ハム と 映画 Part 1
【映画編】

目 次
■空と海の間に 1955年・フランス
■十一人の越冬隊 1958年・日本
■世界大戦争 1961年・日本
■海の若大将 1965年・日本
■復活の日 1980年・日本
■メインテーマ 1984年・日本
■植村直己物語 1986年・日本
■私をスキーに連れてって 1987年・日本
■コンタクト 1997年・米国
■オーロラの彼方へ 2000年・米国
■リメンバー・ミー 2000年・韓国
■時の香り 〜リメンバー・ミー 2001年・日本
■スカイ・オブ・ラブ 2003年・香港=中国
■崖の上のポニョ 2008年・日本(アニメ映画)
 
ハムと映画 パート2 【TVドラマ・アニメ編】
海底人8823、ハローCQ、仮面ライダー、帰ってきたウルトラマン
ミラーマン、イナズマン、怪人二十面相と少年探偵団、ちびまる子ちゃん・・・
 
 
   
 
 
 


空と海の間に  原題Si Tous Les Gars Du Monde
1955年 フランス 配給:東和
監督:Christian Jaque 脚本:Henri Georges Clouzot

キャスト
Andre Valmy, Jean Gaven, Marc Cassot
Dondou Babet, Geores Poujouly


●ストーリー
ノルウェーから北氷洋上に出漁した一艘の漁船。乗組員は12名。その船内で乗組員に奇病が発症した。またたく間に乗組員が次々と病気に倒れていった。一人アラビア人の機関助手モハメッドだけが発病しなかったので仲間に疑いの目でみられてしまう。
船長が船舶無線で救助を要請するが、無線機が故障している。アマチュア無線家でもあった船長は積み込んでいたアマチュア無線機で救助を呼びかけた。その非常通信をキャッチしたのは遥か数千キロ離れたアフリカ・トーゴの土人部落のビギナーハムだった。彼が必死で受信内容を周囲に連絡した結果、病気はハムが原因の特殊な食中毒だと判明する。回教徒であるモハメッドだけが宗教上の理由でハムを食べなかったから病気にならなかったのだ。

翌朝8時迄に血清を打たなければ全員助からない。しかし、その血清はパリの研究所にしか存在しない。しかも最短の陸地まで戻るには2日間かかる・・。
ハム仲間の非常通信から各国が協力して国境を越えた血清の大輸送作戦が開始される。はたして血清は間に合うのか・・・

 
    
  ポスターと写真は国内及びヨーロッパの無線家より提供いただきました。
 
●血清輸送作戦の経緯を簡単に記載します。

リュテス号(呼出符号=SSTKXL)のゲレック船長がアマチュア無線14.300MHzで救助要請をする・・。
SSTKXL callinng・・・fishing-boat Lutece
QTH is lat. 68°12' N and ling. 02°W QSO QSQ・・・


その非常通信を受信したのがアフリカ・トーゴのタバンゴという土人部落に住むアルベルト(白人ビギナーハム=FD8IM)だった。
彼がすぐに応答するが、リュテス号まで電波が届かない・・。
そこで無線に詳しい小学校教師らを呼びアドバイスを求めたところ、アンテナが貧弱で方向も悪い・・・
ということで、地域の住民が協力して高さ15mのワイヤーアンテナを建設する。
出来上がったアンテナで送信すると、リュテス号から応答があり、初めて陸地との通信がつながった。

ジャングルに診療に来ていたジュグウ軍医を呼び寄せ、問診や猫を使った検査の結果、
病気はハムが原因の腸詰中毒(ボツリヌス菌による食中毒)と判明する。
12時間以内(明朝8時迄)に血清を打たなければ助からないという。
その血清はパリのバスツール研究所にしかない。しかも最短の陸地までは船で2日はかかる。
タバンゴの駐在官が本部に連絡しようとしたが旋風で明朝まで電話が通じない・・・
そこでアルベルトは軍医の指示でパリ向けに非常通信を行う。

パリで受信したのがジャン・ルイ(18歳の少年ハム=F8YT)だった。
ジュグウ軍医の指示通りパリ在住の博士宅を訪れたのだが、
応対した夫人によると、博士はトーゴから帰国後亡くなったという。
少年だけでは相手にされないので夫人に研究所に付き添ってほしいとお願いすると、
夫人は悲しみが癒えないのでトーゴのことなど思い出したくもないと断る。
少年が人命がかかっていると説得して、何とか一緒に出かけることとなる。
研究所に行くと血清は病院経由で受け取れと言われ、指定された病院に行って、
血清12人分で8400フランを支払って(少年はお金が足りないので夫人が出した)受け取る。

二人はパリ空港へ行って航空便で血清を送ろうとするが・・・
輸出許可番号や受取相手の輸入免許番号の記載を求められ、押し問答をする間に航空便は締切られてしまう。
だがオルリ空港に行けば、ミュンヘン行きがあり、そこで乗換えてベルリンまで行けばオスロへの便があると教えられた。
博士夫人がタクシーでオルリ空港に向かい、少年は自宅に戻ってミュンヘンでの受取人をアマ無線で探す。
少年からの緊急無線に応答したのがミュンヘンに住むカルル(戦傷を負った盲目ハム=DL3IK)だった。
カルルは血清を受け取る為に一人でミュンヘン空港に出かけて行った。

一方の博士夫人はオルリ空港で状況を説明するが・・・
個人の申し出はなかなか受け入れられず、あちこちたらい回しにされる。
最後に行くように言われた税関では相手にされなかった。
そこで通りがかった別便のクルーにすがり付き・・・
緊急性を察したスチュワーデスが直接機長に手渡そうと外に出る・・・
しかし時既に遅く、飛行機は滑走路上を走り去って行った。
あきらめて帰ろうとする夫人をクルーが呼び止め、
ブールジュ空港に行けばベルリン直行のポーランド機があると言われ、夫人はブールジュ空港に向う。
そしてポーランド機のスチュワーデスに血清を手渡すことに成功した。
しかし、ベルリンでの受取人がまだ決まっていないので夫人は少年宅に急いだ。

輸送経路の変更を知らないカルルはミュンヘン空港で血清を受け取ることが出来ず帰宅する。
博士夫人から報告を受けたジャン・ルイはカルルに無線連絡し、ベルリンでの受取人を探すように依頼する。
カルルはベルリン向けに緊急呼出をかけるが、深夜2時に応答する者はいなかった。
無線がダメなら電話(有線)を使おうと真夜中の街に出かけて行った。
(ナレーションで、12人の運命はこの一人の盲人に託された・・)
電話を探して暗闇をさまよい歩き、何とか一軒のバーにたどり着く。
そこで電話を借りて、心当たりの知人に電話をするのだが、深夜だから誰も取り合ってもらえない。
仕方がなく娘が勤務する病院に電話をすると、娘さんは先ほど帰宅したと言われ、カルルも自宅に戻る。
カルルの娘は付き合っている彼氏(米軍人)を内緒で自宅に連れ込んでいた。
娘は父がベルリンの米国人を探していることを知り、いったんは窓から逃がした彼氏を紹介する。
彼氏が知り合いのベルリン米国管制塔の米国人に電話で依頼した。

飛行機は既に1時間前に到着しており、スチュワーデスは手渡す人がいない為、血清を宿泊先のホテルに持ち帰っていた。
ポーランド機のスチュワーデスだから当然宿泊先はソ連側のホテルである。
依頼を受けた米軍人はコートで軍服を隠してソ連領域に侵入し、ホテルでスチュワーデスから血清を受け取る。
しかし、帰りにソ連側の警備兵に見つかってしまい拘束されてしまう。
事情を説明するが、深夜に米国の軍服を着て正体不明の薬品を持っていたのでは拘束されても仕方ない。
拘束されている間にオスロへの便は飛び立ってしまった。
スチュワーデスを呼んで真偽を調査し、事実だと解かったソ連側は迅速に血清の輸送手段を手配した。
コペンハーゲンまでソ連機・・・そこからオスロまでをフランス機が担当し、
ノルウェー空軍が漁船に血清を投下するという段取りである。

この段取りをアマ無線でリュテス号に知らせたのだが・・・
船長までも倒れてしまったことに気が動転した甲板員が碇を切って船を動かしてしまったのだ。
甲板員に電信のキーを押下させ、各国から方向探査を行い大まかな位置を確認する・・。
現場に向ったノルウェー機は雲が低くてなかなか見つからない。
そこで飛行機の音から船の真上を通過した瞬間を無線で知らせ、位置の見当をつけ、
危険を冒して100メートルの低空で飛行して漁船を発見する。
パラシュートで血清を投下するも船体から離れてしまい、作戦は失敗と思われた・・・
その時、身も凍る海に飛び込んだのはモハメッドだった。
彼が血清に向って泳ぎ出し、ついに血清は確保された。

一週間後、母港に帰るリュテス号をコンカルノオ村の全村民が出迎えた。
ラジオでも世界各国に中継され、無償で未知の人達の為に奔走した人々の善意が祝福された。

●感想
ハムの非常通信が重要な役割りとなる緊迫感ある映画で感動しました。
映画のオープニングで、
「世界には20万のアマチュア無線局が存在し、短波を駆使して日夜研究に励んでいる」
・・と言う主旨のナレーションが入ってました。
しかし、非常通信としては非常に不可解な行動が目立ちました。
非常通信は一刻も早く関係機関(この映画の場合は行政や政府)に連絡することです。
非常通信はその関係機関までの連絡手段が他に無い場合の緊急的な通信です。

この映画の設定だと非常通信が必要なのはパリまでで、そこから先は警察なりフランス政府に任せるべきですね。パリ以降はどの場面も警察や政府に連絡できるのに、すべて個人的な知人を頼ろうとしているところが問題です。だから血清も個人がお金を出して購入する形になりましたし、行く先々で一から状況を説明しないといけません。個人の話ではなかなか取り合ってもらえないのも当然でしょう。いずれにしても最終的には空軍が担当しなければならないのですから・・。

