1999.1.10

Chris Knight
Chris Knight
(Decca)


 これは今さらピック・オヴ・ザ・ウィークとか言ってらんない1枚で。アメリカでは去年の2月に出ていたんだそうです。ほぼ1年前。でも、全然気がつかなくて。先日ふと入手して、その出来のよさにびっくり。やー、情報ってのを満遍なく入手するのはむずかしいねぇ。

 というわけで、ずいぶんと間抜けなタイミングでピック・オヴ・ザ・ウィークにピックしたクリス・ナイト。すでに37歳だとか。ケンタッキー生まれ。以前、ここで取り上げたフレッド・イーグルスミスとの共作曲が入っていたり、バディ・ミラーの名前がメンバー・クレジットに頻繁に登場してきたり。そういう流れの人だ。

 もともとはジョン・プラインが大好きで、やがてスティーヴ・アールを聞いて目ざめた…という人らしく、まさにその辺の人たちの影響が顕著。ブルース・スプリングスティーンやタウンズ・ヴァン・ザント的な肌触りも曲によっては聞き取れる。ジョン・プラインが好きだったんだから、当然ディランだって好きだろうし。そういう作品を書く男だ。いい曲ぞろい。

 音のほうはペダル・スティール、ブズーキ、ドブロなどそのスジの楽器を多用しながらも、きっちりと基本をロックに据えた、ほぼ理想的なカントリー・ロックって感じ。ガイ・クラークばりの渋い歌声も胸にくる。

 で、歌詞。これが深い。すべて対訳付きでじっくり味わいたいくらい。フォークナーとか読んでるみたいな気分だ。フレッド・イーグルスミスと共作した「ラヴ・アンド・45」って曲では、いきなり自分が手にした拳銃を見つめながらシャツの血をぬぐっている警官の描写から始まって、彼が誰も待つ者のいない家に帰るところが描かれて、一方、仮出所したもののかつての夫は去り、金も寝るところもない女の描写に切り替わって、なぜ金がないかというと彼女はなけなしの金をはたいてスミス&ウェッソンを買ったからで…と、ふたつの物語が同時並行で歌われながらやがて折り重なる形で展開していくんだけど。そのサビの部分で“愛と45口径。夜をやり過ごすために必要なのはこの二つだけだ。ひとつはお前を殺す。ひとつはお前を生き続けさせる”って歌詞が出てくる。これ、どっちがどっちに対応してるんだか…。

 説明がテキトーなのでわかりにくいかもしれないけれど、とにかく、どの曲もなんか深ーいドラマを感じさせるわけです。いいアルバムだぁ。ちなみに、エンハンストCD仕様で、ファーム・エイドに出演したときの影像をむりやり音に合わせたチープなビデオ・クリップとかも入ってます(笑)。


[ Home | Pick Of The Week | Kenta's Review ]
[ Features | What's Up Archives ]
[ Kenta's Chart | Fav Links | e-mail]


Kenta's
Nothing But Pop!

To report problems with this site or
to comment on the content of this site:
e-mail kenta@st.rim.or.jp


Copyright ©1999 Kenta Hagiwara