<<単位認定方針>> 2003.7. / 2006.9. 一部修正

 

僕が学生の評価をするようになったとき、最初に考えたのは学部1-2年のときのドイツ語のことである。元々僕は中学校の教科書すら満足に読むことができない英語力しか持っていなかったのだが、まして第二外国語など手に負えない。まったくわからないまま試験に臨んだ結果、1年のときの成績はDDDDDD。つまり、6コマ全部不可だった。僕の大学では、2年までにドイツ語10コマ以上の平均点がCに到達しないと3年になれない仕組みだったが、教務課(成績担当の部署)に行って言われたのは、「来年4コマで必要な平均点は・・、102点かな(←100点満点である)。ま、進級は無理だね」とのお言葉だった。かくして2年生の1年間はドイツ語学校のようだった。とりうる限り(後期などは6コマも)のドイツ語をとり、出席が大事だろうと無欠席で通い、遅刻しそうになったときはタクシーにまで乗った。勿論内容も必死でやった。やっと進級したときは、大学に合格したときよりも格段に嬉しかったのを憶えている。だが、恥ずかしいことに僕はいままったくドイツ語を使うことができない(トホホ)。

僕のドイツ語は僕の能力不足と怠惰のせいなので自業自得なのだが、僕が単位をつけるとなると、「科目は理解できても講師と合わないから講義は出たくない」というような学生もいるだろうし、逆に「どうしてもこの科目だけ理解できない。化学そのものはわかるのに」というような学生も出てくるだろう、そういういろいろな学生に簡単に「不可」などとしてよいものだろうか・・という悩みが出てきた。その悩みは現在も続いている。

 

 一方で単位認定をするときは、残念ながら様々な不正行為がある。そいつが「大学なんてチョロイ」と思うのは、結局そいつの損になるのだからどうでもいいのだが、評価の都合上不正をせずにまじめにやっている学生がそいつの代わりに落ちることがあるのはどうにも納得できない。まあ人生には幾多の不公平があるかも知れないが、せめて僕が提供する学問は公平でなければならないと思う。そこで、どうにか不正の入り込む余地をなくしたいとも思っている。

 

 そんなわけで現在も、「いろいろな学生が、やる気があれば単位をなんとかできる」「公平な」仕組みを模索しているのだが、現時点では、下記の方針で単位を認定することにしている。まだまだ不備なことは多いと思うので、学生のみなさんの忌憚無きご意見をお寄せいただきたい

 

<平常の講義について>

       残念ながら出席については代返を頼む者が大変多く、公平な評価を行うことが困難であるため、2004年以降、出席点は付与しないことにしました。

       一般化学、工業化学の科目ではレポートを課す場合がある。講義時に連絡する。物理化学、分析化学の科目ではレポートは行わない。

       レポート得点(追試を含む)などの平常点は、不合格の場合は翌年以降に持ち越し、翌年の試験の得点に加算する(ただし、当該年度の配点比率に応じた加算となる)。勿論翌年のレポート得点など平常点は更に加算される。平常の努力を積極的に評価する目的である。

       携帯電話などを鳴らすなど講義の進行を妨害した場合、単位認定を拒否する場合がある。

 

<試験について>

       試験は100点満点であり、試験で理解していることを示せば、出席は1回もしていなくてもAで合格できるようにする。

       原則としては持ち込みは不可とする。ただし、以下のように例外がありうる。これは試験の前に連絡します。

     工業化学など、単なる化学ではなく現場での実用を考える科目では、B5サイズ1枚の自筆資料(コピーや印刷は不可)の持ち込みを許可する場合がある。

     一般化学、物理化学、分析化学などの計算を伴う領域に於いては、資料などの持ち込みは不可であるが、電卓または関数電卓の持ち込みを許可する場合がある。

       試験中のコンピュータ・PDAなどの利用、メールやネット接続、電話の使用などはすべて不正行為とみなす。

       試験は開始から終了時間まで、体調不良やお手洗いなどの特別な場合を除いては途中退出を禁じる。

       問題用紙及び解答用紙はすべて回収する。提出のない場合には不正行為とみなす。

       ありえないような似た答案が提出された場合、経緯をすべて大学側に報告する。

 

<追試について>

       従来は追試験を行ってきたが、本試験の中で最も基本的な問題が出来ていないような学生に単位を付与することは、学問への冒涜ではないかと考えるようになった。そのような学生でも同じ学位というのは、尊敬すべき努力をしている多くの学生に大変失礼でもあり、なにより本人の未来の為にもならないと判断する。そのため、2007年度以降、追試験の制度は廃止する。

       ただし、必修単位の場合は最低限の常識で単位の取得ができるように配慮し、従来(追試験ありの場合)よりも合格基準を緩和する。