ヨーコブルース、
 イギリスの旅人

イギリス、テレホンカード事情、の巻。

 ヒースロー空港に着くとすぐ、10ポンドのテレホンカードを買い、両親に「着いたよ」コールを入れるのが常である。直行便で行けば、ヒースロー空港に着く時間は、日本ではたいてい夜中の12時を回っているのだが、「着いたよ」「わかった」と短い会話ながら、両親は安心するらしい。そして、その後は、観光している最中に、まだ日本も起きている時間だなー、という時間帯に電話ボックスをみかけたら、「元気だよー」コールを入れるようにしている。
 以前は、コインを使用していたのだが、使えるコインは1ポンドに10ペンス、20ペンスと50ペンス。そうそう小銭が手元にあるわけではないから、話なかばで電話が切れてしまい、また小銭を用意して、かけ直したことがしばしばあった。クレジットカードが使える公衆電話もあったが、普通に小銭でかけるよりも通話料が高くつく。というわけで、あるときから、私はテレカの愛用者となった。
 イギリスの公衆電話も、数年前までは、電話にカードを差し込むと、残りの通話料が表示され、通話ができる状態になるというほぼ日本と同じシステムだった。それから、相手先の電話番号をプッシュして電話をかける。イギリスからなら、国際電話の認識番号である00、そして日本の国番号である81を押してから、市外局番の0を除いてかけたい番号をプッシュする。そのとき、テレカは、日本の公衆電話のように電話の中に吸い込まれることはなく、差し込まれた状態のままになっているのだけは違っていたが、使い勝手はそう変わらず、違和感なく使うことができたのだった。
 が、アメリカの公衆電話は違った。数年前、イトコと一緒にアメリカのシアトルに行ったときのこと。両親に電話を・・と思ったのだが、テレカがどこに売っているのかがわからない。それらしきものが見当たらないのだ。着いたその日は、心配しているだろうなぁ・・と思いながらも、とうとう電話を入れることができなかった。そして翌日、ツインピークスツアーなるものを申し込んだとき、日本人のガイドさんに聞いてみたところ、日本とはまるで違うシステムであることがわかった。
 テレカを購入してから、テレカ上の黒い部分をコインなどで削ると、ある番号が現れる。それが自分のテレカのピンナンバーである。まず、テレカに書いてある電話番号に電話すると、「ピンナンバーを入れてください」という音声が流れるので、自分のテレカのピンナンバーを入力する。と、「残りの通話料は○○です。電話したい番号をプッシュしてください」というアナウンスが流れる。ここで、かけたい電話番号をプッシュし、ようやく相手につながる・・という仕組みだった。ひぇー、めんどくさっ!
 が、とにもかくにも、この馴れない手順を踏んで、「元気だよ」コールを入れた私であった。
 ガイドさんが言うには、「半永久的に使える」とのこと。「また、今度来たときにも使えますから」の言葉を信じ、テレカを使い切らずに帰国した。
 イギリスはこんな公衆電話でなくてよかったなー、と思っていたのだが、なんと、この波が、3年ぐらい前に、イギリスにも上陸してしまっていた。ヒースロー空港に降り立ち、さ、いつものようにとテレカを買ったところ、渡されたのはアメリカ方式のテレカであった。とほほ・・。
 半永久的に有効らしいので、使い切らずに持ち帰り、その翌年も使用した。
 そして今年。今回は、両親と一緒の旅だったので、使う機会がなかったのだが、1回だけ使いたいと思ったことがあった。両親のために申し込んだウインザー城の半日ツアー。ツアー開始時間は13時半。パンフレットを見ると、集合時間は15分前のはずだったが、電話で予約したときに私がメモした紙には、なぜか12時15分集合、と書き留めてあった。書き間違いだよなー、とは思ったが、万が一、集合時間が12時15分で、そのときにいなかったからといってキャンセル扱いになってはたまらない。12時ごろには、集合場所であるマイバスセンターにほど近い、ピカデリーサーカスのヘイマーケットに到着したのだが、ツアーの前に昼食を食べたい。となると、それほど時間に余裕があるわけでもなかった。しかも、食べたいと思うレストランは目と鼻の先にあったので、わざわざにマイバスセンターに行って確認するのがしごく面倒だった。公衆電話をみつけた私は、マイバスセンターに電話をかけ、時間の確認をしようと思い立った。
 電話ボックスに入り、まずはテレカに記載されている電話番号宛てに電話をかけた。が、慌てているので押し間違え、また、かけ直す。今度は「ピンナンバーを」というので、押してみたが、どうも様子が違うのだ。ピンナンバーを押し間違えたかなー、と思って、また最初の電話番号を押す。「ピンナンバーを」というので、プッシュし、アナウンスをよくよく聞いてみると、「このピンナンバーは有効期限が切れています」と言っているようだった。マジぃー? 信じられず、またかけなおしてみたが、結果は同じ。とほほ・・。
 その途端、どっと疲れてしまったが、そうは言ってはいられない。両親を近くで待たせ、マイバスセンターまで一直線、走りに走った私であった。つ、疲れたー。
 記憶違いでなければ、まだかなりの金額が残っていたはずだが、使い切らずして、どうやら有効期限を迎えてしまったらしい。とほほ・・。
 よく確認しなかった私にも非はあるが、3年も経たずに有効期限を迎える、というのはちょっと納得がいかない。同じように、テレカを使い切らずに有効期限を迎えてしまった旅行者は少なくないのではないだろうか。業者、ぼろ儲けの構図だと思った。
 余談だが、気づけば、私の手元には、かなりの枚数の未使用の日本のテレホンカードがある。一時は、自分だけのオリジナルテレカを作るのがちょっと流行ったこともあったし、ストーンズのテレカやらも使わずに仕舞い込んである。携帯電話に押され、公衆電話が姿を消しつつあるこのごろ、テレカの偽造防止の意味も兼ねて、日本でも、アメリカ方式が採用される日が近いかもしれない。油断していたら、手元のテレカが無価値になっていた、なーんてことがないように、気をつけなくっちゃ・・・と、ふと思ったのであった。


左上:アメリカのシアトルでゲットしたテレホンカード。パンダの柄が印象的。
左下:ロンドンのヒースロー空港で買ったテレホンカードの裏。真ん中部分をコインなどで削ると、自分のピンナンバーが表示される仕組み。
右:イギリスの以前のテレホンカード。よくよく見ると、これにも、有効期限の表示があった。

(2004.12.4)
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