A.O.R.とはAdult Oriented Rockのことです。日本語で言うと大人向けのロックということになります。
けっしてAyashii Oyajino Rockのことではありませんので注意してください...。
イーグルスが1976年に『ホテル・カリフォルニア』でロックの一つの時代に自ら終止符を打つことになり、そして60年代からロックを聞き続けてきた人々とっても、メジャーなアーティストの最高傑作が出尽くしてしまった感のあった70年代後半において、ふとまわりを見回すと何か疲れを癒してくれそうなお洒落で洗練された音楽がちらほらと聞こえてくるではないですか。そんなスキをついて、フュージョンの台頭と歩調を合わせながら、新しいジャンルとして定着していったのでした。
もちろんA.O.R.という言葉が最初からあったわけではなく、古くはハード・ロックに対してのソフト・ロック、フュージョン系のアーティストの宣伝によく使われたソフト&メロウ、カントリー・ミュージックに対してのシティ・ミュージック、ヒット・チャートのジャンルとしてアダルト・コンテンポラリーなど様々な言い方があります。ジャンルとしては究めて範囲の定義が曖昧で
感覚的なものといえますが、このページでは私の独断(とはいっても大方から外れてはいないと思いますが)で選択させていただきました。
一方アーティストを軸として眺めてみれば、ウエスト・コースト系、カントリー系、ゴスペル系(歌詞が宗教的ですが以外と良質なA.O.R.が多い)、ジャズ・フュージョン系、ブラック・ミュージック系、ソフト・ロック系、変わったところでプログレからの転身組など様々でしたが、ウエスト・コーストのシンガー・ソング・ライターあるいはコンポーザーのシンガーとしてのデヴューというケースがA.O.R.のメイン・ストリームを形成していたと思います。またある意味では、アーティスト以上にプロデューサーとバック・ミュージシャンが重要な存在であったといえます。輸入レコード店でジャケットの裏のクレジットを真剣にみていたものです。知らないアーティストでもだいたい音が見えてくるからあら不思議。このあたりは、ちょっとプロダクツ的な悲しさもありました。
70年代後半から80年代前半にブームとなり、90年代になって再び静かに灯がともり出しているというか、マイナーながらひとつのジャンルとして消えずに定着したといったほうが正しい見解かもしれませんが、今だにがんばっているアーティストも数多く(数少なく?)います。現在のA.O.R.の状況のほうが、もはや売れ線ではないという観点からして、好きな音にこだわってつくっているわけですから、よりジャンルとしてはピュアでアーティステックなのではないでしょうか。
ロック・ミュージックを愛する一人のリスナーとしてA.O.R.という音楽の痕跡を残したく、稚拙ながらまとめてみました。
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