航空便で送るという発想も、空港での受取人をアマ無線で探すなんて発想も不思議です。せめて空港から到着する空港に電話連絡するとか機長に依頼すれば済む話しなんですけどね。
盲人が電話機を求めて深夜の街をさまよう場面も「警察に行け!」とか思いました。
スチュワーデスも緊急性を知っているのだからホテルに持ち帰らず、受取人が現れない時点で上司に報告すべきですね(そのことは後でソ連軍曹から注意を受けてました)。
結局は警備兵に捕まったことで国家間に事態が知れ渡り 救助活動が急速に進展しました。

まあ映画ですから、パリの少年が警察に連絡して無事に届いた・・では物語りになりませんからね。
映画のテーマが未知の人の命の為に活躍したアマチュア無線家の善意と国境を越えての連携ですから・・。
時代的には東西冷戦の真っ只中で、その最前線のベルリンを重要なポイントに設定してましたから。

私のように非常通信に協力する立場の者としては、
「もっと簡単に出来たのに・・」 とか思いますけど、映画としては面白かったです。
フォネティックでFD8IMがフランス・ドイツと言ったり、F8YTがヨコハマ・トーキョーと言うのが興味深かったです。
Q符号で「QSQ」(船医はいるか?)なんてのは私も知りませんでした。映画ではビギナーハムがQ符号表を開いて確認してました。
あと、中毒の検査で猫(16歳の最年少乗組員パンジが飼っていた)を使用し、死んでしまう場面は猫好きの自分としては悲しい場面でした。船乗りにとって猫は神様みたいなものですけど、乗員の命の為に犠牲になったのですね。
ハムが活躍する映画なのだが、病気の原因になったのがハムというのも妙に面白い。


この映画は私の生まれる前の作品ですから、本作品を観たことはありませんでした。
この映画を昔観たというHP閲覧者よりご紹介いただきました。
その後国内外の方々から情報や写真をいただきました。
その都度、掲載内容を修正しましたが、結果的にどれも微妙に間違ってました。
やはり古い映画ですから、実際に観た人も記憶が曖昧になっているようです。
過去にNHKとWOWOWで放映されたという情報もいただきました。
関西のハムイベントで上映された件も情報を得ております。
その後、このページを閲覧したOMさんから保存している映像を貸していただき、
はじめてこの映画を鑑賞することができました。たいへん感謝いたします。
(2007年6月更新)


日本ではこの映画を題材にしたテレビドラマが1989年に放送され、私も視聴しました。
題 名: 「空と海をこえて」
放映日: 1989年9月16日 TBS系 21:03〜23:48 (日立スペシャル)

このドラマの設定では・・・
民家数件の離れ島での子供達のワークキャンプでボツリヌスによる食中毒が発生。
原因は漬物(漬け込む前に食材を土の上に落としてしまった)でした。
血清がパリのバスツール研究所にしかないというのは同じ設定です。
非常通信はアマチュア無線がパソコン通信に置き換えられています。





■十一人の越冬隊  〜日本南極地域観測第一次越冬隊の記録
1958(昭和33)年 日本、 カラー80分
企画:文部省、製作:朝日新聞社、日本映画新社

国際地球観測年事業の一つとして、昭和32年2月から翌33年2月までの一年間、南極に初の越冬をなしとげた十一人の姿を映した記録映画です。

登場人物
越冬隊長: 西堀栄一郎
越冬隊員: 中野征紀、立見辰雄、藤井恒男、大塚正雄、菊池徹、
  砂田正則、村越望、作間敏夫、佐伯富男、北村泰一
本観測隊: 永田武 隊長 以下49名
宗谷乗組員: 松本満次 船長 以下78名

撮影は越冬隊員の藤井恒男、佐伯富男、本観測隊員の疋田桂一郎、森松秀雄の4人。
現地録音は越冬隊員の作間敏夫が担当。

●ストーリー
宗谷は資機材を降ろし2週間で離岸していった。11人の越冬隊は未知の南極での生活がはじまる。まず基地の整備。三月半ばになると早くも冬の訪れ(南半球では季節が逆)だ。はげしいブリザード(雪あらし)の中での苦しい作業。5月23日からの43日間は太陽のない暗黒の空世界である。オーロラの観測。太陽の再来とともに大陸の探検が実行される。犬ぞりも活躍する。
こうして11人が10か月あまりを送ったころ、第二次観測隊を乗せた宗谷が南極に近づいた。しかし46日にわたって氷に閉じこめられ、外国の砕氷船に援助されながら基地を目指したが・・・。宗谷はこれ以上の前進は不可能で、飛行機で越冬隊を助け出すことになり、昭和基地に引き揚げ命令を出した。十一人は次々に小型雪上機で昭和基地を離陸した、次の越冬隊が訪れることを信じて。

●ハムシーン
朝日新聞の社員で通信担当として越冬隊に参加した作間敏夫氏の通信業務も記録されています。
銚子無線局にA1(CW)で公式報を送り続ける多忙な様子が映し出されています。
オーロラの写真を電送写真で送るシーンもあり、成功したのは世界初だそうです。
公務が一段落するとアマチュア無線運用の許可が下され、
自身のコールサイン(JA1JG)で日本と交信するシーンがあります。
映画ではハム仲間(JA1MP長谷川OM)と交信したり、隊員の奥様らと近況を伝え合う場面が記録されています。
映画にも登場するJA1MP局は八重洲無線の創業者である故・長谷川佐幸氏です。
隊員の家族にとっては肉声がなによりのプレゼントだったと思います。
他の隊員や家族らの声は(免許がないので)あくまでもバックノイズという扱いだったようです。
基地の送信機はBC610、300W、電波はA1、A3。受信機は業務用の2台。業務用送信機は2KW。

●感想
記録映画ですから、監督や脚本家がいるわけではありません。
まずは これほど鮮明なカラー映像でよく記録されていたことに感心しました。
この第一次越冬隊は初の南極観測ということや観測船宗谷の苦難、第二次隊との引き継ぎなどで忘れることのできない存在です。
なにより、当時は敗戦国としての傷跡が多く残っている状況で、国際的な合同調査に参加したという意義は大きかったのです。

結局第二次隊は上陸することができず、その結果 15頭の樺太犬が鎖で繋がれたまま放置されることとなりました。
殆どの犬が絶命または消息不明になった中でタロとジロの兄弟犬が生存していた話はあまりにも有名で、
後に『南極物語』という映画が制作されました。
このタロとジロに関しては複数の有名作家が様々な視点から描いています。

隊員が救出される際に作間氏が猫の「タケシ」を抱いて連れ出していたのが印象深かったです。
第一次越冬隊に関してはNHKの「プロジェクトX」でも採り上げられ、DVDも発売されています。


南極昭和基地の無線局といえばJARLが開設した【8J1RL】が今ではすっかり有名になっています。
8J1RLが開設されたのは昭和41年の第7次観測隊からで、
それ以前にも第1次から個人のコールサインでアマチュアの通信が行われていたのです。
作間氏の交信が昭和基地と日本との最初の無線交信です。
作間さん以降は8J1AA、 8J1AB、 8J1AC、 8J1AD という個人コールサインが使用されました。

他に通信手段が無い時代に新聞で南極の近況を知ることができたのは通信担当隊員の電信によるものです。
電信は情報伝達では効率が悪いですが、原始的な方法がゆえに電波の到達では最も効率が良いのです。
プロの業務では電信は殆ど消滅しましたが、この技術はアマチュアのみでも残していかなければならないと思いました。


宗谷は昭和13年進水で戦争にも使用され、南極観測スタート時点では見た目にも古い船だったようです。
私の母が春日八郎さんの大ファンで、「さよなら宗谷」というレコードをよく聴きました。

「宗谷よ おまえは何を見た」 「タローとジローは生きていた・・・おまえの帰りを待っていた」
「さよなら〜宗谷・・・ありがとう 宗谷〜」
・・・こんなフレーズが耳に残っています。

「宗谷」は現在東京お台場の船の科学館で係留展示されています。


この映像は作間氏の友人でもあるOMさんから関連映像資料と共にご提供いただきました。(2008年5月)






 

世界大戦争     英題:THE LAST WAR
1961(昭和36)年 日本、 カラー110分
製作:東宝、 監督:松林宗恵、 特技監督:円谷英二、 脚本:八住利雄、木村武

東西冷戦を時代背景に核戦争を描いたこの特撮映画は世界中で話題になり海外の多くの国で上映された。日本人の悲願をこめて全世界の人々に戦争の愚かさを訴える反戦映画である。

出演者
フランキー堺(田村茂吉)、乙羽信子(茂吉の妻)、星由里子(長女 冴子)、宝田明(高野:笠置丸通信技士)、笠智衆(笠置丸炊事長)、東野英治郎(笠置丸船長)、山村聡(首相)、上原謙(外務大臣)ほか


●ストーリー

戦後16年経った日本はみごとに復興し、経済発展も著しく、人々は平和な日々をおくっていた。田村茂吉は外人記者クラブの専属運転手として働いていた。念願の一戸建ての家も持ち、妻と3人の子供達と平凡ではあるが幸せな生活をおくっていた。長女の冴子は自宅2階に下宿する商船乗組員の青年と恋に落ち、両親の理解もあって婚約するまでに至っていた。

世界の情勢は対立する連邦国と同盟国の二大勢力の緊張状態が極限に達していた。そんな世界の不穏な情勢を茂吉は外人記者の雑談で耳にはしていたが、平和な日本の現状でたいして気にはせず、株価の予想に利用する程度であった。
そんななか軍事衝突が起こり、戦争に発展する事態も予想されるようになった。いったんは話し合いがまとまり戦争は回避されるとみられていたが、朝鮮半島の38度線の軍事衝突で小型核爆弾が使用され、世界は一気に戦争が避けられない事態となった。日本は唯一の被爆国として最後まで話し合いによる戦争回避の努力をしたが、連邦国の一員として核ミサイルの攻撃を受ける可能性が高くなってきた。

