2000.3.31

Appalachian Journey (Jacket) Appalachian
Journey

Yo-Yo Ma
Edgar Meyer
Mark O'Connor

(Sony Classical)


 ヨーヨー・マ主導のアルバム……として日本では売られるんだろうけど。これはむしろクラッシク・ファンよりもカントリー/フォーク/ロックを含むアメリカン・ミュージック・ファンにこそ広く聞かれるべき1枚。ジェームス・テイラーとアリソン・クラウスもゲスト参加しているし。曲を提供しているのは主にマーク・オコナーとエドガー・メイヤーだし。

Appalachian Waltz
Appalachian Waltz
Ma/O'connor/
Meyer

(1996)
 特にエドガー・メイヤー。この人、ここ数年すごくいいね。めきめき才能を開花させつつある。

 今年で40歳。80年代以降、ジェリー・ダグラス、ベラ・フレックらと共演しながら頭角を現わしてきたコンテンポラリー・ブルーグラス界のウッド・ベース奏者だけど。今や活動の拠点をクラシック・シーンに置いていて。96年、マ&オコナーとともにアルバム『アパラチアン・ワルツ』に参加してプロデュースと作曲を手がけたあたりから、ぼくはこの人の魅力にすっかりハマってしまった。このところヨーヨー・マは現代アメリカ作曲家の作品にご執心だし。マーク・オコナーも近ごろはすっかりクラシック畑で活動しているものの、もともとはご存じの通りばりばりのブルーグラス/カントリー・プレイヤーだし。このトリオ、相性はばっちりだった。

Uncommon Ritual
Uncommon Ritual
Meyer/Fleck/
Marshall

(1997)
 メイヤーに関しては、さらに97年、ベラ・フレックとマイク・マーシャルとともに出した『アンコモン・リチュアル』ってアルバムもよかった。去年は、ここでも簡単にレビューした『ショート・トリップ・ホーム』って傑作アルバムをジョシュア・ベル、サム・ブッシュ、マイク・マーシャルとともに出して、ぼくをさらにとりこにしてくれて。ぼくは勢いあまって、4月19日に日本のソニーから出る『カントリー・ロックの逆襲2000〜アイム・ムーヴィン・オン』ってコンピにそのアルバムのタイトル・トラックを収録しちゃったくらいだ。ロックじゃねーだろ(笑)。

Short Trip Home
Short Trip Home
Meyer/Bell

(1999)
 今年に入ってからも、つい先日、ヒラリー・ハーンって19歳のアメリカのヴァイオリン奏者がメイヤーさんのヴァイオリン・コンチェルトを取り上げていた。特に第2楽章が素晴らしかったな。

 この人の魅力がどんなものかというと。『ショート・トリップ・ホーム』のレビューにも書いた通り、ヴァン・ダイク・パークスやランディ・ニューマン、ハリー・ニルソンらの作品とも共通するアメリカン・ノスタルジアというか。いや、前述ヒラリー・ハーンが同じアルバムで取り上げていたサミュエル・バーバーとか、あるいはアイヴズとか、コープランドとか、バーンスタインとか、ガーシュインとか、フォスターとか……。クラシック界も含む近代アメリカの作曲家すべてが抗いようもなくたたえている“源流”というか。そういったものに、今、この2000年代からまっすぐ目を向けているような姿勢。これに胸が震えるのだ。

Barber & Meyer
Barber & Meyer
Violin Concertos

Hilary Hahn

(2000)
 そんな彼が、再びヨーヨー・マ、マーク・オコナーと組んでリリースした新作がこの『アパラチアン・ジャーニー』。明らかに『アパラチアン・ワルツ』の続編だけど、冒頭で記したように今回はジェームス・テイラーとアリソン・クラウスもそれぞれ2曲ずつにゲスト参加。1曲ずつヴォーカルも聞かせている。

 またまた全曲、素晴らしい仕上がり。特にジェームス・テイラーが参加した2曲が泣ける。ひとつはフォスターの曲。こっちでは歌ってます。あとひとつはJTのオリジナル「ベンジャミン」。この「ベンジャミン」が最高なんだ。77年、自分の子供の名前を付けてデイヴィッド・サンボーンのアルバム『プロミス・ミー・ザ・ムーン』に提供していたあの曲。うれしい再登場です。JTの生ギターと口笛もストリングス・アンサンブルと見事に溶け合って。

 JTとアリソン・クラウスは当然参加しないんだろうけど、マ/オコナー/メイヤーはこのアルバムのリリースに合わせて来日するんだよね。これは見たいぞ。


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