で、結局おじさんは、


はるちゃんがどんなに頼んでも…
それでもテレビはみせなかった…

今までどおり、俺だけを見ろ、と。
この俺を尊敬し、この俺に憧れろ、と…。




そうそう、その通り。

さすがえいじさん、何でもお見通しだな。




…病んでる。信じられない。



まぁそんな感じで、はるおの訴えを
結構な間 無視し続けてたらさぁ…

そしたらあいつ、だんだん口数が少なくなってきて…




で、ある日…学校から帰ってきて、
俺の顔を見るなりこう言いやがった……










かなしけりゃ…♪ ん?



おう、はるちゃん。おかえり。
今日学校どうだった?ん?



















し……らせ……やじ……






えっ?何?聞こえねぇーよ、はるお……男ならもっとはっきり……






フッ…




キッ!!

死にさらせ……このクソおやじ。






ゾクッ…

は、はるお…お前…





ふんっ。



くるっ



……はるお、待てよ、おいっ!







今まで聞いたこともない、地の底から唸るような声でさぁ。
さすがの俺もそれには背筋がゾクッとしてさぁ……



で、俺はこいつに 何てことしてしまったんだ って…

ただ側にいて欲しい気持ちでやっていたのに、
それがかえって逆効果だってことに その時やっと気が付いたんだ。





それからは?どうしたんですか??



それからは、テレビも解禁して、何もかも自由にさせてやったんだよ。
殆どのことに口出ししなかったな。高校も大学も好きなところに行けー!だったしさ。


もう完全な野放し。金は出してやるから勝手にやってくれ、ってね。



ん~…それはそれで

結構問題がありそうな気がするなぁ、ぼくは。




まぁ、今までの後ろめたさもあったからなんだけんども……

ただ、あいつが今の店を出すってぇのだけは反対したな。





えっ?それはどうして…


…どうしてってあれ?えいじさんは

全部お見通しなんだろ?…


ドキッ!

あ、いや、その…それはそうなんですけど…
そ、そういう細かい心情とかはボヤーッとしか…あははは。





へぇ…そういうもんなんだ。


えぇ…まぁ…



(ふぅ…あぶねー。生きた心地しねー。)

(やっぱり嘘はいかんな、嘘は。…反省。



だってさぁ、あいつ、何だかわからねぇーけどさ、
人の言うこと何でも鵜呑みにするんだよ。


人に言われると何でも受け入れて、あれもこれもって。ポリシーもへったくれもないつーかさ。
そんなんじゃワケわかんねぇ店になるのがわかるからさ。お前には向いてない、って…

でもあいつ……



キッ!

引っ込んでろ、このハゲ。



……何言ってもそんな調子だし。


だから仕方なく店の資金出してやってさ、 もう好きなようにやれって…。


何なんだろうな…何であんなヤツになっちまったんだろうなぁ……
自由にさせてやってのに……


はぁっ!?


何であんなヤツになっちまんだろうなぁ、って、
何他人事みたいに言ってんのっ!?

…全部おじさんのせいなんだってば!!



えっ?


いくら途中から自由にしたからって…

一度傷ついてしまったはるちゃんの心が
そう簡単に元に戻るはずないじゃないっ!!




お嬢ちゃん……。




……。


あのねおじさん…純粋だった小さな頃のはるちゃんは、
おじさんの歌やギャグが、心の底から大好きだったのね…

…でもそれだけしか娯楽を知らないと…クラスで浮いちゃうの…わかる?
しかもおじさんのオリジナルだと思ってたギャグもパクリだと聞かされて、
馬鹿にされて…信じてきたものすべてを否定された感じになって…
もう何も信じられなくなっちゃって…本当に大好きだったおじさんのことまで…憎…

(だめ、涙が…)


うっ…




……。
(…泣くな。しっかりしろ。大事なところだぞ。)




……。


…で、気が付いたら自分でも何がおもしろいのか…何が好きなのか
ぜんぜんわかんなくなっちゃってて…それで…
ヒクッ

ヒクッ…友達に話を合わせたり…好きでもないのに好きなフリをしたり……
でもそんなことをやってたら…自分がますますわからなくなって…


自分がわからないから…自分に自信が無いから…
大人になっても他人の言葉をそのまま鵜呑みにするしかなくて…

だから…悪いやつにからかわれたりだまされたり…
ヒクッヒクッ




お嬢ちゃん…なぜそんなにはるおのことがわかるんだい?



