1998.7.1

Beautiful
Maladies:
The Island Years

Tom Waits
(Island)


 古巣のアサイラム・レコードを離れ、1983年にアイランド・レコードに移籍してからの音源で構成されたベスト盤。83年の『Swordfishtrombones』、85年の『Rain Dogs』、87年の戯曲の音楽集『Franks Wild Years』、88年のライヴ『Big Time』、92年の『Bone Machine』、同じく92年のジャームッシュ映画のサントラ『Night On Earth』、そして93年の『The Black Rider』まで。出たアルバムからもれなく選曲された、なかなか充実したアンソロジーに仕上がっている。

 トム・ウェイツの場合、「オールド55」の入ったファーストとか、必殺の名盤『The Heart Of Saturday Night』とか、アサイラム在籍時のジャズを明確なルーツに置いた諸作のほうがとっつきやすい気がしないでもない。ギンズバーグやケルアック、あるいはバロウズ調の歌詞を、例のしゃがれ声で、ポエム・リーディングにも一脈通じる独特の節回しで歌う、あの感じ。ぼくも愛聴しました。『Foreign Affairs』あたりがそのピークかな。

 でも、アイランド移籍後、より混沌とした方向性を示し始めてからのトム・ウェイツも、いったんハマるとやめられない魅力を持っているのだ。はじめて『Swordfishtrombones』を聞いたときは、おいおい、どうなっちゃったんだよぉ、あのおセンチな酔いどれ詩人のイメージはどこ行っちゃったんだ……と、嘆いたぼくですが、今となってはどっちかというと、もうアサイラム期よりこっちのほうが好きかも。

 エスニックなパーカッション類を多用しながら構築されたスプーキーかつノイジーなメランコリック・ワールドというか。なんだかワケわかりませんが。この手触りは本当にすごい。クルト・ワイルがさらにいかれちゃったような、この時期のトム・ウェイツ・ミュージックをとりあえずざっと体験するには絶好のベスト盤だろう。

 おかげで、オリジナル・アルバムのほうも聞きたくなっちゃってレコード棚/CD棚を大捜索中です(笑)。


[ Home | Pick Of The Week | Kenta's Review ]
[ Features | What's Up Archives ]
[ Kenta's Chart | Fav Links | e-mail]


Kenta's
Nothing But Pop!

To report problems with this site or
to comment on the content of this site:
e-mail kenta@st.rim.or.jp


Copyright ©1998 Kenta Hagiwara