albums (The Beach Boys Today!)

 

The Beach Boys Today!
The Beach Boys
(Capitol) 1965


 

 

 1964年にはシングル「アイ・ゲット・アラウンド」が彼らにとって初の全米ナンバーワンに輝き、そのB面「ドント・ウォーリー・ベイビー」も24位まで上昇。同年8月にカリフォルニア州サクラメントで収録されたライヴ・アルバム『Beach Boys Concert』も彼らにとって初の全米ナンバーワン・アルバムとなった。テレビ出演も精力的にこなし、ワールド・ツアーも大盛況。まさにビーチ・ボーイズは第一期のピークを迎えたわけだが。

 ちょうどそのころ、ブライアンはマリファナを初体験。ブライアンのドラッグ漬けの第一歩だった。同年12月23日、ブライアンは今後一切コンサート・ツアーには出ないことを宣言。ヒット曲を作り続けるプレッシャー、各地を飛び回る疲れ、ドラッグの影響、そして、当時アメリカを席捲していたビートル旋風に対する恐怖などが、彼の精神をずたずたにしはじめていた。以降、彼はツアーには参加せず偏執狂的にスタジオワークへと専念していくことになる。ブライアンの代役としてブルース・ジョンストンを加えたビーチ・ボーイズが各地をツアーしながら陽気なカリフォルニア気質を全米に向けてふりまいている間、ブライアンはひとりスタジオにこもり、西海岸きってのセッション・プレーヤーたちを指揮しながら、どんどん自らの心の内面へと入り込んだサウンド作りに没頭した。

 その最初の成果が、このアルバム『トゥデイ!』だった。1965年3月にリリースされ、全米チャートで最高4位まで上昇している。アナログ盤A面にアップテンポ曲を、B面にスロー曲を集めるという構成も、当時にしては珍しいものだった。そして、特にこのB面での奥深くシンフォニックなアプローチがほとんど直接的に66年の傑作アルバム『ペット・サウンズ』へと結実していくことになる。本盤を皮切りに、レコーディング・グループとしてのビーチ・ボーイズは通常の“バンド”のコンセプトを超え、ブライアンが主導するより雄大なサウンド・プロダクト・ユニットへと姿を変えていくことになる。

 ハル・ブレインによる複雑なドラム・パターンや、ハープシコード、ハーモニカといった意外な楽器の起用、絶妙に絡み合う掛け合いのコーラス……など、もはや通常のギター・コンボ編成では再現が不可能なポップ・シンフォニーに仕上がった「ホエン・アイ・グロウ・アップ」。12弦ギター、オルガン、ベースとユニゾンするバリトン・ギター、タンバリン、そしてふくよかなコーラスなど、すべての楽器と歌声が見事に有機的に絡まり合い、この上なく美しい世界を作り上げている「プリーズ・レット・ミー・ワンダー」、通常のバラード作品では考えられないようなドラムのパターンが、隠し味のように使われているウッドブロックやベルをはじめとするパーカッション群やアコースティック・ギターのカッティングなどと融合して、深く豊かな音像へと昇華している「キス・ミー・ベイビー」など、聞きものがずらり。

 翌年の『ペット・サウンズ』への予感と、従来のサニー・カリフォルニア伝説を体現する持ち味とが絶妙のバランスで交錯する1枚だ。

 

 

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