2000.1.8

Live From
Central Park

Sheryl Crow And Friends
(A&M)

 ぼくはこの人、なんだか好きですよ。デビュー盤では、ちょっと洗練されたシンガー・ソングライターって感じなのかなと思っていたけれど、その後どんどんルーツ・ロック・フリークぶりを発揮していって。骨格のがっちりしたアメリカン・バンド・サウンドを聞かせてくれる頼もしいおねーちゃんの本性を暴露。かっこいいです。歌うめーし。むちゃ。表現力も含めて。なめちゃいかん。エミルー・ハリス、キャロル・キング、ジャニス・ジョプリン、ペギー・リーなど、様々な米女性シンガーへの愛憎が入り乱れる彼女の歌声はまじにすごいと思う。

 と、そんな彼女が去年の9月、ニューヨークのセントラル・パークで行なったライヴの模様を収めた盤。エリック・クラプトンを招いて「ホワイト・ルーム」ぶちかましたり、憧れのキース・リチャーズとともに「ハッピー」を聞かせたり、クリッシー・ハインド、サラ・マクマフラン、スティーヴィー・ニックス、ディキシー・チックスといった新旧同性アーティストと共演したり。これは楽しいライヴ盤だ。クリッシーとのデュエットによる「イフ・イット・メイクス・ユー・ハッピー」とか聞いていると、そこにボブ・ディランの影も強く感じられて。いいです、これ。



Born Again Savage
Little Steven
(Pachyderm/Renegade Nation)

 ボスとともに復活Eストリート・バンドとしてツアーしているマイアミ・スティーヴの新作ソロ。最近はTVドラマの俳優としても当たっているそうで、世紀末、またまたお忙し男と化しているようだ。

 そんな勢いのせいか、新作はかつてのソリッドなブルー・アイド・ソウル系ロックではなく、ハード・ロック。自らライナーで、ヤードバーズ、クリーム、キンクスといったハード・ロックのオリジネイターへの敬意を記しているが、音のほうはむしろ昨今のコーンとか、あのあたりの音に拮抗しようという気合充満の1枚だ。U2のアダム・クレイトンと、ジョン・ボーナムの息子ジェイソンがバックを固めている。



Shapeshifter
Marcy Playground
(Capitol)

 セカンド。まあ、前作同様、そこそこよくできたポスト・グランジ・オルタナ・ポップって感じですが。中心メンバー、ジョン・ウォズニアックの作る曲に聞き取れるそこはかとないポップ・センスがぼくはけっこう好きで。わりと好感を持っている。今回も好感持ちました。

 でも、ちょっと匿名性、強すぎるかな。匿名っぽい方面が好きな人にはおすすめ。



Modified
Save Ferris
(Epic)

 「カモン・アイリーン」のカヴァーで当てたオレンジ・カウンティのオルタナ・ポップ・バンド。新作が出ました。もともとは売れないスカ・バンドやってたそうで、その持ち味も含めて“今っぽい”グルーヴを分け隔てなくポップに取り込んだ音作りを聞かせている。

 モダン・ロック・ステーションが好きそうな音だなぁ。バラードもあるけど、やっぱりぶわーっとアクセル全開でかますポップなロック・チューンのほうがいいっすね。



Sugar
Tonic
(Uptown/Universal)

 『Xファイル』とか『スクリーム2』とか『ムーンライト・ドライブ』とかのサントラにも参加していたオルタナ/ルーツ・ロック系バンドの新作。特に『ムーンライト・ドライブ』で披露していた「うわさの男」のカヴァーが、なかなか真っ向勝負で楽しかったので、それから96年に出た『レモン・パレード』ってアルバムを入手して楽しんでいたのだけれど。

 今回も彼らならではの、ちょっとダークなルーツ・ロックを聞かせてくれる。メンバー・チェンジがあったようだけれど、うまいこと切り抜けている模様。前作はジェリーフィッシュやブラック・クロウズとも仕事している Jack Joseph Puig (何て読むの?)がプロデュースしていたが、今回は本人たちのプロデュースだ。まあ、サントラにたくさん参加しているってことは、たぶんユニバーサルが期待をかけているってことだろうし、勝負どころなんだろうな。



This Is
Pulp Country!

