CD 2019 |
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SEREN(star in Welsh;星) CAI THOMAS カイ・トーマス(ボーイ・ソプラノ) ロバート・ルイス(ディレクター)、 ロンドン・モーツァルト・プレーヤーズ、 ペガサス室内合唱団、 ボーン聖トーマス教会聖歌隊、 ボーン・アンサンブル、 アクセル・リクヴィン(バリトン)* 録音年月日と場所 2019年7月1日、10月3日-4日、ボーン聖トーマス教会(ファーナム、イギリス) 2019年9月23日、セント・ジョン・ザ・エヴァンゲリスト教会(アッパー・ノーウッド、ロンドン) 2019年11月28日、ソフィエンベルグ教会(オスロ、ノルウェー) 1.Only in sleep エセンヴァルズ:オンリー・イン・スリープ 2.Suo-Gan ウェールズ民謡:スオ・ガン 3.Silent Noon (Arr. Donald Fraser ) ヴォーン・ウィリアムズ:サイレント・ヌーン 4.Serse~Ombra mai fu ヘンデル:オンブラ・マイ・フ 5.Bring Him Home (from Les Miserables) クロード=ミシェル・シェーンベルク:彼を帰して 6.Ave Verum モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス* 7.Vesperae Solennes de confessore K. 339~V. Laudate Dominum モーツァルト:主を褒め称えよ 8.Rinaldo, HWV 7b~Lascia ch'io pianga ヘンデル:私を泣かせてください 9.Requiem, Op. 48~4. Pie Jesu フォーレ:慈愛深いイエスよ(レクイエムより) 10.Amzaing Day~The Lord is my Shepherd ジョン・ブランニング:主は私の羊飼い 11.The Blue Bird, Op. 119 No. 3 スタンフォード:青い鳥 12.The Ash Grove ウェールズ民謡:とねりこの木立 13.The Ground ヤイロ:ザ・グラウンド BBCラジオ2のYoung Chorister of the Year 2019のファイナリスト、カイ君は12歳で、ウェールズ出身です。ウェールズ! ボーイ・ソプラノの故郷ですね。 現在はイギリスのファーナム在住で、ファーナムのボーン聖トーマス教会で7歳から歌い始め、12歳でデビュー・シングルの「スオ・ガン(Suo-Gan)」をリリースし、Apple Musicのクラシック・チャートで第2位を記録しました。ちなみに、Suo-Ganは、ウェールズの有名な子守歌なそうです。 さてカイ君ですが、いきなり13曲を歌えてしまうのが驚きです。いつものセリフですが、イギリス畏るべし! 歌いだしの1.Only in sleep ですが、歌い方も曲作りも、一瞬リベラかと錯覚しました。違うのはバックに成年か青年も含まれている、音質だということ。落ち着いています。 カイ君の声は、耳に心地良く、ことさら技巧を感じさせない、王道中の王道のボーイ・ソプラノです。ただ上手ってだけじゃなくて、なんというか、人間的というか、血の温かさを感じさせるというか、カイ君という「個」が芯にある、というか。キレイで、技巧があって、声が出て、ただ歌っている、というのとは違います。選曲が1曲4分前後で、1曲1曲をしっかり歌っているので、より個性と実力が表れているのかもしれません。曲ごとに「聴いた」という満足感も残ります。トレブルの録音は2分半とか3分位の曲集も多いですから、それからすると、カイくんは相当の実力者なのでしょう。5.Bring Him Home (from Les Miserables)は初めて聴きましたが、カイ君の声はオペラとかミュージカルにも似合います。切なさが伝わって来ました。驚きなのは、アクセル・リクヴィンが、バリトンで、6.Ave Verum をデュエットしていることです。麗ししくも艶やかなお声なので素晴らしいですが、ボーイ・ソプラノの旬は一瞬であると思い知らされ諸行無常です。 ボーイ・ソプラノというよりは大人の選曲で、難しかったと思いますが、難しさを感じさせない演奏力と、何よりも、喜怒哀楽の「哀」を表現しきったことが素晴らしいと思います。彼、今、正に生命力に溢れ、「哀」にはほど遠い、輝かしい時代の真っただ中ですから。今、10代か20代だったら、後先考えずにB-Sを聴くためにだけ、私はイギリスに移住していますなー。(by Hetsuji 2020.6.9 TUE up) |