Reviews   Music



Roomic Cube Takako Minekawa (Polystar)

 やるなぁ。ミネカワ。すごいよ。まじ。かっこいい。

 なんだか、いつもぽーっとしてるみたいに見えるくせしてさ。実はすごいこと考えてたんじゃん。こんな、とんでもなくごきげんな音を作り上げちゃうなんて。ごきげんに“今”。ごきげんにキュート。ごきげんにポップ。ごきげんにオルタナ。ごきげんにサイケ。ごきげんにパンク。様々な曲折を経て、しかし今、ついにミネカワの才能が開花……って感じだ。他人事ながら、なんだかぼくもうれしくってしょうがない。

 今、あるべきガール・ポップって、こういうものなんじゃないか。いや、もちろん日本のマーケットって土壌に限ってしまえば事情はまるで違ってくるんだろうけど。既成の国境だとか音楽ジャンルだとか、そういうめんどっちいものを全部ふっとばした耳で接する限り、今、ぼくたちの気分にいちばんぴったりくる日本の女の子の歌声といえば、たとえばチボ・マット、たとえばKAZMIウィズ・リッキーズ。そして、嶺川貴子がようやくリリースしてくれた、このソロ名義での初オリジナル・フル・アルバムもそう。山本ムーグ、シュガー吉永ら、
バッファロー・ドーターの面々との鉄壁のコンビネーションによって産み落とされた、実に感度良好なハイパー・ポップ盤だ。ベックが好きで、ドノヴァンを愛し、ステレオラブをいつくしみ、NRBQに心を躍らせ、ゲンズブールを敬うミネカワのナチュラルな息遣いが、いい形で結晶した一枚って感じ。見直したよ。いや、これまで見くびってたわけじゃなくて。改めてミネカワの鋭く柔軟な直感に感服した。

 夢見がちなようでいて、無意識のうちにも今の時代の気分をぴたりつかみとったミネカワのニュー・アルバム。できるだけ多くの人の耳に届いてほしいなと思う。本人はそんなこと思ってないかもしんないけど。ぼくは思う。だから、ほら、みんな聞こ。今すぐ。
(for Flyer, May 1996)



Long Line Peter Wolf (Reprise)

 久々。6年ぶりの新作。J・ガイルズ・バンドを脱けてから、セールス的にはあまりパッとしないピーターさんですが、ぼくにとっては、もうこの声が聞けるだけで腰にきます。相変わらず思い切りのいい、切れ込み鋭い歌声。ありがたや、ありがたや。R&Bを基調に、生ギターとかをガンガン鳴らす……ってノリの仕上がりで。抗えません。



Chim Chim's Badass Revenge Fishbone (Rowdy)

 こいつらも、いつまでたっても本国アメリカではブレイクに至らず。起死回生を狙って、売れっ子プロデューサー、ダラス・オースティンのラウディ・レコードへと移籍。新作をぶちかましてきた。だもんで、売れ線を狙ってくるのかな……と思ったら、やっぱりフィッシュボーン、相変わらずぶっこわれた無敵のファンキー・ハード・オルタナ・ロックンロールを聞かせてくれる。えらいっ。アンジェロ、ちょっとオツムがイっちゃったって噂も聞いてたけど。だいじょぶなのかな。だいじょぶなのか、だいじょぶじゃないのか、音を聞いただけでは判断できないってとこが、フィッシュボーンのフィッシュボーンたるユエンではありますな(笑)。かっこいーぜっ!



Mission To Please
The Isley Brothers featuring Ronald Isley (Island)

 このところR・ケリーとの共演をやたらしているロナルド・アイズリーだけに、今回のアルバムも、予想通り、R・ケリーがらみ。3曲をR・ケリーが提供/プロデュースしている。で、キース・スウェットが1曲担当。残りはすべてアンジェラ・ウィンブッシュのプロデュースによるものだ。

 ナイス・ン・スムースなスロウ・グルーヴの雨アラレ。ベビーフェイス作の「ティアーズ」、シンプリー・レッドの「ホールディング・バック・ジ・イヤーズ」のカヴァーあたりも話題になってるけど、やっぱりR・ケリーの3曲がいいぞー。アルバム・タイトル・チューン的存在の「ミッション・トゥ・プリーズ・ユー」なんか、今宵貴女の枕を濡らす……ってやつですよ、うへへ。



All This Useless Beauty Elvis Costello & The Attractions (Warner Bros.)

 他アーティストに提供した自作曲(ボツ含む)のセルフ・カヴァー集。ロジャー・マッギンだティル・チューズデイだ……と収録曲の素性をウンヌンしていくと、それだけでけっこうな原稿が書けちゃいそうだね。めんどくさいから書かないけど(笑)。アトラクションズを従えての一枚ながら、けっこう音のほうはバラエティ豊か。コステロのシンガーとしての力量を思い知らせてくれる局面も。ブロドスキーQもまたゲスト参加してる。



First Round Knock Out
Dr. Dre (Triple X)

 プロデュースもの、自演もの、取りまとめてのドレの仕事アンソロジーですわ。こうして聞き返してみると、この人、心意気はすっかりオールド・スクールなんだなぁって思いますよ。ドレ&スヌープ、D・O・C、ワールド・クラス・レッキン・クルー、コケイン、ミッシェル・レ、ポ・ブローク・アンド・ロンリー、ローズ・ロイスなどなど、あれこれ聞けます。



Irresistible Bliss
Soul Coughing (Slash / London)


 ヒップホップ+ジャズ+ポエトリー・リーディング……といった風情がかっくいいソウル・コフィングのセカンド。前作はミッチェル・フルームとチャド・ブレイクのプロデュースだったけど、今回はなんとデヴィッド・カーン。チャド・ブレイクはミキサーとしてクレジットされている。基本的なノリと構造は前作同様。前よりロック色が強くなったかな、ちょっとだけ。初発の衝撃はなくなっちゃったから、楽曲自体の良し悪しが目立つようになってきたって感じでしょうか。そういう意味では、んー、もしかしたら少し中途半端かもしんない。でも愛聴してます。