≪ メ モ ≫
私が始めてこの場所を訪れたのは霧雨が降り頻る夕方だった。
集落の西の入り口に佇む「かや人形」、そして東の入り口には道路を跨ぐように綱が張られ、
寒気を感じるような異様な雰囲気の佇まいの中、人家の中から誰かに見張られているような感
じがした。
それもそのはず、この地は昔、隠遁生活をしていた落武者たちの生活の場だったのだ。
「カヤ人形」は悪魔の部落への進入を防止するため日夜警戒していると伝えられ、また、天明
の飢饉のとき集落に妖魔を入れないため、人の代わりに立てたのが始まりとも言われている。
村の東口にあるしめ縄は、悪霊などの侵入を防ぐ信仰に培われているそうだ。
ここの水は八甲田山系に源を発するきれいな水で、村の西カドと東カドの2ヶ所にあり「カド
の水」と呼ばれているが、集落の歴史的風情、茅葺き屋根やカヤ人形等昔ながらの趣から「落
人の里の水」として知られるようになった。
村の西の入口の三叉路付近には「西カドの水」が湧いており、2槽の水槽は飲料水と洗い場に分
けられていて、今でも生活に密着した水であることが伺い知れる。
また、村の東の崖下には「東カドの水」が湧いている。崖下への階段と小路を降りて行くと2槽
のコンクリートの水槽があり、清澄な水のある所にしか育たないウワバミソウ(通称:ミズ)が
繁茂している。
集落の人に聞くと二つの水の水脈は異なるらしいが飲んでみると2ヶ所とも同じ味がした。
目印をつけたボトルで汲まないとあとで西か東かわからなくなるほどだ。
ここの水も十和田市の4名水の一つとして行政や保全対策協議会のメンバーによって大切に保護
されている
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