教育に必要な3次元CADソフトの条件は何でしょうか?
笠原 産業界では、エンジニアが使う高機能・高性能な数多くの3次元CADソフトが使われています。もちろん、そうしたソフトを教育用に使うこともできますが、残念ながら直感的な操作性とコスト面で難点があります。直感的に理解できないソフトだと、ソフトの操作に慣れるのに時間が取られてしまいます。一方、教育用に特化したソフトでは機能が不十分のため、3次元造形に制約が出てしまい、3次元の概念や3次元造形力を磨くのに支障が出てしまいます。
またライセンスコストが高いと、せっかく授業で慣れても、学生は自宅で気軽にソフトを使うことができないため、日常的に3次元CADソフトに触れることができません。ツールは常日頃使っていないと使いこなすのに時間がかかりますから、教育用のCADソフトは学生の自宅でも使えるような低コストである必要があるのです。そこで直感的操作性と低コスト、そして十分な機能を備えたAMAPIを採用したわけです。
まだ、一般に知られているソフトではありませんが、AMAPIの操作性は他のソフトとは次元を超えた使いやすさであり機能も豊富です。教育用に適しているため、もっと使ってもらおうと考え『AMAPI PRO 7.5 プロダクトデザインのための3次元モデリング教本』(BNN新社)を執筆・紹介しています。
どのようにして3次元造形の概念を教えているのでしょうか?
笠原 1年生では、2次元と3次元の世界をコンピュータで体験します。まず2次元グラフィックソフトのIllustratorとPhotoshopを使って2次元平面に慣れ、AMAPIで3次元の世界を感じてもらうことに主眼を置いて3次元空間の基本的な概念を理解してもらいます。3〜4年はツールの使い方より、デザインのコンセプトが主眼となります。
高校までの限られた経験から自分のデザインの進路を決めるのでは、学生の可能性が狭くなります。たとえば、このコースに入学した当初は、ケータイのデザインをやりたいという学生は8割に上りますが、それは単にケータイが自分の身近にあってデザインの対象として思い浮かべやすいということでしょう。この希望が本当に自分の興味や適性にあっているのかは別物です。そこで本コースでは最初から学生を希望の専門の分野に分けることをしません。1年2年ではプロダクト系からメディア系までの幅広いデザインの分野の授業を履修して体験し、興味の幅を広げ適性を見極めさせます。
学生が3次元空間の認識に悩むのは、2次元の画面上で奥行き方向の情報をどう定義するかです。そこにツールの使いやすさの差が出てくるのです。通常の3次元ソフトは、作業平面が限定されているのですが、AMAPIは奥行き方向も含め任意の位置を直感的に定義できます。この点が他の3次元ソフトと決定的に異なる点です。しかも、3次元ソフトを使ったことのない学生でも、3カ月間(延べ20時間)の授業で、AMAPIの操作の習得を通して、容易に3次元モデリングの概念を理解することができます。
Amapi授業課題作品(制作:武市美穂)
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