ある日、子供達が小学校から早く帰ってきた。どうしたんだと問う茂吉に子供達は「知らないの?・・戦争が起きるんだって」・・・茂吉は驚いてラジオをつけ日本も核攻撃を受けることを知る。既に街中は逃げる人々でパニック状態になっている。しかし、茂吉は家族と一緒に我が家に留まることを決意する。「いまさら9千万人の日本人がどこへ逃げる、何も悪いことしてないのに何故逃げる必要があるんだ・・」そして家族全員ささやかなご馳走で“最後の晩餐”をするのであった。幼い子供達は核攻撃の意味も分からず「お正月みたい」とご機嫌の様子。茂吉はそんな無邪気な我が子を見ながら、冴子には盛大な結婚式をしてやりたかった、幼い次女はスチュワーデスにしてやりたかった、長男には自分が行けなかった大学に入れてやりたかった・・・そんなささやかな夢を奪われてしまう不条理さで涙がとまらなかった。

ついに連邦国と同盟国双方から核ミサイルが発射され第三次世界大戦が始まった。東京の中心部に核ミサイルが着弾し、東京は一瞬の間に爆破されて消えていった。ニューヨーク、ロンドン、パリ、モスクワといった世界の主要都市も次々と核ミサイルで壊滅していった。

無事だったのは遥か海上にいた高野が乗船する笠置丸だった。乗組員は壊滅していても東京に帰りたいという。帰れば放射能で命の危険がある。しかし船長は東京へ帰ることを決意する。


 
●ハムシーン
主人公茂吉の長女冴子の婚約者高野が商船の通信技士であり趣味でアマチュア無線も楽しんでいた。
彼は茂吉の自宅2階に下宿しており、部屋には本格的な無線設備がある。
彼に恋をしていた冴子は彼の船と交信したいためにハムの免許を取得した。
久しぶりに帰ってきた高野に冴子は自慢げに
 「私アマチュア無線の免許を取ったの。高野さんの船を呼んで驚かそうと思って」・・・
しかし、彼との初交信は別れの交信となってしまった。
結婚を楽しみにしていたが、彼の船が出航した後に戦争が勃発してしまったのだ。
高野は船から冴子に和文電信で最後の別れを送信した。
「サエコ コウフクダツタネ サエコ コウフクダツタネ」・・・
受信した冴子は涙を流しながら「タカノサン アリガトウ」・・・



●感想
この映画も私が生まれる前の作品です。HP閲覧者よりぜひ掲載してほしいとのリクエストがありました。世界大戦争というタイトルを見て、あれっ? 確かこの映画は私の特撮映画コレクションにあったはずだ。倉庫を探しまくったら未開封のレーザーディスクが出てきました。この時代の作品では大映のガメラシリーズと東宝のゴジラシリーズの情報収集をしていました。世界大戦争は特撮映画ということと円谷英二氏が特撮監督だったということで、とりあえずLDを購入しておいたわけですが。タイトルからして面倒そうなので観ないまま倉庫で眠っていたのです。いままでハムシーンがあるとは知りませんでした。ご紹介いただいた方に感謝いたします。
個人的なことですが、私の父も世界中を航海する商船の船員でした。2年に一度ぐらいしか合うことができなかったので無線で通信できるとイイなあと思ったりもしてましたが、残念ながら父はハムの免許は持っておりませんでした。両親が結婚したのも丁度この映画が公開された時期でしたので、当時の二人もこの映画の冴子と高野さんのような感じだったのかなあ・・・とふと思ったりしました。



核戦争をテーマにした映画はいくつかありますが、政治や軍事機関のトップレベルの攻防を中心に描かれることが多いようです。この世界大戦争はそのテーマとは対照的に戦争の世界とは無関係な平凡な一家を主人公にすることで反戦映画としてのインパクトを高めているように思えます。現在では第三次世界大戦の可能性は殆んどありませんが、当時は東西冷戦の高潮期でいつ核戦争が起こっても不思議ではない情勢でしたから。タイムリーなテーマでしたので現実の国々を刺激させないため連邦国と同盟国の二大勢力とぼかしているが、東西冷戦を意識していることは間違いない作品でした。東西冷戦が終結した現在でも核ミサイルは配備されています。この映画はフィクションではあるが、ボタンひとつでこの映画が現実になるのも事実なのです。

またこの映画の見どころは円谷英二の特撮シーンです。総天然色というのが強調されていますが、昭和30年代ではまだモノクロ作品が多かったのでカラーの特撮は円谷氏がかなり力を入れたものと思われます。当時は現在のようなコンピュータによるCGは無く、戦闘機や潜水艦などの軍事衝突の場面はすべてミニチュアによる特撮です。特に東京や世界主要都市が核ミサイルで爆破されるシーンは昭和30年代の技術としては見事なものです。 (2003年9月)
宣伝用に多くのポスターが製作されている






海の若大将
1965年(昭和40)8月公開  配給:東宝  カラー99分
制作=宝塚映画、 監督=古沢憲吾、 脚本=田波靖男


加山雄三主演の若大将シリーズの第5作

出演者
加山雄三、 有島一郎、 中真千子、 星由里子、 田中邦衛ほか

●ストーリー

京南大学の若大将 田沼雄一(加山雄三)は水泳部のエースで人気者。実家はすき焼屋を経営し、父(有島一郎)は商学科に行かせたつもりだが雄一は外洋航海の職にあこがれ水産科に籍を置いていた。すでに丙種航海士と無線通信士の資格を取得している。ある日悪友の青大将(田中邦衛)のカンニング事件に巻き込まれ一緒に停学処分を受けたことで、父にすべてがバレてしまい親子喧嘩をしてしまう。そんな折、青大将が船長のクルーザー光進丸で八丈島目指して男3人で旅にでるのだが、ひょんなことから彼らのアイドルである澄子(星由里子)がこっそり乗り込んでおり、一緒に航海することに・・。

●ハムシーン
雄一の部屋にアマチュア無線の設備がある。それは大学の月謝を着服して購入したらしい。
無線機のスイッチを入れて・・・
 「こちらは JA1KYC みなさん こんにちは 只今より大学の若大将 田沼雄一君の歌と演奏をお送りいたします。曲目はブーメランベイビー」 といってマイクに向かってギターを弾きなから歌い出す。

青大将のカンニングではハンディトランシーバーで友人が答えを教えるシーンがある。
クルーザーが台風に巻き込まれた時、雄一がモールスでSOSを送信(たぶん船舶無線)するシーンもある。


●感想
この映画にハムシーンがあるのは以前から情報を得ていたが、ビデオをレンタルしてまで観ようとは思わなかったわけです。最近CS(日本映画専門チャンネル)で放映されたので一応観てみました。
この若大将シリーズは人気俳優 加山雄三をスポーツ万能で歌も歌えるヒーローとして描くのが目的だから、物語りの内容はどうでもよいわけです。今回は“海の”というタイトルのように加山雄三のイメージとして強いクルージング、ダイビング、水泳などマリンスポーツを中心に描いたもので、内容的には青春ハチャメチャコメディーです。それに当時は“お坊ちゃま”の象徴でもあり皆があこがれていたハムも取り入れたのでしょう。ろくに練習もしないで遊んでいるのに、最後は水泳の国際大会で優勝するなんてありえないでしょうに。

それにしてもハムシーンでの“一人DJ”は酷いですね。当時はハムがキング・オブ・ホビーと呼ばれていた時代です。そこで放送局ごっこのようなものを送信するとは。そんなことすれば、昔も今も即“電監”に通報されるでしょう。やっていることはアマチュア無線ではないので、無線機を利用した悪い例としてこの映画を紹介した次第です。でもこの映画を見て「ハムはこんなことが出来る」と勘違いして真似した人もいたりして・・・

あと若大将に対して田中邦衛が青大将というのが妙に面白い。現在は無口な役が多いが、あんなふざけた役もやっていたのですね。それに40年ほど前の映画なのに今と顔がほとんど変わらないのも面白い。 (2004年2月)





 

■復活の日
1980(昭和55)年公開 日本、配給=東宝、 カラー156分
原作:小松左京、製作:角川春樹、 監督:深作欣二、 脚本:高田宏治,グレゴリー・ナップ ,深作欣二

小松左京の同名小説の映画化。恐怖の細菌兵器のために人類はほとんど絶滅、南極に残されたわずかな人々の生きのびる姿を描く。

キャスト
草刈正雄(吉住周三)、渡瀬恒彦(辰野隊員)、夏木勲(中西博士)
緒形拳
(土屋教授)、千葉真一(山内博士)、永島敏行(松尾隊員)
森田健作
(真沢隊員)、多岐川裕美(浅見則子)、丘みつ子(辰野の妻)
オリビア・ハッセー
(女性隊員マリト)、 グレン・フォード(リチャードソン大統領)ほか

●ストーリー

1982年、東ドイツの研究所から猛毒ウイルスMM−88が盗まれた。この細菌は摂氏マイナス10度で自己増殖をはじめ、零度を越えると猛烈な毒性を発揮する。ところが盗み出したスパイの乗った飛行機はアルプス山中で事故に遭い、ウイルスが蔓延した地球は、南極に863人を残して滅亡する。その生存者の一人、地震研究者吉住は、さらに大きな危険が近づいていることに気づく。アメリカ東部に大地震がおきる可能性があり、それが対ソ連ミサイル攻撃の自動報復システムに作動すると言う。ミサイルが発射されれば、ソ連の報復システムも作動することに・・・。

●無線シーン
オーストラリア基地との交信(英語)
辰 野:「ハロー this is 8J1RL アイ コピー ユー・・・コールサイン オーバー」
エハブ:「こちら VK0CC モーソンステーションのエハブ」
辰 野:「お隣りさんか 何かニュースか?」
エハブ:「今朝、ウガンダの医師と交信した・・中部アフリカは全滅だと言った。人間だけでなく動物もだ・・」
山 内:「ハロー ドクターの山内です。できるだけ詳しく話してください・・どんな症状だと・・・」
エハブ:「最初はカゼの症状だが、肺炎を起こし・・・何か別の・・」

