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allein in Deutchland 

97年9月18日 1日目
甘美なる缶詰め、初めての飛行機

はじめての航空券

9月18日、前の晩は荷造りなどで徹夜し、朝6時半ころ自宅を出発。スカイライナーで成田空港に行く。指示された集合時間までには余裕があるため、空港内で時間を潰す。成田空港は以前に一度見学に来たことがあったため、本屋やレストランなどいろいろな設備があるので退屈しない。

いわゆる「格安航空券」は、団体運賃適用の航空券を小分けして販売するため、出発時に仮の団体で集まり、そこで航空券が手渡される…ものと思っていた。旅行パンフレットにもそれらしい集合時間・場所が案内してある。そのカウンターに行くと、「ここではないです。別のカウンターでしょう」と言われた。ここから先がいけない。40分近くも搭乗カウンター周辺をウロついて(空港係員に尋ねることもできず)航空券を入手できるところを探した。「このままでは本当に出発できないのでは」と半分泣きそうになったが、しかるべきカウンターに行って氏名と旅行会社のパンフレットを見せると、無事搭乗の手続きを行ってくれた。よかった・・・が、始めからこんな状態で無事に日本に帰ってこれるのだろうか?

はじめての飛行機

搭乗手続きを済ませると、いても立ってもいられなくなり、そのまま出国手続きを済ませてしまう。出国手続きのゲートを通るとき、何かいけない一線を越えたような後ろめたい気分になる。そのまま指定された搭乗口に行くと、その前が待合室になっており、ゆったりした椅子が並んでいる。そのひとつに腰掛けてようやく一息。窓の外には飛行機が並んでおり、エンジンの騒音が建物の中まで聞こえてくる。否が応でも旅行気分が盛り上がる一時である。

11時15分、今回搭乗する全日空209便フランクフルト行きの搭乗手続き開始。希望した窓際席に座り出発を待つ。全日空の飛行機では離着陸の様子が機内テレビに放映されるので、コクピットにいるのと同じ光景が楽しめる(普段電車の運転席の後ろに陣取るような人なら、この気持ちは絶対分かっていただけるはずである)。この「離着陸生中継サービス」、初めて飛行機に乗る自分にとってはこれだけで3万円の価値があったと思う。

「シベリア航路が混んでいる」とのことで30分ほど離陸が遅れて12時20分離陸開始。先を行くシンガポール航空のジャンボに続いて10分ほど構内を移動した飛行機は、一旦滑走路の所定位置に停止した後、エンジンを最大限に吹かして急発進、そのまま地上を離れる。地上を離れる瞬間機体が揺れて、離陸した後もなかなか安定しない(感じがする。「飛行機が好き」という人にはこのあたりの感覚がたまらないのかもしれないが)ので怖い。飛行機は雲の中を上がってゆく。視界は効かず、わずかに雲の粒子が翼の形に流れるのが見えるだけである。10分ほど経って雲の上、青空のもとに到達。

はじめての長距離フライト

早速時計を現地の時間に合わせる。7時間さかのぼって現在5時40分。東京→ヨーロッパ線ではずっと昼間のフライトであるが、気持ちが高ぶっているせいか違和感を感じない。シベリア上空に差しかかる頃に機内食が供される。一応前菜とアントレ(主菜)とがある本格的なものであるが、座席が狭いため右手に持ったナイフなども前後に動かさなければならない。しかし、器や食器は本格的なものであり、料理も満足、「よくこの料理で難癖を付ける人がいるな」というのが感想である。映画らしきものをやっているが、食べ終わったらすぐ寝てしまった。

起きて機内時計を見るとフランクフルト到着までにはあと4時間・・・「ノンストップ便」の普及によって、半日を飛行機、それもキツキツの椅子の中で過ごさなければならなくなっている。体がだるくなっているので活字を追っても目に入らなくなりそうだ。機内時間の大半はうたた寝状態で音楽を聴いて過ごしたが、人によっては「我慢」を強いられるかもしれない。「どうしても耐えられない」という人はシンガポールあたりで乗り継ぐ南回りの便を使った方がいいかもしれない。

「旅慣れた人は飛行機では廊下側の席を取る」らしいが、確かに「窓の外に広がる視界」は単調であり、さらに廊下に出るのもいちいち隣の人を跨がなければならず、「窓側の席」は進んで申し込むものではない。隣の席の夫婦と話をする。現地での連絡先を教えてもらった。

