様々な青色の海に抱かれた島々

 2000年に生まれて初めてパラオに出会った。
愛読書である雑誌「海と島の旅」で目にしていたパラオという島に、
半分シュノーケリング目的・半分アマチュア無線目的で旅行することになったのだ。
その時は11月だったせいか雨模様で、シュノーケリングにも参加はできたが、
無線に従事する時間のほうが多かった。
それはそれなりに楽しかったのだが、もう少し海と遊びたかった思いが残った。
そして2004年、チャーター便が出るというので再びパラオへ出かけるチャンスを得たのだった。


 Feb.10 2004

 午前中は仕事。休暇を取るのも楽ではない。
喉が真っ赤に腫れて、インフルエンザかと疑われるような状況だったのだが、何とか根性で出発。
解熱剤持参での旅行となった。
チャーター便のせいなのか運のなさのせいなのか、
搭乗口にたどり着けば正反対のウィングに変更になったとの張り紙。
搭乗時間が遅れに送れてやっと搭乗したかと思えば、
無線機の不都合とやらで1時間以上シートに張り付けの状態。
予定通りに飛行しても午前2時着の予定だったが、
出発が2時間遅れたのでパラオに到着したのは明け方となってしまった。


 Feb.11 2004

 ウェルカムシャンパンを意地と根性で飲み干し、
小鳥のさえずりを聞きながら25時間ぶりに眠りについてから6時間。
空腹のあまり目がさめるという、ちょっと悲しい起き方をした。
天気は薄曇りの晴れ。
 海で遊ぶ前に、無線機のセット。相方が楽しみながら無線機をつないでいる間に、持参した荷物を整理する。
パラオ・パシフィック・リゾート(PPR)は長期滞在する欧米人が多いせいか、
収納スペースが確保されていて過ごしやすい。
3時頃には運用可能になった。
早速運用開始。
でも、5時30分からPPR主催のカクテルパーティーがあり、Free Drinkでお酒がいただける。
無線よりはこちらが優先。
Beach Barへ・・・
ちょうどSun Setの時間で、白ワインを片手に夕日を眺めるという何とも贅沢な時間を経験することができた。
隣にいた日本の青年が仲間に語りかけた一言が印象に残った。
「俺、生まれて初めて海に沈む夕日を見たかもしれない」
 2月の寒くて乾燥した日本から、熱気と湿度が高いパラオ。
たった一日しかたっていないというのに、喉の痛みは消え肩の凝りが楽になる。
日本との時差がないので、とても楽に過ごせる。
やっとやっと、開放感に満たされていく。
「遊ぶぞ〜」という思いが満ち満ちてくる。「うわ〜い、南の島に着いたのだ」


Feb.12 2004

 PPRのプライベートビーチでシュノーケリング。
3年前は干潮だったのか、水深が浅く珊瑚が間近にあって泳ぎにくかったのだが、
今回は適当に深さも有り楽しんで泳ぐことができた。
小ぶりだけれど、ナポレオンフィッシュにも出会うことができた。
PPRのプライベートビーチは、侮れないシュノーケリングポイントだと思われる。
 普段からの運動不足と、体力の無さが露見するのが泳いでいる時,
フィンの使い方が悪いのか、足の指が攣ってしまう。
左足に暗雲を感じ、浜に戻ったら右足の第1指から土踏まずにかけて攣ったという器用なことをやってのけたりもした。
普段からの生活態度が、こんなところに出てくるのかもしれない。反省!!
 濡れた体に熱い風が吹き渡ると快くて、思わずビーチチェアでうたた寝。光と風と香で、南の島を体感する。
スコーンと抜けたような青空と、流れていく白い雲が眩しい。
真冬の日本から真夏のようなパラオへ。
こんな瞬間が一番幸福に感じる時間かも知れない。


 Feb.13 2004

 夜明け前に目が覚める。時間はAM4:00。
Bedの中で迷う。意を決して起きだして、着替えて海岸へ。
日が沈んだのがあっち方向だから、こちらが南。
見上げるとそこには南十字星。
半月が高い位置にあったので、残念ながら天の川に浮かぶ南十字星にはならなかったけれど、
はっきり美しい十字を見ることができた。

 ロングビーチツァーに参加のため、ホテルをバスで出発した。
出かけるまでは「面倒」とか考えていても、その場に行くと「ノリノリ」になる私。
ロングビーチツァーに参加したのは10名。
スピードボートの手すりにもたれて足を外に投げ出し、風と波を切って疾走する。
全身で風を感じて、ものすごく気持ちがいい。
時々バウンドし、波に乗り上げ空を飛ぶようにジャンプして・・・お天気は極上!!