1982年8月、日本との交信が途絶えて20日(交信は英語)
辰 野:「CQ CQ This is JGX 昭和ステーション・・・コーリング ジャパン・・」
<アマ無線機から子供の声が>
辰 野:「QRZステーション どっかこちらを呼びましたか? This is 8J1RL 」
トピー:「ハロー ハロー だれか聞こえる?マイネーム イズ トピー・アンダースン」
辰 野:「トピー 聞こえるよ」
トピー:「だれか聞こえる? ぼくサンタフェの牧場にいるの・・・」
<どうやらマイクの操作が解らずPTTを握りっぱなしらしい。辰野がスイッチを放せと叫ぶが当然トピーには伝わらず一方的に送信>
トピー:「これパパの無線機なの 十になるまでいじるなと言われたけどまだ5つなの・・・パパは起きてくれないの ママは死んだの・・・一人ぼっちで怖い・・・ここにパパのピストルがある・・」
<その後銃声が聞こえて送信が途絶える>

●感想
このページで紹介している「世界大戦争」は東西冷戦を背景に核戦争で世界が滅亡するというものだが、「復活の日」は生物兵器と核兵器の二段構成である。ありえない話しではないが、世界大戦争と比べると現実味は小さくなるでしょう。でも映画としては面白い題材です。ただ、作品の時間が長すぎます。冗長な部分も多々あるので、日本版でももう少しコンパクトに編集してほしいところです。
原作は1964年発表、映画は1980年公開ですからまだ東西冷戦は続いていたわけですが、緊張感では1960年代の方が高かったと思われます。原作ではハムシーンがもっとあったようですが、映画では省略されています。
辰野隊員役の渡瀬恒彦氏のハムシーンの演技がちょっと興奮しすぎな感しが・・。ハムはどんな場面でも無頓着なほど冷静な場合が多いんですけどね。一般視聴者に緊迫した状況を伝えるには少々オーバーな演技のほうが分かりやすいのでしょうけど。
それからトピーの無線シーンはかなり不自然ですね。5歳の子供が自分の場所や名前、年齢、周囲の状況などを的確に送信した後に拳銃自殺するでしょうかね。5歳ではまだ自殺という概念は無いのではないでしょうか?


この映画も複数のWebページ閲覧者からリクエストいただきました。私はこの映画を公開当時に観ていないんです。その後ハムシーンがあることは聞いていましたが、近所のレンタルビデオ店に置いてなかったので観る機会がなかったのです。2004年にスカパーの東映チャンネルで視聴することができました。 (2004年11月)







 
 

メインテーマ
1984年7月公開 配給=東映  カラー101分
制作=角川春樹事務所、 監督・脚本=森田芳光

片岡義男の同名小説の映画化。沖縄を舞台に描かれた青春ラブストーリー。
アマ無線ではなく、パーソナル無線が登場する映画として紹介します。

出演者:
薬師丸ひろ子、 野村宏伸、 財津和夫、 渡辺真知子、
太田裕美、戸川純、 桃井かおり ほか

●ストーリー

幼稚園の先生を辞め失業中の小笠原しぶき(薬師丸ひろ子)は、海岸で4WDピックアップで全国をマジック修行にまわっている青年 大東島建(野村宏伸)と出会う。なにかと気が合わない二人だが、一緒に旅をすることになる・・・

●無線シーン
建が乗っている4WDピックアップにパーソナル無線が搭載されていることから、何度か交信シーンがある。

「ハローCQ ハローCQ こちら08940 ハローCQパーソナル・・・ 
 入感ありましたら ご連絡ください こちら08940 これから瀬長島に向います」

<どしゃ降りの雨のなか二人が喧嘩してしぶきがピックアップの荷台に乗った場面では・・>
「ハローCQ ハローCQ こちら08940 こちらの車に傘を持ってきてください よろしく」・・
と送信すると、しばらくして近所を走行していた乗用車がやってきて傘を渡してくれる。
走行中なのにどうして場所がわかったのか?というツッコミは置いといて、
どこでも無線仲間がいて色々と便利に使えるということを表現したのでしょう。

※08940とかいうのは群番号です。CQ呼出の場合、自分の群番号を教えてそこでコンタクトをとるというのも一つの方法なのですが、まずはニックネームで呼び合うのが一般的でしたが・・。


●感想
青春映画としては別にどうということもない内容だが、マジックが取り入れられていることでファンタスティックな場面が多い。薬師丸ひろ子の人気絶頂期で、大学進学の為に女優を一時休業した後の作品でもあり、前年の探偵物語に続きヒットした映画です。
私は特別ファンというわけではありませんが、当時のアイドルと呼ばれた連中のなかでは個性的な女優だった印象があります。彼女の歌のなかではこのメインテーマが一番好きな曲でもあります。それに私は彼女と同じ大学に在籍していました。当時は人気アイドルが大学に進学するということで、ファンもマスコミも大騒ぎでした。ごく普通の学力があれば入学できる大学だったのですが、翌年には志願者殺到で超難関校になってしまいました。学年が一つ下の私にとっては大変な迷惑となった現象でした。当時は知人に 「どこの大学行ってるの?」 と聞かれて「○×大学」と答えると・・・「ああ、あの薬師丸ひろ子の・・」 という反応がほとんどでした。 なんかアイドルを追っかけて入学したみたいに思われて、ちょっと不愉快でした。
相手役の野村宏伸は全国公募で選ばれた新人です。演技も台詞もぎこちないのは、デビュー作だからある程度仕方ないところでしょう(今でも下手ですが・・)。


 
パーソナル無線が登場する映画は珍しいのではないでしょうか。
パーソナルは1982年に誕生し、無資格(局免申請は必要)で使用できる無線として当時は爆発的な人気でした。なにしろ当時は携帯電話が普及していませんでしたから。多くのメーカーがパーソナルに参入していました。簡易無線の一種なのですが、900MHz帯 5W 158ch で外付アンテナもOKという無資格にしては本格的な無線でした。使用目的に制限があるアマチュア無線とは異なり、パーソナルではレジャー、競技会、仕事の連絡など何にでも使用できるのも魅力でした。
私も当時19才で最初に乗った車(シティターボ)にパーソナルを搭載していました。当時はパーソナル用のオレンジトップのアンテナを付けた車をよく見かけました。そういえばあの頃はピックアップトラックに乗る若者が多かったですね。アメリカの若者の多くがピックアップに乗っているから格好イイと思っていたのでしょう。でもアメリカの若者は格好イイと思って乗っているのではなく、単に税金が安いからだそうです。すぐアメリカ人の真似をする日本人としては、アメリカ人がやることは何でも格好イイと感じるのでしょうね。

話がそれましたが、パーソナルは群番号など独自の機能で特定の仲間同士のほか群番号00000でCQ呼出も可能でした。IDを記録したROMを挿入しているので識別信号は自動的に送信するし、周波数も機械が自動的に選択する仕組みでした。混雑時の5分間通話制限という機能もありました。自動化はアマチュア無線に慣れているとかえって不便に感じました。無資格者が使用するのでマナーが期待できないという役人の判断で自動的な仕組みにしたのでしょうが、結局はROM無し送信や周波数固定などの不法改造も横行し、特定のグループが独占する問題もでてきました。
パーソナルは改造自体が違法なのですが、スペシャル機と称する改造済み機種が堂々と売られています。今ではほとんどの周波数を特定のグループが占領しており、交信するにはどこかのグループに入らないといけないのが現状です。何でもすぐ徒党を組むのが日本人の習性のようですね。自由に使える無線を自由に使えなくして何が楽しいのでしょうか。複雑な仕組みや使いにくさ、電波の飛びの悪さなども相まって人気は急速に落ち、今では殆んどのメーカーが撤退しました。
特に電波が飛ばないという声が多かったようですが、900MHz帯という電波伝搬の特性を知っていれば5Wという出力で結構使える無線なんですけどね。このまま消滅するのは何かもったいないですね。不法・違法運用を取り締まって、本来のパーソナルに戻してほしいものです。 
(2004年2月)

なお、この映画に出てくるパーソナル無線はクラリオン製で、CMとタイアップしていました。
クラリオン シティコールのCMでメインテーマの音楽で薬師丸ひろ子が出演していました。


追記・・・無線機のスプリアス(不要電波)規定が改正され、2005年12月1日から施行されています。現存するパーソナル無線機は、旧規定のため使用期限が設けられています。
2007年12月1日以降は新規の開局ができなくなります。特例として、既に開局している場合は更新(10年毎)を続けることによって、平成34年11月30日まで使用することができます。再免許(更新)申請を忘れると使用できなくなりますのでご注意ください。
追記・・・新規受付は2017年まで延長されました。

 


 


 
植村直己物語
1986年(昭和61) 東宝作品 カラー140分
原作: 植村直己、監督: 佐藤純弥、脚本:岩間芳樹・佐藤純弥

5大陸最高峰すべてを征服する記録をたて1984年2月、マッキンリー冬期単独登頂後消息を断った世界的冒険家植村直己の生涯を描いた作品。

キャスト
西田敏行、倍賞千恵子、大滝秀治、丹阿弥谷津子、井川比佐志、
古尾谷雅人、藤木悠、菅井きん、日色ともゑ、乙羽信子

●ストーリー

冒険家 植村直己(西田敏行)は1973年、グリーンランド3千キロの犬ぞり単独行を成功させた。
冒険家とはいえ、世間的には落ちこぼれで、放浪的人生の延長として冒険を続けていたのだ。
そんな折、馴染みの小料理屋の娘 公子(倍賞千恵子)に一目ぼれし、彼女も彼に興味を示して、結婚・・。
結婚後も、彼の冒険は続き、その間に母は死に、公子は流産・・・。
平穏な家庭を築く決意を固めた彼は、最後の冒険としてマッキンレー踏破を目指すが・・・。