午後3時、モスクワを過ぎたあたりで「軽いお食事」なるものが提供される。確かカレーのようなものが出された気がするが、おいしくこれを平らげる。窓の外はところどころ表土が露出しているタイガであろう、色が黒緑色である。この飛行機の直下では素朴な生活が続いているのかと思うと少しく不思議で切ない気分になる。しばらくして窓の外を見やると青い海が広がる。ようやくバルト海沿岸に入ったようだ。

フランクフルト到着

午後4時頃、飛行機は高度を下げつつあり、黒緑色の森と手入れの行き届いた茶色の畑が眼下に広がっているのがはっきり分かる。それを高速道路が横切り、森の中には赤茶色の建物が密集している集落が見える。街が近づくと線路や駅が見え、列車が模型のように走っている。建物や工場、森や畑から街の色合いまで日本のそれとは様子が異なる。空から見ても一目瞭然なのである。くすぐったいような気持ちよい感覚を背中に覚える・・・ついにヨーロッパに着いたのだ。

飛行機は一気に高度を落とし、高速道路を跨いだかと思うとすぐ着陸した。続いて着陸する飛行機を横に見ながらしばらく構内を走って16時40分、搭乗口に横付けする。

フランクフルト・マイン国際空港第2ターミナル・・・到着便が重なる時間帯ではないため、構内は清潔で閑散としている。免税店も閉まっている。入国審査・税関検査を済ませて待合広場に出ると、やはり閑散としている。航空会社のカウンターも人がおらず、店もマクドナルドしか開いていない。トイレ(日本とは便器の形が異なり、使用不可のそれには無造作に大きな油紙が突っ込んである)を済ませ、鉄道乗り場のある第1ターミナルに向かう。こちらは多少薄暗くて暖かみのある雰囲気であったが、やはり閑散としていた。都心から近いといっても、飛行場は日常的な空間ではない。

市中心部への電車乗り場に向かう。DB(ドイツ鉄道)の駅には改札口がなく、時刻表・路線図・運賃案内と自動券売機しかない。使い方が分からず手こずったが、自動販売機で市内への切符を買う。Frankfurt (フランクフルト)中央駅まで5.6DM(約400円)(以下DMと表記。97年秋当時1DM=100pf(ペニヒ)=70円。日本円で約7万円)。

フランクフルト中央駅行きの電車が到着。ドイツ大都市部でのSバーン(これの邦訳はいろいろあるが「国電」が一番よいだろう)に投入されている420型電車である。車内は全席クロスシートであるが、驚いたことにこの電車には車両間を行き来する「貫通路」がなく、車両間の行き来ができない。日本の防火車両規準では隣接車両に移動できるように貫通路を設けることは絶対条件である。電車は林の中を音を立てず、しかしかなりのスピードで走る。並行する線路が増えてきたと思うとマイン川の橋を渡り大きなヤードの中を10分ほどでフランクフルトに到着。午後5時15分、少し日が傾いてきたようだ。

入国初日の宿泊先は日本で予約してきた。「ibis」と言うチェーンホテルであるが、旅行会社のパンフレットの通りに歩いても見つからない。途中でワインの小瓶を抱えたアル中等ともすれ違いながら1時間くらい同じところを歩く。石造りの建物の基礎からアルコール混じりの体臭らしき匂いがする。

靴の底が壊れてきたので、仕方なく駅前に止まっているタクシーでホテルまで向かう。タクシーは「クリーム色のベンツ」と覚えておけば間違いない。ほんの200mほど、しかし自分の探していたところとは別のところにibis hotelはあった。タクシーで5.2DM。

午後6時半にチェックインを済ませたが、今日は夕食を食べに出かける気力が湧かず、隣のビルの雑貨屋でが500ccパックに入った飲み物とコーラライトを(いずれも2DM)を買う。またホテル内のバーでフランスパンにハムを挟んだ粗末なサンド(5DM)を買い、機内食の残りのパンと一緒に部屋で質素に食べる。しかし「牛乳パックに入った飲み物」は液体ヨーグルトであり、この酸味がきつくて口に合わない。半分くらい飲んだところで捨ててしまった。

まだ夜は更けていないが、克明に日記を付けて今夜は就寝。

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更新日 2005.1.26
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