あの…それについてはですね…

…かくかくしかじか

↑↑
ひよこちゃんの力を借りてはるちゃんの心の中を覗いた云々…を説明中




妹は…はるちゃんの心の憎しみの部分に触れて
相当ショックを受けたみたいです。
おじさんにきつい言葉を言うのも、実はその影響で…
だから…いっぱい失礼な態度とって本当にすみません。許してやってください。



いや…まぁ…許すも許さねぇもねぇけどさぁ…

そうか、お嬢ちゃんもはるおの心をのぞいたのか……
きょうだい揃ってお見通しか…こりゃまいったなぁ。ははっ。



…あ、いや…

あの…実は…僕は心の中なんて読めないんです。
妹に話を聞いて、それをただ見てきたみたいに話しただけっつーか…
…嘘ついてごめんなさい。




えいじさん…




ヒクッ…えいじじゃないし ヒクッヒクッ…



何?そうなのお嬢ちゃん。

はぁ…こりゃたまげた。信じたおじさんバカだった。



うぉごほんっ!えー…

さきほどの妹の話にちょっと補足しますと…
↑↑
自分がこれ以上責められないように話を逸らした


たとえば、幼い頃に両親の聴いていたビートルズを聴いて育った子供が、
大きくなって、テレビやラジオから流れてくる大量の音楽の中から、
無意識に、ビートルズの要素が根底に流れているような曲ばかりに惹かれ、

ビートルズと同じテイストのイギリス系バンドを中心に聴くようになり、
その流れからモッズファッションに興味を持ち、ロンドンに渡りデザイナーの道へ進んでいく。

つまり…子供時代に、音楽や映画、漫画、テレビといった文化から吸収したものが、
大人になってからの好みや、発想力や創作力、
さらには、人生の方向性にまで影響してくると思うんです。




ほう…。


はるちゃんも、ほんの数年とはいえ、そんな大切な子供時代に、
将来に影響するであろう文化から遮断されてしまった…

しかも、世の子供たちがテレビっ子と呼ばれていた、まさにそんな時代に、
テレビを禁止されることがどれだけ不幸であるか…




不幸…?あはは、また大げさな…



!!





大げさ!?

何言ってんだよ、おじさん!
どう考えたって不幸じゃないか!!



び、びっくりしたぁ…

…えっ?何?急に…




おにいちゃん…大きい声出さないでぇ~



だ、だってあの黄金の70~80年代に
多感な子供だというラッキーな世代でありながら
おじさん以外の文化に全く触れずに過ごすなんて…

これを不幸と言わずなんと言うんですかっ!!


ドリフも知らず、欽ちゃんも知らず、
たけしも、安岡力也のホタテマンも知らず、

「笑ってる場合ですよ!」から「笑っていいとも」に変わった直後の
ある種の不安感をもリアルタイムに体験することもなく、

ヘタがウリの欽ちゃんバンドのクドい繰り返しにイラッとすることもなく、

「サンバルカン」の奇妙さや
「夕焼けロンちゃん」のロングおじさんの目の鋭さに気づくこともなく、

音楽っつったらおじさんのドヘタな「失恋レストラン」オンリーで、



ドヘタは言いすぎだぁ!聴いたこともないくせに。

がははは…



笑い事じゃないよ、おじさん!!

あんたは自分が思っている以上に重い罪を犯しているんだっ!!



重い罪…


はるちゃんがあんたの身勝手のせいで世の中の文化から遮断されてた時期…
70~80年代初めには、あんなに優れた楽曲にあふれてたのに…

世良公則、原田真二、Charのロック御三家、サザンオールスターズ、ゴダイゴ、
プラスチックス、イエローマジックオーケストラ…そしてあの、佐野元春の登場ですよ…


僕だってあの時代をリアルタイムで体験したかった!