●ハムシーン
直己と話をするために公子はアマチュア無線局を開設した。
リグは日本無線のJST-100、 周波数は21,206.20(kHz)という表示が見える

直己:「JM1SGM JM1SGM こちらは JG1QFW JG1QFW 感度ありますか」
公子:「JG1QFW こちらは JM1SGM シグナルレポートは56です どうぞ」
直己:「えー キミちゃん ボクです。 キミちゃん 聞こえますか どうぞ」
公子:「はい。 あなた元気 大丈夫・・」
直己:「ええ 元気です・・・」

●感想
もう20年以上前になるのだなあ・・・。
遭難か・・・その後、手を振って下山する姿が映し出されて一安心・・・一転して行方不明・・・
生存を信じていた多くの国民が悲しみましたね。

有名な冒険家とか登山家はたいていハムの免許を持っています。
インターネットや携帯電話が普及しても、僻地とか非常時には無線が頼りなのに変わりありません。
JG1QFW(植村直己)とJG1SGM(妻 公子)はコールブックにも載っている本人の実在するコールサインです。
役柄に該当する実在のコールサインが使用された映画は数少ないと思う。
『十一人の越冬隊』は記録映画だから当然として、他には『復活の日』の8J1RL くらいでしょうか。(2008年5月)

 

 

 

■私をスキーに連れてって
1987年(昭和62)11月 東宝系公開 カラー 98分
制作:フジテレビ、 原作:ホイチョイ・プロダクションズ、 監督:馬場康夫、 脚本:一色伸幸

ゲレンデでの恋を描いた、ホイチョイプロダクションが贈るウインターラブストーリー

出演者:
原田知世、三上博史、原田貴和子、沖田浩之、布施博、高橋ひとみ、田中邦衛 他

●ストーリー

スキーの腕はプロ級だが恋愛が苦手なサラリーマンの青年 矢野文男(三上博史)は友人 小杉正明(沖田浩之)、泉和彦(布施博)、佐藤真理子(原田貴和子)らとスキーに出かけていた。文男はクリスマスイブの志賀高原で出会った池上優(原田知世)に一目惚れするが・・・。

スキー場を舞台に若者たちの行動をテンポ良く描いたラブコメディー。スキーファンの間では大人気で、いまだにスキーに行く前にこのビデオを見ていくという人も多いらしい。人気アイドルを起用したこともあって大ヒットした映画です。
物語りそのものは、アマチュア無線とは直接関係がないし、スキーファンには有名な映画ですので詳しい内容は省略します。

●無線シーン
アマチュア無線は、スキー場に向かうモービルでの連絡や
ハンディ機でゲレンデでの仲間同士の便利な連絡手段として描かれている。

<スキー場へ向うモービルとロッジに先着している正明との会話>
文男:「JO1MHN JM1OTQモービルからメリットありますか」
正明:「JM1OTQモービル メリット5 現在地をどうぞ」
文男:「只今そちらまで5キロの地点」
正明:「タイヤはスタットレスですか?」
文男:「は〜い そのとおり」
正明:「ロッジまでノーチェーンでもOKです どうぞ」
文男:「了解 じゃあ後ほど」
※メリット5(ファイブ)とは5段階の了解度で最上(感度良好)のことだが、CB無線の影響を受けたモービル局がよく使用する言葉です。
アマチュア無線では、それに9段階の信号強度を加えて59(ファイブナイン)という言い方が正しい。


<ゲレンデと志賀高原プリンスホテルレストランとの会話>
真理子:「MHN、TVTから 席確保したよ 」
正 明 :「了解 メニュー送れ 」
真理子:「サントリー缶ビール250ml あと350、500、1リットル、 生が350と500、あとバドワイザーが350、カールスバーグが350、つまみはフライドチキンとフライドポテト・・・」

<万座に向かう途中、コースを外れ 優と文男がビバークしようとしているところ・・・>
泉  :「JM1OTQ、 JH1DUR からメリットありますか 」
文男:「泉だ!」 「JM1OTQ メリット5 現在地どうぞ 」
泉  :「現在地 シュプール追って南下中、あかりが見えないか?」
文男:「・・・見える見える 300メートル 林の中だ 」

 
●感想
ラブストーリーといっても軽いタッチでストーリー展開のテンポが良いので何度観ても飽きない映画だと思います。特に仕事を早々に済ませ愛車でスキー場に出発する時のワクワクした気持ちがよくあらわれています。上映当時20代の若者でないとこの映画の良さはわからないと思います。時代が変わりましたので、現在の若者が今この映画を観てもピンとこないかもしれません。

それまで、アマチュア無線はマニアックで映画やテレビでは取り上げにくいもので、一般的な印象も、「暗い」とか「難しそう」とか「おじさんの趣味」といったあまり良いイメージではなかったのです。それをこの映画では、若者向けの格好良くて便利なコミュニケーションツールとして描いたのです。携帯電話も普及していない時代でしたので、この映画をきっかけにアマチュア無線も大流行しました。当時はバブルの最盛期で、アマチュア無線界もハムバブルとなりました。無線関係団体やメーカー、販売店はこのブームに浮かれて免許を乱発し、ハムを粗製濫造しました。そしてコールサインも不足するほどの勢いでアマ無線局が急増しました。私のコールサインが1エリアなのに“7L4”という奇妙なものになったのもこの映画の影響といっても過言ではありません。

しかし、スキー等のレジャーの連絡手段とか仲間同士のコミュニケーションツールというのは、本来のアマチュア無線の目的(実験・研究・自己訓練)とは程遠いものでした。大目に見て違反とまでは言わないにしても、アマチュア無線としては非常に好ましくない使い方なのです。その結果、マナーも何も無い無法状態になってしまいました。
それでも一応免許を持つ正規の局なら良い方なのですが、実際に免許を持たない不法局も激増しました。当時のスキー雑誌にはアマ無線のハンディ機の広告がよく掲載されていました。しかしそこには、隅っこに要免許という小さな文字があるだけで、免許取得についての説明は殆んどありませんでした。無線機はディスカウントストアなどでも無線知識の無い店員が販売していました。ハムショップでも無資格と知りながら利益の為に販売していました。店員が「送信する時は適当にアルファベット3文字で呼び合ってね・・・」とか指導していました。当時のスキー場では正規の局の数倍の免許を持たない不法局が存在したと思われます。


 
スキーの映画としては素晴らしいのですが、昔からのハムにとっては忌まわしい映画となってしまいました。この映画が公開された当時、私は22歳でしたので、映画に描かれている若者たちと同じ年代です。だから、映画そのものはたいへんリアル感があったのですが、ハムの立場としてはやはり疑問でした。

仲間同士のおしゃべりでは、ハムとしての発展はなくすぐに飽きてやめてしまうものが多いのです。それに携帯電話やインターネットの急速な普及で、単なる連絡手段としての無線では魅力がなくなり、多くの若者があっという間に無線界から去って行きました。
今はやっと落ち着きを取り戻し、昔からの残ったハムが、ハムバブルで乱れたマナーをコツコツと修正し、よき時代を取り戻そうと努力している段階です。このようなハムバブルは二度と御免です。
アイドルを起用するのなら、本来のハムの魅力をアピールするような映画をつくってもらいたいものです。

ところで、この映画に出てくるコールサインは実在するものですよね。局名録で調べてみると、矢野文男(三上博史)のコールサイン JM1OTQ(1980年開局)の実際の免許人は沖田浩之の役名と同じでした。小杉さんってプロダクション関係者なのかな?同プロダクションの映画「波の数だけ抱きしめて」でも織田裕二が同役名ですが・・。その他 JO1MHNは1982年、JH1DURは再割当で1987年開局だと思いますが・・・まあ映画だから深く考える必要はないんでしょうけどハムの立場からは興味があります。
あと、スタットレスってこの頃が出始めでしたかね。ちょうどスパイクタイヤの粉塵公害が問題になっていた時期だったでしょうか。全国各地でスパイクタイヤ禁止条例が施行されました。当時のスタットレスはあまり性能が良くなくてスパイクに比べると頼りない感じでしたね。当時としては最先端だったスタッドレスを映画でアピールするのも狙いだったんでしょう。
(2002年10月)
 






 
■コンタクト    原題:Contact
1997年公開  アメリカ合衆国  カラー150分
監督=ロバート・ゼメキス [Robert Zemeckis]脚本=ジェームス・V・ハート/マイケル・ゴールデンバーグ 

宇宙科学者でもあったカール・セーガンの小説を映画化

キャスト
ジョディ・フォスター [Jodie Foster]
マシュー・マコノヒー [Matthew Mcconaughey]
ジョン・ハート [John Hurt]
ジェイムス・ウッズ [James Woods]


●ストーリー
父子家庭で幼い頃から宇宙や電波に興味を持っていたエリー(J・フォスター)は天文学者として電波天文台で地球外知性探査SETIの研究をしている。周囲からは無駄な研究だと冷めた目で見られていた。予算削減などの困難にも自らスポンサーを探し出し観測を続けていた。ある日、宇宙からの電波をキャッチし、それに宇宙間移動装置の設計図らしきものが含まれていることを発見する。ここからは国家的大プロジェクトとなるが、神を信じない科学者としてのエリーに宗教界からの反発や政治的思惑などもあり、宇宙間移動装置のただ一つの席につく人物には選考されなかった。だがその装置は発射直前にテロリストによって爆破されてしまう。しかし、極秘に日本の北海道で同じ装置が建設されており、最後のチャンスを手に入れ、地球外知的生命体とコンタクトをとるべく宇宙へと旅立って行くのだが・・・。

