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Reviews   Music


Fever In Fever Out
Luscious Jackson
(Grand Royal/Capitol)


 どうしても付きまとう“ビースティ・ボーイズの女の子版”といったイメージを払拭するような一枚。なかなかの傑作だと思う。何年か前、ファースト・アルバムを聞いたとき、かっこいいなと思ったものの、ここまで成長するとは思わなかった。チープなようでいて、でもスムースで、ファンキーなバックトラックに乗って、ちょいハスっぱな、“なーんだか面白くないわよぉ”っぽいヴォーカルがふわふわ。

 ヒット中の「ネイキッド・アイ」とか「アンダー・ユア・スキン」あたりの、ループ・ドラムと生ドラムとの微妙なバランスがたまらないね。ジルとヴィヴィアンによるコースターズとしての活動もいい刺激になっているようだ。

 ダニエル・ラノワがプロデュース。なーんと、エミルー・ハリスがゲスト・ヴォーカルで参加している。どういう人脈なの?



Wonderful World Of Wondermints
Wondermints
(Toy's Factory)


 ブライアン・ウィルソンやエリック・カルメンのお気に入りバンドってことで注目を集め、本国アメリカよりも一足先に日本でデビューを飾ったワンダーミンツ。ほぼ1年ぶりのセカンド・アルバムが登場した。

 今回はまたすんごい選曲のカヴァー集。キング&ゴフィンのペンによるモンキーズの「ポーパス・ソング」、ブライアン・ウィルソンがグレン・キャンベルのために作った「ゲス・アイム・ダム」、ポール・リビア&ザ・レイダーズの「ルイーズ」、ディオンヌ・ワーウィックでおなじみのバカラック・ナンバー「ドント・ゴー・ブレイキング・マイ・ハート」、スモークの「マイ・フレンド・ジャック」、映画『バーバレラ』の主題歌、ファイヴ・ステアステップスの「ウー・チャイルド」、ピンク・フロイドの「アーノルド・レイン」、ストーリーズの「ダーリン」、ハドソン・ブラザーズの「ソー・ユー・アー・ア・スター」、TV主題歌らしい「スカイマン」、アバの「ノウイング・ミー、ノウイング・ユー」、タートルズの「ラヴ・イン・ザ・シティ」、そしてワンダーミンツのファースト・アルバムで人気の高かったブライアン・ウィルソンっぽい「トレイシー・ハイド」の再演ヴァージョン……というラインアップ。

 この選曲にぐっときた人なら、もう間違いなし。彼らのアレンジぶり、演奏ぶりにも絶対に好感を持つはず。ようやくアメリカでもファースト・アルバムがリリースされることになったみたいだし。期待しましょう、こいつらの今後に。

 ところで、こいつらのファースト・アルバムって以前このホームページでも紹介しているんだけど、当時のページデザイン見て、あまりのシンプルさに笑ってしまいました。ぼくも純朴だったなぁ。



Just Say Noel
Various Artists
(Geffen)

 年末商戦ですなぁ。クリスマス・アルバムがCD屋さんの店頭を賑わす時期がやってきましたが。今年はこいつが話題を呼びそう。

 懐かしのフィル・スペクターのクリスマス・アルバムを模したジャケットも泣けるゲフェン・レコードのクリスマス・アルバム。ベックが「リトル・ドラマー・ボーイ」を「リトル・ドラム・マシーン・ボーイ」なんてタイトルでカヴァーしていたり、ソニック・ユースがなんとマーティン・マルのふざけたクリスマス・ソングを取り上げていたり。ゆがみまくった選曲。

 その他の参加アーティストは、エイミー・マン&マイケル・ペン、ポージーズ、ザ・ルーツ、エラスティカ、XTC、ウェンディ&リサなどなど。オルタナな聖夜が今年の気分なのかもね。



Ironman
Ghostface Killah feat. Rakewon and Cappadonna
(Razor Sharp/Epic)


 ウータン・クラン伝説ふたたび……って感じでしょうかね。RZAのプロデュースのもと、レイクウォンら頼もしい同胞のサポートを受け、けっこうワイルドにきめてくれる。

 特筆すべきゲストはデルフォニックスかな。「アフター・ザ・スモーク・イズ・クリア」では、大先輩のスウィートなコーラスをバックに、ゴーストくん、グルーミーなラップを展開。その他、フォースMDズがバックでサム・クックを歌う「ザ・ソウル・コントローラー」、メアリー・J・ブライジが参加したメロウな「オール・ザット・アイ・ガット・イズ・ユー」、シングルカットされた「デイトナ500」、O・V・ライトの歌声をサンプルしまくった「マザーレス・チャイルド」、でもって極めつけ、メソッド・マン参加の「ボックス・イン・ハンド」などなど、聞き応えばっちし。



Unchained
Johnny Cash
(American)



 今ぼくがもっとも信頼しているレーベルのひとつ、アメリカン・レコーディングスからのごきげんなリリースです。リック・ルービンのプロデュースのもと、このレーベルの名前を冠したアルバムで見事復活してみせたジョニー・キャッシュの新作。アメリカン・レコーディングスからの2枚目だ。

 前作はほとんどジョニー・キャッシュひとりの弾き語りアルバムだったけれど、今回は豪華なバンドがバックアップ。トム・ペティ、ベンモント・テンチ、マイク・キャンベル、スティーヴ・フェローン、マーティ・スチュワート(ノージ! 喜べっ)、リンジー・バッキンガム、ミック・フリートウッドといった面々を従え、オリジナル曲ばかりでなく、なーんとサウンドガーデンの「ラスティ・ケイジ」、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの「サザン・アクセンツ」、ベックの「ロウボート」、ディーン・マーチンのヒットとしても知られる「メモリーズ・アー・メイド・オヴ・ジス」などを堂々と歌いこなす。

 しびれます。サン・レコード時代の躍動感がよみがえってきた感じ。



II
Presidents Of The United States Of America
(PopLlama/Columbia)


 いかれた歌詞を、シャープなメロディに乗せ、スピーディでタイトなビートでバックアップ。と、ファースト・アルバムの持ち味をそのまま、いや、もうちょいライヴ寄りにしたような感じで展開した新作。

 歌詞はまたいかれてるぞー。“ジンギスカンと美しいアマゾン女が名付け親のダースベーダーの星で結婚して生まれた娘がスーパーモデル……”みたいなやつとか。“ローリングストーン誌がカエルをスターにして、ミック・ジャガーがキスをして……”とか。

 なんじゃ、こいつら。おもしれーじゃねーかよ、まったく。