ATTENTION:ネタバレ内容が含まれていますので、未見の方はご注意ください。
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【チャイニーズ・ゴースト・ストーリー】 | |||
原題「倩女幽魂」 1987年 香港作品 監督:チェン・シュウ・タン 時間:96分 音声:北京語、広東語 字幕:日本語、英語 |
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レビュー | |||
ツァイサンは書生(住み込みで働きながら勉強をしている学生さんのこと)で、 集金に出たのはいいのですが、途中雨に降られてしまい大事な台帳が読めなくなってしまった。 集金は出来ないし泊まるところはないし・・・。 (この情けなさがたまらん・笑) で、仕方なく幽霊が出ると町の人たちから噂されている寺へ泊まることに。 そこで美しいスー・シンに出逢います。 スー・シンは実は幽霊なのですがロウロウの命令で、男たちを誘惑し殺していました。 ロウロウはそのエキスによって生き延びている妖怪なのです。 で、寺にやってきたツァイサンに目をつけ誘惑してくるスー・シン。 ところがツァイサンはスー・シンのことを幽霊だなんてちっとも気づかず、 むしろその純情さからスー・シンに肩透かしをくらわせたりなんかしてそのやりとりがとっても可愛い(笑) スー・シンも、初めはツァイサンを獲物として見ていたけれど 次第にそのピュアな部分に惹かれていく・・・ というまるで少女漫画のような展開。 アクションホラーの要素も含みつつベースは二人のラブストーリーという感じです。 スー・シンはロウロウの命令で魔王の元にお嫁に行かされることになり、 何とかして故郷の土に自分を埋葬してくれとツァイサンに頼みます。 そうすればスー・シンは転生することができ、また人間としてこの世に生を受けられる。 ツァイサンは愛するスー・シンのためにこの願いを叶えてやると約束します。 スー・シンの願いを叶えるということは、二度と彼女に会うことはできなくなるということ。 つまり二人にハッピーエンドが訪れることはないということで、これがまた切ない。 それでもツァイサンはスー・シンのため、イン導師の力を(大いに)借りて、魔王と対決します。 そして二人が純粋に愛し合っているから余計に別れのシーンが切なくて印象的です。 最後に一目だけでも顔を見たいのにもうそんな時間も残されていない。 切なくてほろ苦い初恋の思い出のようなラストです。 ツァイサンを演じるのはレスリー・チャン。 彼は力は全然ないしちょっとトロくて頼りない感じなんですけど、すごく純粋で情の深い人です。 人を色眼鏡で見ない真っ直ぐなところがあります。 だからみんな彼に協力したくなる。みんなから愛されるものを持っているキャラクターです。 そんなツァイサンの純朴さに若いレスリーの健全な魅力がそのままマッチしていて、 彼を見ているとまるで自分が10代の頃に戻ったかのようなトキメキ感を味わえます(笑) っていうか30代にしてレスリーのこの初々しさは一体何なんでしょうか。 何ておぼこいの〜。もうね“ハニカミ”を地で行ってるって。見てる私が照れる(笑) 本題からずれました。戻ります。 ツァイサンは決して弱い男ではないのですよ。 むしろ力だけで強さを測ろうとするバカなやつらよりもずっと強い。 思いの強さが彼の行動の根本で、その結果スー・シンは故郷の土に帰れるわけですから 最初の方で闘っているイン導師とカーホウ(イン導師にやたら食ってかかる武人らしきヒト)に向かって 「争って何になるんだ。愛が一番大切だ」って言うセリフが本当にツァイサンらしくていいなぁと思いますね。 その愛の持つパワーを身をもって示して見せるツァイサンはホントに男らしい優しい人間だと思います。 そんなハニカミボーイ・ツァイサンから愛される美しい幽霊スー・シンにはジョイ・ウォン。 本当に綺麗。謎めいた美女っていう設定がハマっています。 ツァイサンのことを好きになるのもごく自然で、自分のことを疑いもせず一生懸命助けてくれる姿を見たら 幽霊だからこそ余計に心があったかくなっただろうなと思います。 ツァイサンをロウロウに見つからないように、無理やり水の中に隠すシーンはハラハラドキドキ。 「もうダメだーーー」と思った瞬間、彼を水の中に押し込めてキスする。 青味がかった揺らめく映像はとても幻想的であり東洋的な美意識を感じます。 スー・シンのセリフはそんなに多くないのですが、彼女の芯の強さとか優しさとか愛情といった感情が ジョイ・ウォンの表情からとても伝わってきて、何とかして二人をくっつけてあげたくなります。 