●ハムシーン
冒頭に幼少期のエリーが父親に教えられながらアマチュア無線を運用するシーンがあります。
エリー:「CQ CQ W9GFO どうぞ」・・・「返事がない」 父:「焦らないで 一歩ずつ」 エリー:「CQ this is W9GFO・・・」と粘り強く呼び出していると応答があった。「W9GFO こちらは K4WLD・・」 エリー:「何て言うの?」と父に尋ねる。父:「何でも 」、エリー:「場所は何処ですか?」 交信相手:「ペンサコラ」 エリー:「ペンサコラ・・何処にあるの」 父:「ヒントはオレンジジュース」 エリー:「フロリダ州ね」
父は地図に矢印を付けながら・・「通信士さん 1796キロ先だ やったな 新記録だ!」

その夜、エリーはベットで父に無線について質問をする・・
エリー:「ニューヨークは?」 父:「届くよ」、 エリー:「カリフォルニアは?」 父:「もちろん」、 エリー:「アラスカは?」 父:「晴れてたら」、 エリー:「中国は?」 父:「よく晴れてたらね」、 エリー:「じゃあ月は?」 父:「大きな無線機なら」、 エリー:「木星は その先はえっと」・・・・・「ママとも話せる?」 父:「遠すぎて難しい」
その後一人で無線を続けるエリー:「CQ W9GFO ママ 聞こえる」・・・「大きいアンテナがほしい」とつぶやいたあと巨大電波望遠鏡を見つめる天文学者エリーの姿の場面に移行する。

*************************

ある日観測所でウトウトしながら父が死んだ日のことを想い出す(エリーが10歳の時、最愛の父も心臓発作で亡くしているのだ)
父の葬儀の日、無線機に向って「CQ W9GFO パパ聞こえる? こちらはエリー・アロウェイ 14.20MHz・・・パパ いるの 応えて パパ お願い・・・」


●感想
この映画150分はとにかくダラダラと長い。映画館で尻が痛くなったよ!時間は長いのに後半部分は逆にバタバタとせわしい展開だね。映画は100分程度にまとめてほしいな。
宇宙からの電波は私も興味があり、国内外で研究しているグループがいくつかあるようです。しかし、知的生命体からの電波をキャッチした場合、何故そこで神とか信仰が出てこなければならないのか。SF映画だと思って観ていたので、神や宗教がどうたらと言った時点で白けてしまった。人類と宇宙の融合に神が存在するとでも言いたいのかな。私の能力では理解不能の映画でした。
人類と神がテーマだとしても、この映画でいう神は西洋(キリスト)のみを意識しているようだし。まあ、アメリカ映画だから自分らが信じる神を念頭に置いて自己中心的になるのは当然でしょうけど・・。人類の95パーセントは神を信じているから、神を信じない者を地球の代表として宇宙に送るわけにはいかないということらしい。科学者エリーの恋人が彼女とは対照的な宗教家というのがいかにもドラマ的な設定で安易な脚本に感じる。
ラストで父親の姿をしたのが宇宙人ってこと? 彼女の意識の中に知的生命体が入り込んだということ? エリーは宇宙に行ったってこと? それとも信仰心が芽生えたということなの? いずれにしてもSFではなく、西洋的宗教の啓蒙映画だね。


製作にかなり予算かけたらしいけど、私には大作とは思えない退屈な映画でした。宇宙間移動装置も特撮好きの私にとっては安っぽく思えました。今は安易にCG技術を駆使するけど、模型を使った特写の方がリアル感があるんだけど、日本ほどの特撮技術は無いから仕方ないのかも。物語りより特撮技術の方に目が行ってしまう私もどうしようもないと自分でも思っていますが・・・。
私は無宗教で神も信じていない“人類の5パーセント未満”の人間だから、この映画がつまらなかったのでしょう。私はB級映画がけっこう好きなんですけど、その場合は最後にタコ人間のような軟体生物が出てきたりするけど、それも無かったからB級映画としての価値もない。面白かったのは、変質者みたいな怪しい資産家とか日本の描写でした。特に北海道の部屋のシーンで畳の壁とテーブルの上に鏡餅、わらじ、守り札、破魔矢、掛け軸という日本らしきセットには笑ってしまった。いまだにこの程度の認識なのでしょうか。でもサムライや忍者が出てこなかったから少しは進歩したのかな?
日本の会社が建設して、米国人の乗員を探しているという設定も、金だけ出して汗を流さないという日本人への偏見が根強いのでしょう。 何故北海道かというと・・・アメリカからすれば、日本は地球の端の神秘な国で、そのいちばん北の島は未知の秘境という印象なのでしょう。

最後は彼女が宇宙人とコンタクトしたか否かで調査委員会で責められます。なにしろ何の証拠もないわけですからねえ。あの宇宙人が彼女に玉手箱のようなお土産でも持たせてやればよかったのに・・・でもそれじゃあB級映画になってしまうからね。


このページの本題である冒頭のハムシーンは可愛かったね。父に教わりながら運用する姿が微笑ましい。遠くと交信できたら嬉しいもんなんですよね。でも彼女の場合は遠くの意味合いが違うみたいですね。宇宙のはてに電波が届けば亡くなった母と交信できると微かに信じているようです。ちょっと切ない感覚がイイですね。
自分の誕生の代わりに母を亡くしたこと、幼くして愛する父も亡くしたこと、父から教わった無線で遠くの未知の人々とコンタクトできる不思議・・・それらの想いが宇宙科学者となるきっかけになったようです。そういった映画の導入部分は素晴らしかったのですが、その後のストーリー展開は鑑賞者によって好みが分かれますね。



私も宇宙には興味があるから、この作品は映画館で観たわけです。でも神とか信仰とか人間の真理とか・・・そういう哲学っぽい映画は大嫌いなのです。一応ハムシーンがあるから、その部分をもう一度確認したかったのだけど、ビデオレンタル料金もったいないからそのままになっていました。ちょうど正月にNHKハイビジョンで放映されたのでビデオ録画してみたわけです。ビデオならダラダラ部分は早送りで見れますから。エンディングの字幕だけでも10分近くあるよ。

それにしても21世紀になっても神だの信仰だの言ってるからいまだに世界中で紛争が絶えないんだな。世界中の紛争の根源は殆んど宗教だからね。いいかげん目が覚めないのかね人類は。私は他人がどんな神を信じようと宗教団体に入ってようと“勝手にやれば”っていう感じで興味もないから、くだらないことで争うことはないからね。

ネットでサーチしてみると、意外とこの映画は評判がイイんだね。J・フォスターのファンにとってはたまらない映画なのでしょうが・・・。主役が宇宙科学者なら“初老のじいさん”の方が現実的だと思うが・・それでは映画にならないもんね。
この映画をどう感じるかは人それぞれだから、賛否両論あるのは当然です。映画としてはそこそこヒットしたんだから それでイイんじゃないかな。それにこのサイトの目的であるハムシーンはまあまあ良かったから・・・。(2004年2月)

 


 



■オーロラの彼方へ   原題:FREQUENCY
2000年 アメリカ合衆国 New Line Cinema  カラー 118分
監督=グレゴリー・ホブリット [Gregory Hoblit]、 脚本=トビー・エメリッヒ [Toby Emmerich]  

古い無線機を介して 30年の時を越えた“声のタイムトラベル”で結ばれる親子の絆を描いた SFファンタジー・サスペンス。

出演: デニス・クエイド [Dennis Quaid],
 ジム・カヴィーゼル [Jim Caviezel],
 エリザベス・ミッチェル [Elizabeth Mitchell]


●ストーリー

警官のジョンはある日、自宅の物置から古い無線機を見つける。空にオーロラがかかる夜、無線機から交信を求める声が聞こえてきた。それは30年前、火災現場で死んだ消防士だった父フランクの声だった。ジョンはフランクにアドバイスを与え、命を救うが、過去を変えたことで思いもかけない事件が起こる・・・。

●感想
宣伝では、「全米を感動の渦に巻き込んだ」・・・なんていっていましたけど、結構せわしい映画でした。確かに基本テーマは家族愛なのですが、そこにSF、サスペンス、アクション・・・様々な要素が入り組んでいる複雑な展開であった。まあ、タイム・トラベルもので過去を変えたことによる歪みで悪戦苦闘するのはよくあるパターンなのですが。タイム・トラベルといっても今回は無線を通じた声だけというのが特徴で、紆余曲折の展開中はお互い会うことは出来ないが声によって父と子が協力して苦難を打開しようとする。

死ぬはずだった父が、未来からの息子の無線で助かったことで、死なないはずの人が死にそうになったので、そちらを助けに走り回り、殺人犯と間違われたり、真犯人に襲われたり・・・とにかく見るだけで疲れる映画でした。
ラストは感動した人が多かったでしょうが、なかには気に入らない人もいるでしょう。どう感じるかは人それぞれですので・・・。私としてはハッピーエンドの映画は好きではなく、後味が悪い映画が好きなのです。個人的には父親は死んだままで、「やさしくて勇敢な父」という想い出だけでよかったと思うのですが。
とにかく、それなりに楽しめる映画だと思いますので、まだ見ていない人は全国のどこのレンタルビデオ店にもありますから、暇な時にでもどうぞ!


