File No. 026

「はるちゃんの歌 Ⅹ <最終章 その2 完結編>」

※今回登場のビックリッコ・グッズ情報は
最終ページの一番最後にあります。






ヒソヒソヒソ…



くるっ

じゃぁ、兄ちゃんさぁ
ちょっと署まで同行してくれるかな。





……。





ちょっとまって、刑事さん。
私たちにわかるようにちゃんと説明してくれないと…




そうだよ、これじゃなんだかさっぱり…


…おじさんっ!!





……。


おじさんからも何とか言ってよ。
このままだとはるちゃん警察に連れてかれちゃうってば。







これさ、あくまでもまだ任意同行の段階だから…でもまぁ、時間の問題か?
そのうち科捜研から証拠もあがってきそうだし。話しちゃうか。な?




!!




先輩、それはちょっとマズいんじゃぁ…


最低
↓↓


でもまぁ…皆さんも聞きたがってるようだし。

ちょっとぐらい大丈夫じゃねぇんか?なっ!






そんな…私たちは別に…うふふ…



まぁまぁ、遠慮しなさんなって


実はねぇ……この兄ちゃんがさぁ


今あんたたちが飲んでるクリームソーダ、
そのクリームソーダに使ってるアイスクリーム…







普通はバニラだっけか?そんなんで香りを付けるだろ?
でも兄ちゃん、バニラのかわりにアレを使った節があるんだよね~。

…ビックリッコ草の実。




ビクッ



ビックリッコ草の実?

ビックリッコ草はその辺にたくさん生えてるから知ってるし、
実だって見たことあるわ。秋になれば、どんぐりみたいにごろごろ落ちてるし。




確かにあの実ってバニラに似た匂いがする…
オレあれ使って何度か遊んだことあるわ。


でもそんな実をどうして…





それは…



!!

おじさん…何?知ってるの?




なんだよ今日の辰ちゃん、積極的すぎ。







アレを煎じると、ある種の自白剤みたいなもんになるんだよ。





自白剤?





ああ。…以前、ある事情通からこんな情報を入手したことがある。
ビックリッコ草の実をお茶にして飲ませると、
目の前の人間に、なんでも話したくなるらしいと。


その昔、ビックリッコ戦争の頃には、実際に相手国の捕虜やスパイに使用して
機密情報を引き出していたんだそうだ。





ほう~

へぇ~知らなかった。    ビックリッコ草の実にそんな効果が…



ただ、効果を得るためには大量に服用しないといけないし、
効果も人それぞれ違って、全く効果のない人間や、いつもより

ちょっと積極的になる程度で終わってしまうものもいる。

内気な性格のやつは気持ちが大きくなる心地よさから
中には常習者になって人生終わらせたやつもいたそうだ。
やっぱり副作用があるんだな。この手のものには。



!!


(なるほど…そういうことか。)

みんながはるちゃんと話したがったり
(サンタのおじいさんの声が大きくなったり)
(辰二郎さんがばかに積極的になったり
したのも、)





そして…クリームソーダ一日300杯の理由も…)



 
  ……辰二郎さん、すごい! 

博学ねぇ…

おじさん、かっこいい!!


(今の辰二郎おじさんの話で…全部見えた気がする。)







あなた、なかなかお詳しいですな。




あはは、いや、ぼくは、そんな…




(おじさん…嬉しそう。)

(私もちょっと…嬉しいかも)







えーと、えー…あ…





おじさん?




ごほんっ
あー、

…信じるか信じないかはあなた次第。






あ…




ざわざわざわ…

今の言わなきゃだめ?  なんだあれ。くすくす
…今の話、都市伝説ってこと?なーんだ。



あーあ。辰ちゃんが
いつか使おうと思ってたフレーズなんだねきっと。
絶妙のタイミングの悪さ…感服いたします。

思いがけなく自分についた高評価を自ら引き下げる。
それが村野辰二郎という男だよ、うん。
(しみじみ)



あの…



ん?




おチビ刑事は
なぜはるちゃんがやってることが
わかったんですか?



はぁ?

おチビじゃなくてチビスケ!チビスケ太郎!!
何度言ったらわかるかなぁ~もう。




…ヒソヒソ……感じ悪~い。……ヒソヒソ …子供相手に…

ヒソヒソ……おチビもチビスケも変わんないじゃない…ヒソヒソ


ボソッ
ブルマンなんか飲んでんじゃねーよ。
 
このカツラ野郎が。
 




くるっ


今言った奴、出て来い!!
ぶっころしてやる!!!





…この人でーす。

 ここにいまーす。
       逮捕して…
!!
 
えっ?なんだよ、さっきはみんな黙ってたのに
なんでオレの時だけ…
この人この人…… 
  …このヒゲの人がそうでーす

↑↑
普段からの人気の無さが露呈




コノヒト コノヒト…

うわ、なんだ!!お前までわしを…っ!!




お前か!!



そのヒゲづら見たらなおさら腹が立ってきたぜ…



…えっ?えっ?ちょっと待って…話せばわかる…


お前だけは絶対にゆるさねぇ。




先輩!いい加減にしてください!!

あなた、もうすぐ定年退職でしょ!!どうなるかわかってるんですか!!
今騒ぎを起して懲戒免職にでもなれば、退職金だって入らないんですよ!






うぐぐぐぐ。

病気のお母さんのためにも、もうちょっと冷静になってくださいよ!!




