1998.7.3

Mermaid
Avenue

Billy Bragg & Wilco
(Elektra)


 イギリスの屈折シンガー・ソングライターと、アメリカのオルタナ・カントリー・バンドの合体盤。この組み合わせによるニュー・アルバムが出ると聞いたとき、こりゃ面白いことになりそうだと思ったけれど。その期待はまったく裏切られなかった。つーか、期待以上。

 アルバム・タイトルの“マーメイド・アヴェニュー”というのは、ブルックリンのコニー・アイランドにある通りの名前だそうで。そこにアメリカン・フォーク音楽の偉人、ウッディ・ガスリーが戦後、家族とともに住んでいた。彼のレコーディング・キャリア自体は戦後ほどなく終わってしまったのだけれど、67年に亡くなる直前まで曲作りは続けていたのだとか。まだメロディのついていない歌詞も大量にあった。

 で、ウッディ・ガスリーの娘さんであるノラさんが、その未発表の歌詞の数々を、ガスリーの息子/孫世代にあたる若いシンガー・ソングライターたちの手で蘇らせることができないかと考えたのが本盤のきっかけ。ビリー・ブラッグとウィルコのジェフ・トウィーディ&ジェイ・ベネットが中心となってメロディをつけ、ナタリー・マーチャントやコリー・ハリスらの協力も得て、ダブリン、シカゴ、ボストンを転戦しつつレコーディング。めでたく、すべて新曲による、しかしすべてウッディ・ガスリーの歌詞によるニュー・アルバムが完成した、と。

 ウッディ・ガスリー、ビリー・ブラッグ、ウィルコという、世代も国も超えた夢のコラボレーション。感動的じゃないですか。

 英米合体による作品だけに、カントリー・ロック、フォーク・ロック、ケルティックなど、両国のルーツ・ミュージックが見事に交錯する仕上がり。曲自体の出来もいい。ガスリー風味を残したメロディもあれば、ディラン調のものもあれば、ザ・バンドふうのものもあれば、ザ・バーズふうもある。もちろん、まったくビリー・ブラッグふうのものも、ウィルコふうのものもある。が、いずれにせよ、どの曲もウッディ・ガスリーの何十年も前の言葉に、この90年代ならではのみずみずしい輝きを与えている。

 というわけで、トム・ウェイツのベスト盤をほんの2日で蹴落として(笑)、見事ピック・オブ・ザ・ウィークの座、獲得です。名盤誕生!


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