アメリカ映画って退屈なのが多いけど、これは退屈はしなかったので、映画としては面白かった。
過去と未来の理論や整合性を疑問視する声もあるようですが、映画なんだから細かいこと気にしなくてもよいのではないでしょうか。
それよりも邦題の「オーロラの彼方へ」が気に入らない。今回は事前に無線関係筋からこの映画の情報が入ったが、題名だけでは無線など想像もできない。アラスカあたりの北の大地で、たくましく生きる家族の物語りのようなものかと思われる。原題がFREQUENCY(周波数)なのだから、そのままか、電波を想像できるような題名にしてほしかった。
また、この映画はJARLも協力したらしいのですが、具体的に何を協力したのかは知りません。JARLのHPや機関誌(JARL News)にも映画の宣伝が掲載されていました。そして、全国の劇場ではJARL会員証提示で1000円で入場でき、同伴者も200円(学生は100円)割引されました。
 (2002年10月)

FREQUENCY 特製QSLカード
▲2000年ハムフェア会場(パシフィコ横浜)にて、ビジネスブースで先着配布された映画宣伝用QSLカード







■リメンバー・ミー    原題:同感
2000年 韓国 111分
製作:ハンマック・フィルム、 監督:キム・ジョングォン、 脚本:チャン・ジン

不思議な無線機を介して、およそ20年の時を隔てて交流し心を通わす男女の愛の物語を描くファンタジックラブストーリー。

 
出演
キム・ハヌル(ユン・ソウン)
ユ・ジテ(チ・イン)
ハ・ジウォン(ソ・ヒョンジ)
パク・ヨンウ(チ・トンヒ) 

●ストーリー
1979年に生きる女学生(キム・ハヌル)は軍隊から帰ってきたばかりの先輩に片思い中。彼の姿をこっそり盗み見ているのを気づかれそうになって、慌てて隠れた場所がアマチュア無線通信サークルの部屋だった。そこでひょんなことから古い無線機を手にした彼女だが、ある皆既月食の夜、不思議な事にその無線機から男の声が流れてくる。「CQ CQ DS1AVO・・・」男は同じ大学に通う学生(ユ・ジテ)だった。会話をするうちに会おうという事になるが、お互いに待ちぼうけを食わされて会えずじまい。それもそのはず、男は2000年に生きていたのだ。
始めは信じられなかったが
、違う次元に存在していることを理解し始め、社会事情や
恋の話しをするうちに お互いが打ち解けていく。しかし、彼の何気ない一言で、彼女は驚愕の事実を知ることに・・・。


●感想

この映画もそこそこヒット(韓国内で)しましたので、詳しいストーリーは省略しますが、当初は「韓国版オーロラの彼方へ」とも言われていました。それは、同時期に公開されたこの2つの映画は、過去と未来の人間が出会い、その手段がアマチュア無線であったこと。電波が時空を越えたきっかけが珍しい自然現象(オーロラと皆既月食)だったことなどの共通点があったからでしょう。しかし、ストーリー展開は“オーロラの彼方へ”とは対照的なものでした。リメンバーミーでは、SF的な要素は薄く、サスペンスやアクションといったものでもない。なぜ、過去と未来がつながるのか、過去を変えると現代にどのような影響が出るのかといった理屈は問題ではないのです。二人の恋物語と思えばよいのです。恋といっても、それぞれの時代でつき合っている相手に関する悩み相談のような面があり、なかなか味わい深い仕上がりになっています。

「オーロラの彼方へ」では、主人公が過去を変えようと四苦八苦するのだが、リメンバーミーでは彼女が自分の未来を受け入れようとする点が大きく異なるのです。自分の未来を知った場合、それを自分に都合の良い方向に変えようと奮闘するか、それとも運命として直視するかは、人それぞれで意見が分かれるところでしょう。私個人としては、面倒なことが嫌いな性格ですので、“オーロラの彼方へ”よりも“リメンバー・ミー”のほうが受け入れやすいのですが・・・。
面白いのは、タイムスリップといっても僅か20年ほどだし、お互いに生存しているから、彼は現在の彼女(未来の姿)を見ることができるのだ。ラストで、彼女に逢いに行っている。そして無線で「今日、君に逢った。幸せそうだった」と報告している。


ちなみに、無線の電波伝搬は太陽活動(特に11年サイクルの黒点変動)の影響が大きいのです。オーロラも太陽活動の影響ですから、無線と関係があるといっても不思議ではありませんが・・。
一方この映画の皆既月食とか満月は、無線の伝搬とは関係ありません。流れ星であれば電波の異常伝搬でメテオスキャッターという現象を発生させるので、月食ではなく流星群にすれば少しはファンタジックな面でのリアル感があったのですが。
とにかく映画としては、なかなか楽しめる良い作品だと思います。
最近は韓国映画を見る機会が増えてきましたが、優れた作品が多い印象を持ちました。 (2002年10月)






 
■時の香り 〜リメンバー・ミー〜
2001年 日本 77分 
製作=リメンバー・ミープロジェクトPRESENTS、 監督=山川直人、 脚本=吉田

韓国映画『リメンバー・ミー』のリメイク版で、日本版リメンバー・ミーです。

 出演
百合/吹石一恵 (1979年の女.キム・ハヌルの役に相当)
優二/斎藤工 (2001年の男.ユ・ジテの役に相当)
美樹/北川弘美 (2001年の女.ハ・ジウォンの役に相当)
香取/山中聡 (1979年の男.パク・ヨンウの役に相当)

●ストーリー

1979年、校内暴力の嵐が吹き荒れていた時代、東京の大学に通う百合(吹石一恵)は教育実習を母校の高校ですることになった。その学校には憧れの先輩・香取(山中聡)が赴任している。高校では、ひょんなことから百合には全く知識がない通信部を受け持つ事になる。顧問の玉木先生(田中要次)から一台の古い無線機を渡される。警備員(螢雪次朗)に促され仕方なく家に持ち帰るが使い方が分からない。
ある月夜の晩、部屋の片隅に放っておいた無線機から突然、雑音と共に男の人の声が聞こえてくる、「CALLING CQ CQ こちらは JS7BCZ/1・・・」驚く百合は応答の仕方もわからず「もしもし」などと言ってしまい相手に笑われてしまう。しかし、無線のむこうの青年は誠実で百合に無線の操作を教えてくれるという。
その後アイボールすることになり、二人は待ち合わせの場所や日を約束した。しかし、会うことが出来なかった。というのも実は、百合は1979年で、無線の青年は2001年に生きていたわけである。
やがて、相手は22年の時を経て2001年に生きている、優二という青年だと分かる。当初は驚いた二人だったが、時を越えた通信を通してそれぞれの恋や悩みを語り合ううちに、次第に打ち解けていく。しかし、優二の何気ない一言で、百合は驚愕の事実を知ることに・・・。



●感想
同じ題材を韓国と日本でそれぞれ製作して同時期に公開するというユニークな企画であったが、それにどういう意味があるのかは、よくわからない。ワールドカップの共同開催が念頭にあったのかもしれないが・・・。通常、リメイク版は何年か後に製作されるもので、内容も規模もオリジナルを上回るものなのですが。しかし、本作品はすべての面で、オリジナルより劣る内容となっている。物語のつくりは韓国のリメンバー・ミーの方が丁寧で優れている。だから、韓国版はそこそこヒットしたが、日本版は映画自体がさほど知られていない。それに見ようと思っても、大都市圏の特定の劇場でしか公開されなかった。全国一斉公開するほどの作品ではないからです。

内容はオリジナルをかなり忠実に描こうとはしているが、韓国と日本では隣国とはいえ国情が全く異なる。1979年頃の韓国は夜間外出禁止令もあったし政治的にも激動の時代であった。韓国では20年の間に軍事政権から民主化になり、オリンピックも開催し、急速な経済発展を成し遂げた。それに対して日本の20年前は今とさほど変わりはない。日本はバブル期の前で既に平和で贅沢で豊かな時代であった。あえて言えば、わがままに育ったガキどもによって校内暴力が問題となっていた時期である(厳密には校内暴力も80年代に入ってからですが)。そこで、本作品も韓国の学生運動を日本の校内暴力に置き換えている。でも大学には校内暴力がないから、高校の教育実習というこじつけの設定も苦しい。
交信場面で、「2001年は全く違う世界だよ!君に見せてあげたい」と言っているが20年前と何処が違うのだろうか。・・・だから具体的な事象の話題が少ない(驚くべき社会的変化が無いから省略せざるを得ない)。・・・だからオリジナルより34分も短くて内容が薄い。

基本的に両国の時代背景が異なるのでどうしても無理があり、日本版はリアル感があまりない。それにしても脚本がひどい。役者の台詞や演技が下手なのは新人だから仕方ないとしても、もう少し自然に描けないものだろうか。そもそも高校の教育実習は2週間しかないのですが・・・。私の経験からしても、自宅に帰ってからも次の日の授業の準備で寝る時間もなかったから、実習期間中に愛だの恋だの考えたり、歓迎会や飲み会をする暇などなかった。物語りでは、実習開始日に友人が足を骨折したが実習期間中に完治しているし、実習後半に憧れの先輩が腕を骨折し、それも実習期間中に完治している。だから物語りは2カ月程度と思われる。

ラストで現在の彼女とすれ違うシーンはオリジナル韓国版は感動的であった。しかし、リメイク日本版は素っ気無かったし、彼女は輝いていなかったし幸せそうな表情には見えなかった。それにとても40歳代ではなく20代にしか見えなかった。オリジナル版での「美しい」とは容姿ではなく、歳はとっているが一人の自立した女性として輝いていたということなのだが日本版は何か勘違いしているのか(単に主人公の演技力不足かも)。それにオリジナルでは彼女は母校で英文科の大学教授として勤務していたが、彼が入学する年に本人希望で他校に移動している。そこが彼女の心理描写で重要な点であるのだが、日本版ではそこが省略されている。


 
リメンバー・ミーの韓国版と日本版は、ビデオやDVDで日韓ダブルパックなども発売されたようですが、どちらかを見るとすれば韓国版をお勧めします。暇な方は両作品を較べてみて、日本映画の質の低さを実感するのもよいでしょう。
ちなみに主役の吹石一恵さんは、プロ野球の近鉄バファローズで活躍した吹石選手の娘さんということです。タレントの吹石一恵さんは知らないし興味もないが、父親の吹石選手はパ・リーグファンの私としては懐かしい名前である。
それから「優二」という名前は、韓国版で同役を演じた役者の名前「ユ・ジテ」から考えたものらしい。そんな細かいことにこだわるなら、物語の設定にもっとこだわってほしかった。