病気のお母さん…

キュン

(そうか…)




おふくろのため か…


(この人もいろいろ大変なんだ。)






……。





…すまなかったね、お嬢さん。
おじさんも最近ちょっと疲れがたまっててな。
そんなこと言い訳にならないけどさ。





いえいえ、全然、気にしないでください。
話戻しますけど、刑事さんはどうしてはるちゃんが…






ああ。この前この店に来た時、
ちょっとピーンときたことがあってね。


…あ、アレだよアレ。




ずっずっずー


あの男がさ、騒いでたんだよ。
涙流しながら、クリームソーダ飲ませろ~って。
あれって典型的な“禁断症状”ってやつなんだよね。


今だってあんなに夢中に飲んでるだろ…アレがその証拠さ。




ビックリッコ草は観賞用としては認められてるし、
実の方もそのままなら、芳香剤の代わりとして使ったりもできる。

そのまま食べても、毒性は無いわけだから、どうにかなることもない。

ただ、あれを煎じて飲ませたり食べ物に混入したりとなるとさぁ…話が別なんだよね。

一度警察に来てもらって、場合によっては逮捕…
最低2~3年の懲役はくらうことになっちゃうんだよねどうしても。



ち、ちょうえき…

!!



あの…け、刑事さん…



…あっしがっ!




くるっ

ん?





私がやりました。ごほんっ…全部私が…





!!





!!




!!!





だから私を警察に…



ざわざわざわざわ…
どうなってんの?…わけわかんない…





おじさん…





うそだろ、おい。



何、お父さんが主犯格?まじで?

あらま~。





おやじ…





いいからお前は黙ってろ。



調べたところによると

お父さん、平ちゃん製麺の社長だろ?
こんなことしたら会社経営にだってひびくんじゃないか?
せっかく手に入れた社長の座だってもうダメだろ…




!!!




それは…しかたのないことですよ。
悪いことしたんだから…




おやじ……




いいからお前は黙ってろって言ってんだろっ!!





悪かったな、はるお。今までいろいろ。
社長だってことも黙って……最低な親だなオレは。




…フッ

知ってたよ、社長だって。
だいたい隠せると思う方がおかしいよ。

…そうめん仮面さん。





お前もあのCMで知ったのか……

あはは、まいったなぁこりゃ。必死に隠してきたのに
なんであんなCM作っちまったんだろうな。
きっと魔がさしたんだな。




おじさん、おじさんはどうして…

社長の件をはるちゃんに黙ってたんですか?



それは…はるおに…オレのあとを継いでもらうため…。


平ちゃん製麺を継いでもらいたくてさ。





!!!




何、そうなの?でもそれならどうして…
社長だって言ったほうが良かったんじゃ…




はるちゃんにはさぁ、まずは好きなことやって欲しかったんだよ。
自分の力で、好きなこと、やりたいことを見つけてほしかった。

例の一件以来、常に他人の言葉に影響されて行動しているよう奴だったからさ。
趣味でも何でもさ、自分で切り開くことを覚えて欲しかったんだ。

でも、“親父が社長”だとか、“後継ぎ”とかさ、そんな既成の枠に入れちまったら、
選択肢も狭まるし、場合によっちゃぁ、何も考えない奴になっちまう。
それを恐れたんだなおじさんは。




おじさん…。




で、はるちゃんがちゃんと好きなことを見つけて、その道を極めて、
一人前の男になった時、正式に会社に迎えていろいろ勉強させたのちに、
平ちゃん製麺の社長の椅子を渡そうと思ったんだ。
このことは副社長や常務にもすでに話してある。



あ、そりゃもちろん、はるおが嫌なら無理強いはしないつもりだけどね。




でもさぁ、はるちゃんが自分から「店やりたい!」って言い出した時には
そりゃぁもう嬉しくてな。

こいつもやっと好きなことが見つかったんだって。
でも、オレがあんまり嬉しそうな顔すると、
はるちゃんのオレに対する“憎悪”ってやつが、せっかくの、はるちゃんの自発的行動を
邪魔したり、あきらめさせたりするんじゃねぇかって。

だから表向きは猛反対したってわけさ。




……。




くーっ、なんて親心だ。

泣かせるね、おじさん。





そこまで思ってるのに、なぜ…

アイスクリームにそんなものを入れたりするんですか?





えーと…それは…なんていうかさ…

あれだ……ほら…なんだっけ…
(しどろもどろ)


まあこのぉ…まぁこのぉ……

まあこのぉ…まぁこのぉ……


まあこのぉ…まぁこのぉ……


くすくすくす…

くすくす…くすくす…


まあこのぉ…まぁこのぉ……



なになに、こんな時に、

田中角栄のものまねとはいい度胸だね、おっさん。




おやじっ!!もういいよ!!!






刑事さん、オレがやりました。





はるちゃん…





はるお、お前何バカなことを…




いいんだ、おやじ。これで。

刑事さん、早く警察に連れて行ってください!!



え~何なに。どっちなの。

キョロキョロ




だからオレがやったんです…さっさと警察に…


…はるちゃんっ!!





!!




もし本当にやったのなら、ちゃんと説明してよ!!
何のためにビックリッコ草の実をアイスクリームに入れたのか!!

ちゃんとみんなにわかるようにっ!!!







ここにいるみんなに、それを聞く権利があると思う!!





…うっ




お、おまえ、大丈夫か…



お兄ちゃん…あたしもう…何が何だか…

うっ…うっ…



(ただ、このまま警察に行かせてしまったら…)

(はるちゃんには…もう二度と…会えない気がして…)

(そう思ったら急に…悲しくなってきて……)

うっ…うっ…




……。


うっ…うっ…うっ…うっ…

うっ…うっ…うっ…うっ…



ふぅ~。

わかったよ…言うよ…



おれはただ…

自分の理想の店をやりたかっただけなんだ。





つづきはこちら。






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