1997.11.1

Lipstick Lies &
Gasoline

Fred Eaglesmith
(Razor & Tie)


 その昔、ガイ・クラークの『オールドNO1』を聞いたときの感触を思い出した。

 カウボーイ・ジャンキーズが取り上げた「Carmelita」の作者としても知られるカナダのシンガー・ソングライター、フレッド・イーグルスミスの、んー、何枚目だろう? ぼくにとっては2枚目のアルバム。少なくともメジャー(といっても、レイザー&タイだけど)からのリリースはこれが最初だろう。

 大ざっぱにくくれば、ネオ・カントリーってことになるのかな。バック・バンド、The Flying Squirrels を率いて、エルヴィス・プレスリー、チャック・ベリーからマール・ハガード、ウェイロン・ジェニングズあたりを経て、ザ・バンド、ガイ・クラーク、ライル・ラヴェッツなどに通じる世界をごつごつと構築している。ウィルコやサン・ヴォルトがある種の戦略的なコンセプトのもとで実現している世界を、もっとストレートに、自然なものとして表現している感じで。泣ける。しゃがれた歌声も胸にくる。

 ハイウェイを疾走する情景をまるでブルース・スプリングスティーンのように鋭く描写する「105」、トム・ウェイツにも通じる乾いたマイナー・シャッフル「シンキング」、最近のロス・ロボスみたいな「ベル」、70年代のエルヴィスに歌わせたかった、しみるカントリー・ワルツ「ドリンキング・トゥー・マッチ」、ハンク・ウィリアムスやエルヴィス、ジャニス・ジョプリンなどのことを歌い込んだ「アルコール&ピルズ」など、いい曲がたっぷり。

 カナダの人だって知らずに聞けば、絶対テキサス野郎だと思っただろうな。アルバム・タイトルも雰囲気あり。かなり気に入りました。

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