若き佐野元春のシャウトに胸躍らせたりしたかった!

さらに言えば、

佐野元春を通じてブルース・スプリングスティーンやバディ・ホリーを知る…
そんな発展的な出会いもしてみたかった!
タイムマシンがあれば今すぐにも飛んでいきたくらいだ!!


ちょっと、あんまり興奮しないで…

あんちゃんは、佐野元春とやらが随分と好きなんだねぇ…



ああ、そうだよ。最高だよ元春はぁっ!!

言っとくけど、こうみえて僕は「SOMEDAY」完璧に歌えるからねっ!!

♪まちのうたがきこえてきてぇ~♪




おにいちゃん…話がだいぶ逸れてる…


はるちゃんだって、観ようと思えば、
「ファイティング80’s」の佐野元春だってちゃんとリアルタイムで観られたはずなんだ!

ライブに行って、「ロックンロールナイト」の感動や、「ハッピーマンメドレー」の熱狂、
「そして最後に!そして最後に!!そして最後に!!!…スーパーダイナマイトサキソフォン、ダディ柴田!」だって
生で体感できたかもしれないし、

「VISITORS」での衝撃的ともいえる路線変更に、
「元春、ニューヨークで一体何があったんだよ!俺も変わりたい!!」って
それをきっかけにNYに渡ったかもしれないんだっ!!



それなのに…おじさんは…はるちゃんからそのチャンスを…
ったく、なんてことを…


おじさんのギャグだけで…
おじさんのドヘタな「失恋レストラン」だけで、
何が得られるんだ、一体何に発展していけるんだよっ!!

あんたのせいで、あんたのせいではるちゃんは…
せっかくの“心の成長”のチャンスを逃してしまったんだ!!




……。




はぁはぁはぁ……


はっ!





↑↑
ちょっと悲しそう


(し、しまった!!)


すみません、取り乱しました。

僕は…いわゆる80年代オタクの佐野元春フリークなので
その辺の話になるとどうしても夢中になっちゃって…



ん……まぁ…ちょっとびっくりしたけれども…

なっ!あははは。



なんか言い過ぎてすみません。

ただ、せっかくあの時代の真っ只中にいながら…
何かを感じるチャンスすらなかったはるちゃんを思うと
…あまりにももったいなくて。
…本当に失礼しました!!




いや~…




ヒクッ…ヒクッ…



……。




えいじさん…じゃなかった、
あんちゃんさぁ…



はい?




さっきの話の…ひよこさんやらに
会わせてくれるかな。



あ、…はい。

わかりました…




…そうめん仮面さん。




えっ?

ヒクッ…ヒクッ…



ピタッ




あんちゃん…お前…










そうめん…

…仮面?




はるちゃんのお父さんとの直接対決によって、
謎の"核心部分”にかなり近づいた幼い兄妹。
しかしあの親子には、
ま~だなんか秘密がありそうです(笑)、

今回新たに登場した謎の言葉「そうめん仮面」の意味するものとは!?
ひよこちゃんたちとの対面を希望する、はるちゃんのお父さんの"真意”とは!?

次回「はるちゃんの歌・完結編(たぶん)」…すべての謎がいよいよ明らかに!!


モンキーミュージック来店日…何かが起こる!?





今回登場したビックリッコ“グッズ”情報

ザ・玩具/女の子 ファミリーセット
※首・腕・足が動きます。
購入場所:ダイソー
   ●なつかしの20世紀 タイムスリップグリコ
 
ダイハツミゼット
   ●Bushy Chick ふさふさピヨちゃん
購入場所:ダイソー
 
   ●バンダイ ぼくらの大運動会 騎馬戦編
購入場所 セリア

※数年前、単発入荷してたものを購入.

   ●おもち星人アージン
アージンは私caicoの赤ちゃん時代の写真を加工して作りました。
…ほっぺがあまりにもおもちみたいだったので(笑)

ちなみにアージンのジンは“人”です(ケムール人とかと同じ)



AND



カンフー人形・1体150円で購入






「はるちゃんの歌 Ⅵ」 






次回へ続く





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