魔王を倒し、いよいよスー・シンが成仏できるという二人の別れのシーンは必見です。 朝日が差し込み、彼女に当たらないように必死で遮るツァイサンと朝日が昇る前に帰らなくてはいけないスー・シンの やりとりが哀しくて美しいです。 二人を助ける超人イン道士にはウー・マ。 人間を惑わせ殺してしまう幽霊を退治するために寺に居座っています。 そこへ泊まるところがないツァイサンがやってきたので、なんとかして追い返そうとするんだけど ツァイサンはちっとも言うことを聞かないし、しまいには幽霊を成仏させてやるんだとか言い出しちゃって 困りながらも最後にはツァイサンの魅力に陥落(笑) カンフーやら念力やら術やら、とにかく技のオンパレードでツァイサンを助けてくれます。 この人がいなかったらツァイサンはロウロウのエキスになるところだったのよ〜。命の恩人です。 で、私は道士が歌う“道”っていう歌が気に入っています。めっちゃ可愛い(笑) 関係ないことですが、この人ってばうちの会社のMさんにソックリで爆笑してしまった。 百年生きている木の妖怪ロウロウ(ラウ・シューミン)はすごい迫力です。めちゃくちゃ気持ち悪いねん。 舌だけになった姿よりも、スー・シンの部屋にやってきてナンチャラカンチャラ言っている姿が一番怖い(笑) ロウロウを倒したと思ったら今度は魔王が登場します。 この魔王は骸骨が鎧を着ている中国の妖怪にしちゃ何となくアメリカナイズされたヒト・・・いや化け物です。 冒頭に登場する死霊たちも、どことなくアメリカの香り漂う方々でして、 ホラーにはまったく無知な私は全然知らなかったんですけど、どうやらハリウッドの「死霊のはらわた」という作品を パロディっているのだそうです。へぇ〜 いかにも作り物なお化けのお陰で、恐怖感もあまりなく見ることができました。ありがとうございます。 (作り物なホラーはまだ大丈夫で、どっちかというと心理的に迫ってくる日本のホラーの方がダメ・・) (半ば無理やりまとめに入ります) スー・シンは幽霊、ツァイサンは人間。 今生では決して結ばれることはない二人だけに“めでたし めでたし”というわけにはいかないのですが だからこそ色んなテイストが混ざり合いながらも 甘酸っぱい青春の思い出のような後味の作品に仕上がっていて、 それがこの作品の個性なんだと思います。 ホラーが苦手な方でもこの作品は大丈夫でしょう。あまりホラーっぽくないですから。 というかホラーだと思って見るとすかされます。多分。 それからこのDVDについて。音声は2種(中国語、広東語)、字幕はなんと8ヶ国語もついています。スゲー・・・ でもって、広東語もやっぱり本人の声じゃないんですよね。 1と2ではツァイサンもスー・シンも声が全然違います。面白いところだな香港。 ちなみに、この作品のアニメ版でスー・シンの声を担当しているのがアニタ・ユンだそうです。 後にレスリーと何度かコンビを組みヒット作を送り出した女優さん。意外な接点に妙に感動してしまった。 |
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[主な登場人物] マウスオンプリーズ |
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ツァイサン(レスリー・チャン) | スー・シン(ジョイ・ウォン) | ||
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純情一途な貧乏書生。 好きになった相手はなんと幽霊。 彼女を転生させてあげることは、永遠の別れが待っているということ。 それを乗り越えて大人の男になるんだ。 めげるな、ツァイサン! |
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ロウロウの言うなりに若い男を誘惑する日々。 本当は転生したい。 ツァイサンと出逢ってその思いがいよいよ増す。 |
イン道士(ウー・マ) | ロウロウ(ラウ・シューミン) | ||
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ツァイサンの心強い助っ人。 すんごい技でエイヤーッと魔物たちを倒していくスーパー道士。 持ち歌“道”ではお茶目な魅力もアピール。 さあアナタも一緒に♪道 道 道 ! |
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ド迫力のこのオバサン。 若さを保つために若い男のエキスを吸うという えげつない妖怪です。 長い舌でツァイサンを追いかけるのは気持ち悪いの極み。ヤメテー |