Kristi Rose
(Hepcat)

 もう10年以上前、カントリーとパンクを強引に合体させたアルバムをラウンダーからリリースしていた女性シンガーがインディーズで久々に復活。

 ジャケットとか、アルバム・タイトルとか、最高にいかがわしくていいんだけど。ただ、少々やりすぎの感も。ヒルビリー・シンガー的な味と場末の自称ミュージカル・スター的な味とが交錯。「ジャニー・ギター」とか歌っちゃってるもの。すごいですよ。退屈している方に、おすすめします(笑)。



Loud Guitars,
Big Suspicions

Shannon Curfman
(Arista)

 ちょっと前に出た盤ですが。タワー・レコードのポイントカードがたまったのでもらってみました(笑)。1985年7月生まれだって。14歳だよ。若いにもかかわらず、ディープなブルース・ロックを聞かせるコギャルのデビュー盤だ。98年にインディーズで出てから、99年、アリスタが全米に向けて再リリースした。

 売り文句にはボニー・レイットとかメリッサ・エスリッジとか、なんとアレサ・フランクリンとかの名前まで引き合いに出されていて。前から興味は持っていたのだけれど、こういうのって期待ほどじゃない場合が多いので、ポイントカードたまるまで待ってましたが。まあ、わりかし立派な仕上がりかな。ジョニー・ラングの女の子版というか。

 大半が彼女のオリジナル。ザ・バンドの「ウェイト」やってたり、シェリル・クロウの曲やってたり、ジョニー・ラングがゲスト参加&曲作りに協力してたり。話題もそれなり。ガキのくせに気張りすぎの局面も多く、ずっと聞いてると疲れるけど、とりあえず将来に期待しときましょう。こういう音楽やるなら、もうちょっと年とってからのほうがいいかも。ポイントカードたまってる人、お試しを。



The Nashville Sessions
Leftover Salmon
(Hollywood)

 自らの音楽を“ポリエスニック・ケイジャン・スラムグラス”と称しているというコロラドのバンドの新作は、ナッシュヴィルに赴いての豪華なセッション・アルバムだ。これもちょっと前に出た盤だけど、上のシャノンちゃんのアルバムとともにポイントカードでゲットしてきました(笑)。

 デル&ロニー・マッコーリー、タジ・マハール、ベラ・フラック、サム・ブッシュ、ジェリー・ダグラス、ルシンダ・ウィリアムス、ウェイロン・ジェニングス、アール・スクラッグス、ニッティ・グリッティのジェフ・ハナなどなど、曲ごとにフィーチャーされるゲストの顔ぶれは見事。ランディ・スクラッグズのプロデュースのもと、いきいきとセッションしている。

 ベラ・フレックらがゲスト参加した曲のいかがわしいラテン風味とか、ルシンダの歌のバックにジョーエル・ソニアーのアコーディオンが軽快に絡む曲のテックス・メックス臭とか、もう絶妙です。デル・マッコーリーやタジ・マハールもいい味。いいもんもらっちゃったなぁ。当たりだっ!



Retrograss
Grisman, Hartford
& Seeger

(Acoustic Disc)

 これも輸入盤屋さんにはだいぶ前に並んだもの。最近ヴィヴィドから国内配給されたので、取り上げておきましょう。

 今回、ピック・オブ・ザ・ウィークで取り上げたマイク・ネスの方向性とは真逆というか。デイヴィッド・グリスマン、ジョン・ハートフォード、マイク・シーガーという3人の腕ききブルーグラサーが、エルヴィス・プレスリー、ボブ・ディラン、チャック・ベリー、オーティス・レディング、ビートルズといったアーティストの楽曲をオールド・タイミーなブルーグラスやカントリー、ジャグ・バンド、ブルース、ラグタイムなどのサウンドへとリアレンジして聞かせる企画盤だ。

 他にもビル・モンロー、ジミー・マーティン、フラット&スクラッグスといったブルーグラス畑の偉人たちの曲も取り上げられているが、上に記した人たちも含め、なるほどこういう人たちは伝統にのっとった曲作りをしてきたんだなぁ…という事実を思い知らせてくれる仕上がり。かなりおもろいっす。



The Velvet Toch Of
Los Straitjackets

Los Straitjackets
(Yep Roc)

 詳しいことは全然知らないんですけど。ジャケット見ればわかる通り、メンバー全員プロレスのマスクかぶった4人組エレキ・インスト・バンド。チャペル・ヒルにあるインディ・レーベルからのリリースなので、その筋の人なのかな。

 なかなかかっこいいガレージ系エレキ・インストを聞かせる連中で。基本的にはオリジナル曲中心なのだけれど、本盤にはなんと、あの『タイタニック』のテーマ曲、セリーヌ・ディオンでおなじみの「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」が入ってて。見事なジョー・ミーク・サウンドにアレンジされております。演奏もうまいし。近ごろ気に入ってます。まじ。




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