 
●余談・・・
あらためて日本の1979年と2001年を振り返ってみたが、本当に何も変わっていないように思える。韓国と違い、日本は政治体制が変わっていないのだから世相の変化が少ないのは当然でしょうね。科学技術ではインターネットと携帯電話の普及という意見が多いようですが。1979年は個人向けパソコンが普及し始めた頃なので、パソコンで通信できるようになっても驚くことではないですね。携帯電話といっても、アマチュア無線家にとっては30年以上前からハンディ機を手に持って移動しながら自由自在に通信していましたから、それが携帯電話では一般の人も移動先で通信できるようになっただけのことです。
この映画では、空気汚染とか バブル とか 阪神が優勝 とか いじめ とか言ってました。大気汚染は'70年代が深刻で、むしろ現在の方が規制が厳しい為きれいです。好景気と不景気は繰り返すのが常ですから別に驚くこともないですね。いくら阪神が弱くても20年に一度くらい優勝しても不思議ではないでしょう。いじめや自殺は今も昔もありますし。
私が子供だった1970年代の子供図鑑や絵本には21世紀の想像図みたいなのがあって、そこには超高層ビルの間に透明のパイプのような高速道路があり、ロケットのような自動車が自由自在に飛んでいた。月には基地があり人間が生活していたりした。・・・現実に21世紀になってみると'70年代とあまり変わっていない。文化的にも科学的にも想像していたほど著しい進歩はなかったようです。
 (2002年10月)

 

 


 

■スカイ・オブ・ラブ  原題: 愛,断了線 /SKY OF LOVE
2003年 香港=中国,  日本公開は2005年7月
監督:タン・ファータオ

韓国で2000年に製作された『リメンバー・ミー(同感)』のリメイク作品です。
日本版 『時の香り〜リメンバー・ミー』(2001年)に続きリメイク作品としては2本目です。
舞台を上海に移し、ジジ・リョンとF4のケン・チュウ主演による、時空を超えたファンタジー・ラブストーリー。

キャスト:
ケン・チュウ、 ジジ・リョン、 トン・ダーウェイ

●ストーリー

1981年の上海。女子大生のシャオジャーは合宿帰りの先輩ウェンタオに想いを寄せていた。
皆既月食の日、彼女が偶然手に入れた古い無線機から男性の声が聞こえる・・・CQ CQ DS1AVO・・・それは同じ大学に通うジャーフェイであった。さっそくキャンパスでアイボールの約束をし、二人とも間違いなくその場所に行ったのだが、何故か会うことができなかった。というのもジャーフェイは2003年の世界に生きていたのだ。最初は信じられない二人であったが、色々話すうちに事実だと分かり、お互いが打ち解けてゆく・・。しかし、ジャーフェイのなにげない一言で彼女は驚愕の事実を知ることに・・・。

●感想
F4 って何だ?・・とか思って調べてみると、台湾の人気アイドルグループらしいです。
ジャーフェイ役ののケン・チュウがそのグループの一人ということなのですね。
リメーク版に人気アイドルを起用するパターンはよくあることなので、それはそれでいいんです。

日本版の『時の香り〜リメンバー・ミー』では、無理やり日本の事情に合わせようとして、結局つじつまが合わず、グダグダのダメダメ映画になってしまった。その点この『スカイ・オブ・ラブ』は中国の事情は深く考えず、韓国版オリジナルをほぼそのまま再現しているので自然な仕上がりとなっています。少し変えている部分もあるが、そこは冗長さが感じられる。20年の時の社会変化には深く入らず、経済発展したが人の心は貧しくなりつつある・・といった具合にぼかしてある脚本がなかなか良かったと思う。ただ、そのままリメイクとはいえ、呼出符号までそのまま DS1 というのはハムとしては気になるところです。架空のものでいいのだから、適当に中国のコールサインにしてほしいところです。

残念なのはラストシーンで、ジャーフェイの前をシャオジャーが通り過ぎる場面の演出がダメでした。
過去を引きずって未練タラタラ・・・振り向きそうで振り向かない・・なんだか仕草が貞子みたいに思えました。
なかなかイイ感じの仕上がりだったのに、ラストで台無しです。そこは日本版より酷いです。
あの場面は彼女は彼の存在に必ずしも気づく必要はないんだよね。
一人の自立した女性として(内面的に)輝いていて、ジャーフェイから見て幸せそうに感じればいいわけです。
風格を持って堂々と通り過ぎればいいんです。(老けた)顔を見せないというのもダメです。
あの演出じゃあ シャオジャーは今後も過去の心の傷を引きずって生きていくみたいに感じました。

最後にジャーフェイが無線機を放り捨てて、現代の彼女と歩んでいく光景からすると、
この物語りがジャーフェイ側の視点で描かれていることは明らかで、そこがオリジナルと大きく異なります。
要するに、アイドル映画として、F4のケン・チュウを主役に置くことを目的に製作されたのだと思います。
ラストを除いては日本版よりマシなのですが、やはりオリジナルを超えるものにはなりませんでした。


あと、映像からは20年の時の差を感じませんでした。
上海で20年前と現在といえば、日本の高度成長期よりも激しい発展をしています。
20年前は私は長期留学で中国(北京)の大学に通ってました。上海にも行ったことがあります。
20年前の中国にシャオジャーみたいな服装の女性はいませんって!
色々な服を着てましたが、基本デザインは地味な人民服とか工人作業服でしたよ。
アイドル映画という意味合いが強いにしても、映画の中でも一人浮いてましたよね。
時代考証も少しは取り入れてほしいところです。 (2008年5月)

 

 

 

■崖の上のポニョ
2008年7月 東宝系公開 カラー 101分
原作・監督・脚本:宮崎駿
  音楽:久石譲
スタジオジブリ 日本テレビ 電通 博報堂DYMP ディズニー 三菱商事 東宝 提携作品
特別協賛: アサヒ飲料  特別協力: ローソン 読売新聞

宮崎アニメとして有名なスタジオジブリの作品にアマチュア無線が登場しました。
主人公の宗介(5歳の少年)の母と父(船長)がハムで交信するシーンがあります。
さらに 宗介が父の船と発光通信をする場面もあります。
また、ポニョの好物がハム(肉の加工品)であり、無線のハムと食べるハムという二重の意味のハム映画(?)でもあります。

声の出演:
土井洋輝(宗介)、奈良柚莉愛(ポニョ)、山口智子(リサ)、長嶋一茂(耕一)、
所ジョージ(フジモト)、天海祐希(グランマンマーレ)、柊 瑠美(婦人)、
矢野顕子(ポニョのいもうと達)、吉行和子(トキ)、奈良岡朋子(ヨシエ)
 
●ストーリー

海沿いの街を舞台に、「人間になりたい」と願うさかなの子・ポニョと5歳児の少年・宗介の物語である。
詳しくは 【崖の上のポニョ公式サイト】 をご覧ください。

●発光通信(モールス符号)
開始25分くらいで 光モールスの場面が出てきます。

沖を航行する耕一の船に宗介が発光器でモールス符号を送っています。

(帰れなくて)ゴメンって言っている・・とリサに伝えると・・・
リサが宗介に送る符号を指示・・・「B A K A」
耕一からは、「愛してる・・・とっても、とっても」 とか返ってくる。
それに対して リサが超高速で「B A K A AAAAA・・・」


すると、船のイルミネーションを点灯してご機嫌をとったりしてました。
リサの駄々っ子のような言動とは対照的に
宗介は冷静で 「航海の安全を祈る・・」 と打ち返します。
宗介のほうが精神的には大人のようです。5歳でも立派な海の男です。

●ハムシーン(無線電話)
開始55分くらいで無線電話のシーンがあります。
嵐で耕一の船を心配して呼びかけます。

庭にV型ダイポールアンテナを立てて・・・
無線機で周波数を合わせるがコンディションが悪い・・・
周波数は 【50.19**】


宗介:「通じない?」
リサ: 「電波という電波がダメみたいね」
  「こちらは JA4LL, JA4LL 耕一聞こえますか?」
  「こちらは リサと宗介とポニョです。みんな元気ですよ」
宗介: 「今からご飯を食べるよ」
ポニョ: 「ハム〜」
            ※応答は無し



●感 想
広い庭があるのに、何故かアンテナは移動運用のように、その都度設置します。
庭にポールを差し込む穴があります。なぜ固定しないのかな?
アンテナはバンザイアンテナ(V型ダイポール)で片側のエレメント長は2mくらいで、先端にハットエレメントが付いています。Vの角度が60度くらいです。
50MHzのフルサイズだと片側1.5mですから、おそらく28MHz帯にも出られるデュアルバンドだと思う。カタログで調べて、最も似ているのがラディックスRD-S106 だと思います。

リグは周波数に注目してましたので、機種まで確認する余裕はありませんでしたが、デジタル表示の比較的新しい機種のようです。多分アイコム製だと思います。

嵐で停電中なので、無線通信の為に発電機を回します。
なかなかエンジンが掛からず 「ガソリン腐ったのかなぁ?」と言ってます。
(ポニョの魔法で詰まりを直してエンジンスタートします)
ガソリンが腐るということを知っているのもハムらしいところです。

コールサインはリサ(JA4LL)のものしか放映されませんでした。
2文字コールですから、発給は昭和30年代中頃だと思います。物語が昭和50年頃だとすれば、(15歳前後で取得したとして)リサの年齢と合致します。手元にある1978年の局名録によると、実際の免許人(現在は局免切れ)は筒井OM(T 14年生)となっています。どうやら元 三井船舶の通信長だったようです。ということは、一時期は私の父と同じ会社の人(たぶん船は違うでしょうけど)だったことになります。
あと、耕一も免許を持っているはずですし、宗介もモールス信号の送受信ができるのだから、3アマ(昔なら電信級)を持っていても不思議ではありません。
宗介が免許を持っていない場合は、マイクに入った宗介の声はバックノイズという扱いになり、法的には大目に見られます。

崖の上の家は独立タンク、プロパンガス、発電機、無線機・・・というインフラがあるから、災害時でも生活できるという点も興味深かったです。近ごろ盛んにテレビCMやってる 『オール電化の家』 なんて停電したら何もできないじゃん・・とか思いました。

物語り全般の感想はブログ:CWL通信『崖の上のポニョ(その1)』に書きました。
 

 
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