あー、なにから話せばいいんだろうなぁ…

えいじさんはもうおじさんの心読んじゃってるから
すべてお見通しなんだろうと思うけどさぁ…


いつもウチらのことを気にしてくれているお嬢ちゃんには
ちゃんと話さなくちゃなぁ…

えっ…

(うそ、私が気にしてること、バレてたの?)
(こっそり調べてたつもりだったのに…)


お兄ちゃんの嘘も信じちゃうようなおじいちゃんに…

 はぁ…自信無くす…。









じつはさぁ…なーんか恥ずかしい話なんだけんども…


はるおがやっとオムツが取れたくれぇの頃に
女房のヤツ、男作って逃げやがってさぁ…



それからはおじさんが

男手ひとつでアイツを…はるおを育てたんだ。



母親がいなくなった後も、あいつはいつも明るくてなぁ。
ちっちゃな体で俺の後ろをいつも
「父ちゃん 父ちゃん」って追いかけてきてさ。

そりゃもう可愛くて可愛くて。

“…目の中に入れても痛くない”ってーのは本当なんだなって。

こいつのためなら死ねる、と本気で思ってた。




それが…ある日…


ありゃぁ、はるおが幼稚園にあがるころかなぁ……












…父ちゃん。




ん?

おう、どうしたはるちゃん。



あのさぁ…

父ちゃんとさぁ、仮面ライダーってさぁ、
どっちつおいの?




そりゃぁ、仮面ライダーだろうな。あっちは改造人間だろ?
父ちゃん、普通の人間だし。




えー、父ちゃん仮面ライダーより弱いの?






…ははは、そりゃそうだろ…




なーんだ。

かっこわりぃのっ!





…えっ?


(格好…悪い?)



僕絶対、仮面ライダーみたいに強くなるんだっ!

仮面ライダーってさぁ、すごいカッコいいんだよ!
こうやって…キーック!って!





ちぇっ!

仮面ライダーが父ちゃんなら良かったなっ!




!!



仮面ライダーが
父ちゃんなら良かったな




……。









あの言葉を聞いた時、
なーんか頭をトンカチでぶん殴られたみてぇでさ。

それから何かちょっと……おかしくなっちまったんだな。






おかしく…なった




…ああ。おかしくなったっつーか、

壊れちまったっつーかさ。



あの時まだ、

女房が出て行ったことから.立ち直れてなくてな。
すべてそのせいにするつもりはないんだけんども…



まぁ、慣れネェ子育ての疲れもあったし、精神的にまいってたんだな…。



とにかく、はるちゃんのあの言葉を聞いた瞬間
俺の心の奥にある“何か”が壊れちまった。

はるちゃんの幸せだけを願ってたはずの俺の
心の中に、親らしからぬ感情があふれ出てきたんだ


はるちゃんが大好きな仮面ライダーへの……いや、
これからはるちゃんが出会い、目を輝かせ、慕っていくであろうすべてものに対する
とてつもない嫉妬心が、俺の心を埋め尽くしやがった。


はるちゃんには俺だけを見てて欲しい…
俺だけに憧れ、俺だけを尊敬し続けて欲しい…

終いにはさぁ、

学校にも行かなくてもいい…仕事も結婚も何もしなくていいから、
俺のそばで一生生きて欲しい、俺の隣で一生笑ってて欲しい…

そんな異常な感情まで湧き出てきやがったんだ。




それでまず手始めに、はるちゃんからテレビを奪って、
自分の歌やギャグだけを娯楽として許した……




そ、そんな…そんなの身勝手すぎる…




ははは、そうだな、お嬢ちゃん。おじさん身勝手だよな!

でもまぁそれも、はるちゃんが小学校に入学してからは
だんだん通用しなくなっちまってさ。





学校には行かせる気になったんですね。


そりゃぁ、お嬢ちゃんさぁ、
さすがにおじさんも多少の常識あるからさぁ、


学校に行かせねぇわけにはいけないだろ?なぁ。



まぁ、そうですね。




入学したての頃は良かったんだよ。

小学校の低学年くらいまでは俺の歌とかギャグに
目を輝かせてきゃっきゃっ喜んでたんだけどさぁ…
さすがに高学年ともなると、そうもいかなくてな。



あいつ、クラスの友達からいろいろな情報仕入れてきやがってさ。
やれテレビ買え、やれひょうきん族みせろとか、





松田聖子のレコード買え、11pm見せろ、
テレビ観れなかったら明日学校の屋上から飛び降りる、とか、
もう、うるせーうるせー…





ちょっと、おじさんっ!!



ん、ん?

なぁに?嬢ちゃん、大きい声出して。




うるせーうるせーって、当たり前でしょ?そんなの!

私だって、誰だってそうなると思いますっ!!




お前、そんな…あんまり興奮すんなよ。




だって、お兄ちゃん…



お嬢ちゃん、まぁまぁおこりなさんな。
おじさんが悪いのはガッテンショウチノスケだから!



…はぁ!? 
(この話の流れの中で…)

ガッテンショウチノスケだぁ……ッ!?
↑↑
この手のギャグに過剰に厳しい


ガッテンガッテンゆるしてガッテン!

はっ!ショウチノスケエェ~
↑↑
(歌舞伎のような動作付きでオドケ中)




ん?ん?あれ?




ぶすーっ


お嬢ちゃん何、まぁだおじさんのこと怒ってるん?

あっ!



よう、よう、お嬢ちゃんよう…





…ごほんっ

あー、こりゃまたどうもすんずぅれい…



(…ひっ!またアレっ!?)


もういいですいいです……、

ごめんなさい、続けてください。

                                       
(…はるちゃんのお父さん)





(想像以上に…手強い)




つづきはこちら。






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