1998.4.14

Viva Satellite
Todd Snider
(MCA)

 この人の場合、デビュー盤にシークレット・トラックとしてボーナス収録したグランジがらみの曲で注目を集めちゃったせいか、なかなかくっきりしたイメージが確立されづらかったみたい。でも、この3枚目あたりで鉄壁のルーツ・ロック野郎としての評価がいよいよ盛り上がりそう。

 これまでの2枚はMCAナッシュヴィルからのリリースだったけれど、この盤から配給がMCAのポップ部門に変わって。ジン・ブロッサムズとの仕事でおなじみのジョン・ハンプトンのプロデュースのもと、メンフィスでのレコーディング。バンド的にはセカンド・アルバムの延長線上だ。全曲でギターのウィル・キンブロー、ベースのジョー・マリエンチェックががっちりバックアップしている。ドラム、キーボードは変わっているものの、プレイは的確。かっこいいルーツ・ロックが展開されている。

 スティーヴ・ミラーの「ザ・ジョーカー」以外、すべてトッド、あるいはウィルのオリジナル。スペシャル・サンクスにジミー・ヴォーン、キム・リッチー、スティーヴ・グッドマンとかの名前があって。この人たち、演奏に参加しているわけではないけれど、どうやら彼らからいろんなギターを借りまくったみたい。ブッカー・Tの名前もあった。そのせいか、オルガンもうなっている。これも借り物か?(笑) その他、ダン・ベアード、ロス・ライスといった、ルーツ・ロック好きにはうれしい名前も見える。

 あ、ちなみに今回の盤にもシークレット・トラックとしてごきげんなレイヴ・アップ・チューンが入っとりますよ。



12 Bar Blues
Scott Weiland
(Atlantic)

 バンド・メイトがトーク・ショーを結成して活躍しているのを横目に、スコットもソロ・アルバムをリリース。ストーン・テンプル・パイロッツのサイド・プロジェクト第二弾だ。

 かなりいい出来だと思う。彼のビートルズ好きも炸裂。曲によってはデイヴィッド・ボウイみたいだったり、クルト・ワイルを歌うドアーズみたいだったり、マーク・ボランみたいだったり、バラエティ豊か。でも、散漫というわけではない。

 5〜6曲、ダニエル・ラノワがミックスやら共同プロデュースに関わった曲があり、その出来がやはりいいかな。6分を超える「バーバレラ」ってのが特にいいです。



Fifty Eggs
Dan Bern
(WORK/Sony)

 アニ・デフランコがプロデュースしたセカンド・フル・アルバム。アニのパートナーとしてもおなじみのドラマー、アンディ・ストチャンスキー(って読むの?)がポイントになる曲に参加して、イマジネイティヴなドラムを聞かせている。

 ファースト同様、相変わらず曲によってディランみたいになったり、コステロみたいになったり、ジュールズ・シアみたいになったりはするけれど、成長ぶりはかなりのもの。というか、アニ・デフランコっぽい個性が加わって、そこんとこがすごくよかったりするだけなのかもしれないけど(笑)。

 メロディ的にも見事にグレードアップ。歌の表現力も増強されて。とともに、ブックレットに載っている歌詞をぼんやり見ながら聞いていたら、とんでもなく毒々しいユーモアに貫かれていて、ちょっとたじろいでます。やはり只者じゃないね、こいつは。もしかして、ゲイ?



Telegraph
Richard Davies
(Flydaddy)

 エリック・マシューズとカーディナルを組んでいたリチャードさん。カーディナル解散後、2枚目のソロ作だ。

 ブレンダン・オブライエンや、フレイミング・リップスのロナルド・ジョーンズらによる過不足ない、シンプルなバックアップを受けつつ、いい曲を、すっきりと、まっすぐ聞かせている。とはいえ、生来の宅録感覚がモノを言うのか、ひたすら内省的な音像が90年代ならではの閉塞感をこれでもかとばかり聞く者に伝えてくれるのがミソ。わりと抜けのいいポップ・サウンドも聞かれた前作に比べて、ぐっと渋い仕上がりだ。CDエクストラで収録されているライヴ・クリップを見ると、今回の盤はほぼライヴのまんまって感じ。

 ある種の洗練めがけて外向きのアプローチを展開するエリック・マシューズに対して、こちらはどんどんコアに向かって音を凝縮させつつあるかのようだ。



Gerald Collier
Gerald Collier
(Revolution)

 元ベスト・キッサーズ・イン・ザ・ワールド。セルフ・タイトルド・アルバムながら、これがセカンド・ソロだ。

 バンド時代とは変わって、甘めの歌声で、コミュニケーションの不毛を説いてみたり、罪を一人で背負って内省へと旅立ってみたり。世をはかなんでいるわりに、どこか最終的には楽観的なニュアンスが漂うあたりは、かつてのジャクソン・ブラウンの在り方と構造的に通じるものがあるかな。曲によってラップ・スティールを取り入れたりしているところも、そんな感触をもたらす。

 けど、たまに美しいメロディを轟音ギターで切り裂いてみたり。この辺は確実にニルヴァーナ以降。新世代のシンガー・ソングライターならではだ。ピンク・フロイドの「フィアレス」をさらりとカヴァーしたりしているところも面白い。



One by One
Agents of Good Roots
(RCA)

 インディーズで確か2枚出ていたと思う。ヴァージニア出身の4人組のメジャー・デビュー盤だ。インディーズ時代よりもより幅広くなった感じ。どかーんとしたロックものもあるけれど、ちょっとソウルふうのものやジャズふうのもののほうがこの人たちの持ち味みたいだ。

 サックス担当のメンバーもいるけれど、ぶわーっとぶちかますのではなく、知的にアンサンブルを構築している。フィッシュとか、ブルース・ホーンズビーとか、あるいはデイヴ・マシューズ・バンドとか、フーティ&ザ・ブロウフィッシュとか、ああいった連中と同じ土壌で受けそうな雰囲気だな、これは。

 曲によってはいけます。



Dakota Moon
Dakota Moon
(Elektra)

 黒人4人組。ノッケの曲は、もうイントロからいきなりドゥービー・ブラザーズの「リッスン・トゥ・ザ・ミュージック」みたいで。次の曲はベイビーフェイスが作ったエリック・クラプトンみたいで。アルバムの最後のほうにはジェームス・テイラーの「ユア・スマイリング・フェイス」のカヴァーまで入っていて。おいおい、でした(笑)。ジャケット見た印象は、もっと土臭い音楽ふうなのに。

 生ギター主体の音作りは、ビル・ウィザースとか70年前後のアイズリー・ブラザーズとかを意識してるのかもしれないけど、コーラスの処理がボーイズIIメン以降おなじみになった例の肌触りだったりするもんだから、どうもイメージはベイビーフェイスだな、こりゃ。

 ニューヨーク2人、LA2人の混合メンバーってことも含めて、とにかく中庸をひた走る仕上がり。新時代のミドル・オヴ・ザ・ロード・ミュージックです。ベイビーフェイス以来、売れ線の黒人音楽ってこれなのか? そういうのが好きな人にはおすすめです。ぼくは、これまた曲によって好き、かな。




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