の機関車にひかれた貨車です


87号線の終点Ratonからインターステイツ25号線を南下し 64号線でCimarronへと向かう。
シマロンの街を抜けると景色ががらりと変わり 山と崖と渓谷に囲まれた黄葉のトンネルを抜けるように 雑木林の中を曲がりくねった快適な道路が続く。
微妙なアクセルワークに小刻みなシフトチェンジを加えながら イメージ通りのコーナリングをするだけで 気持がワクワクしてくる。
曲がりくねった山道が僕の一番の恋人だ、なんて考えているうちに 前方を行く↑青い箱型の車に追いついた
45マイルの制限速度通りにコーナリングをアウト・イン・アウトと教科書通りの運転をして、カーブ手前ではエンジンブレーキを使って十分減速するので ブレーキランプは点燈しない。

追い越し禁止解除になると右側に車を寄せ さりげなく僕に追い越しを促してきた。
その態度に甘えるように 左側から緩やかな追越をかけながら ちらっと運転席をみると、そこには17歳ぐらいのあどけなさが残る少年がいた。
ルームミラーを見ながら後続の少年に手を挙げて挨拶を送ると 彼は右手を挙げて挨拶を返してくれた。
この年齢で 品格のある運転を身につけていることに驚きを感じさせてくれ、僕の心を ほのぼのとした気分にひたしてくれた。

暗闇の峠路を セカンドギヤーを多用しながら一気に下り たまたま たどリついた場所が、ニューメキシコ州Taosという街であった




ロッジの中庭でインディアンの踊りが演じられていたので 早速 円陣の周囲に座り鑑賞させてもらう。夫婦と4人の子供 6人家族だったが 子供たちも年齢の小さい順に一生懸命踊っていたように感じられた

観ているうちに なぜか僕の心が虚しくなった。
チップを置いて早々に部屋に引き上げる


    
昨日のオクラホマのモーテルとは違って 一人で寝るのには勿体ないぐらいである。
 テーブルノ上にはカメラ 床にはリュックとクーラー  リッツの赤い箱も見える。
今日で4日目の泊まりであるが モーテルにレストランが併設されているところが有るなんて 知りませんでした。
その程度の知識しか持ち合わせが無いまま 僕はアメリカに来てしまったのです。

本日の走行 600マイル 3日間で3,500キロ走行した
                         
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