 パラオの海の色は様々な色合いで、私たちを迎えてくれた。
ミルキーウェイは、まるでにごり湯のように乳青色。
底にミネラルたっぷりの粘土があるせいだとか・・・この粘土を欲しがってツァーに参加した人さえいるほど。
それにしても幻想的な色合いだった。

ジャーマンチャンネルは、まっすぐに伸びる紺色の道。
船が遠回りして進まねばならないのを不便と感じた人たちが、浅瀬の珊瑚礁を削って作ってしまった水路。
両側が明るいコーラルブルーなのに、一直線に続く海の道。
多分、現在だったら「珊瑚を守れー!」って大騒ぎになっただろう。
でも、結局はツァーの船だってここを利用している。

様々な青色の中をボートは疾走して、シュノーケリングポイントへ。
その時ある日本女性が持っていたのが丸麩。「そうか、魚は麩を食べるものなぁ。」と、妙に感動してしまった。
「その手があったか」パンやクッキーだと直ぐに溶けてしまうけれど、
お麩なら大丈夫かも・・・次の旅行の際にはぜひ持参しようと、決意した。

残念ながら、ロングビーチは潮位が高かったため砂州は現れなかったけれど、透明度の高い綺麗な海だった。
ブルートパーズのようなきらきらした光の色だった。

気になったのは、某国のツァー。
どこのシュノーケリングポイントでも、その国の人々のツァーと出くわしたのだけれど、
某国の人たちだと一目でわかるのだ。
奇妙としか言い様の無い雰囲気だった。たとえ泳げても泳げなくとも、全員オレンジ色のライフジャケット着用。20名くらいが一つのグループで、必ず集団で同じ方向へ進んでいく。
まるでメダカの学校か、遠泳競技のよう。
国民性なのか、義務付けられているのか・・・ともかく泳いでいない時は大声で騒いでいるし、
集団で行動しているからやたらと目立つ。
パワーといえばそうかもしれないけれど・・・不思議な光景だった。

南の島の直射日光は強い。
気にして日焼け止めを塗り捲っていたけれど、盲点というものは必ずあるもので・・・耳と耳の裏と、額の生え際が見事に焼けてしまった。
「耳なし芳市」の話は、あながち嘘ではないというような気になった。
帰りのスピードボートもとても気持ちよくて、ストレスぶっ飛び!直接PPRの桟橋に着いて降ろしてもらえたので、バスに乗る必要も無く大満足。
行ってよかったぁ。チャンスがあったら、また行きたい!!!


Feb.14 2004

AM3:45、相方を起こして南十字星ウォッチングへ。
起こしてくれとのリクエストがあったのだ。
海岸へ出てみると、南方向に大きな雲。
「今日はだめかも・・・」と話しながら、他の星座を探してみた。
北方向に北斗七星、月と重なるように蠍座のアンタレス。
そうこうしているうちに南の雲が切れ、南十字星がハッキリ。
前日よりも早めの時間のせいか、まっすぐに十字の姿勢を保って見えた。
こんな時間なのに、既にスタッフが清掃を始めていた。
高級リゾートと呼ばれるホテルの、見えないところでの努力を垣間見てしまったような気がした。
静かに黙々と清掃していたスタッフの背中に、自信と誇りを見たような気がする。

相方は1日中無線の日。
ヘッドフォンに神経を集中していた。
私自身、ある年の某アマチュア無線コンテストで、東海地方第2位を取ったことがある無線家なので、
こういう時は単独行動が一番平和であることを知っている。
彼には無線を与えておいて、私はPPRの海で遊ばせてもらうことにした。
朝食時にこっそりテイクアウトしておいたパンを片手にシュノーケリング。
泳いでいるとやっぱり気持ちがいい。パンを振り撒くと色とりどりの魚たちに囲まれる。
相方は無線局に囲まれ、私は魚たちに囲まれる。お互いに大満足で過ごす1日。
戦果は、夕食時のワインのツマミになっている。
同じ事をしていなくても、話題が共通しているのでお互いの話を楽しめる。
これが私たちのパラオでの楽しみ方なのかもしれない。
いっしょに行動してもしていなくても、夕食時にはワイワイと、食べて飲んでおしゃべりを楽しむ。
明日帰国するなんて、もう少しパラオにいたかったね。


Feb.15 2004

お天気は、雨。空からパラオの島々を見ることができるかと、ちょっと期待していたのだが無理そう。
初めて明るい時間にフライトできると思ったのに・・・
チャーター便で着いた人達のほとんどが、帰路のチャーター便にも乗るわけなので、
パラオの空港は大賑わい。
テロ防止のための荷物チェックも、一つ一つOpenして調べるので長蛇の列。
でも、私たちの荷物はほとんどノーチェックで通ってしまい、人柄が良さそうだったからだろうか。
それとも年齢を見られたからなのか、少々複雑な思いに駆られてしまった。

チャーター機の中では、日焼けした人達の笑顔がいっぱい。
皆それぞれに楽しんできたのだろう。
往路のような緊張した雰囲気は無く、(待たされたものねぇ)寛いだ表情の人たちが多かった。
パラオの時間の流れが、たとえ短期間の旅行でも、私たちを癒してくれたのかもしれない。
直行成田は5時間半。
夕方には真冬の日本に立っていた。
寒かったぁ。
改めて自分が出かける前に、風邪をひいていたのを思い出した。
ちょっと遠くて高価な風邪薬だけれど、南の島は風邪に絶大なる効果をもつ特効薬だと思った。
副作用は、預金残額の減少。
でも、また近いうちに、あの様々な青色の海を見せてくれるパラオに、
たとえグアム経由であったとしても出かけてゆきたい。
風を切って、波を切って失踪するスピードボートに乗りたいと希望している。


パラオパシフィックリゾートホテル 

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