albums (Orange Crate Art)

 

Orange Crate Art
Brian Wilson and Van Dyke Parks
(Warner Bros.) 1995


 

 

 基本的にはヴァン・ダイク・パークスの新作アルバムであり、ブライアンはあくまでもヴォーカリストとして関わっているだけだが。未発表に終わった幻のセカンド・ソロ『スウィート・インサニティ』も含めた過去どのソロ・アルバムよりもしっかりした歌唱と一人多重録音によるコーラス・ワークが楽しめる。

 ドン・ウォズ監督による映画にも、ヴァン・ダイクのピアノをバックにブライアンが訥々と歌うシーンが挿入されており、ファンの心を複雑にかき乱してくれたものだが。そのシーンで歌われていたタイトル・チューンでアルバムは幕を開ける。映画でのピアノ一本の素朴な肌触りと一変して、ブライアン入魂のコーラス・ワークが光る豊かな仕上がりだ。この辺はヴァン・ダイクのリードがモノを言ったのかもしれない。他の曲もすべて、ちょっぴりノスタルジックで、ちょっぴりエキゾチック。名曲と名唱、揃いぶみの名盤だ。シド・ペイジ、ダニー・ハットンほか、参加メンバーの顔ぶれにも胸が高鳴る。

 ある意味では因縁のコンビ。幻の『スマイル』がお蔵入りしてしまったため、結局はフル・アルバム単位でのコラボレーションを何一つ残していなかった彼らが初めて作り上げた感動の1枚だ。『スマイル』からの30年という歳月が胸に痛い。

 この年、ブライアンは、シンガー・ソングライター的なテイストを強くたたえたアルバム『アイ・ジャスト・ワズント・メイド・フォー・ジーズ・タイムズ(駄目な僕)』でドン・ウォズの助けを借りながら自らの曲作りの根底を見つめ直し、本盤『オレンジ・クレイト・アート』でヴァン・ダイク・パークスの指示を受けながら以前とは違う現在の自分の歌声をコントロールする術を会得したのではないかとぼくはにらんでいる。そうした試行錯誤を経て、彼は20年ほど前、『ラヴ・ユー』で提示した新型のブライアン・サウンドを、98年の『イマジネーション』で集大成してみせることになる。

 

 

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