![]() エンジニアから見たグローバリゼーション 2003年4月 1.ネットワーク時代のシステム開発 情報システムを計画・開発している側からこの変遷の歴史を見ると、「効率」や「生産性の向上」を目指してきた今までのシステムの目的が、ユーザーや従業員という「個人」にどのようなサービスをすれば良いのかという方向にシフトしてきている。組織も「情報システム部」といった専門的な部門よりも「経営企画部」といった戦略部門が主導権を持って開発を推進している。何よりも大型ホストコンピュータがなくなって、サーバ機と呼ばれる小さなコンピュュータが,ネットワークの主役になっている。 開発も自分の会社にあった独自システムを作るのではなく、既存の業務パッケージにあわせて仕事のやり方を変えていく傾向にあるし、ソフトウェアもネットワーク上から持ってきて組み立てることが一般的になってきた。 こうなると今までのように大手メーカーやソフトウェア会社がリーダーシップを取って開発を進めてきた従来のやり方は通用しなくなり、ユーザーは自分で主導権を持って開発を進めるという構造になってきた。ネットワークの時代になって、組織がよりオープンでフラットになってきたのは必然かもしれない。 2.グローバル化 ネットワークの進展で、人々や社会の連結の仕方が大きく変わっても、実は精神的な満足感とか、価値観までが変わってきたわけではない。グローバル化の名のもとに世界中のあらゆる人たちが、情報を共有しているかというとそんなわけはなく、パソコンを動かす電気すらない地域も多い。こういった中で文化的な差異は解消できないし、そもそも歴史や文化、民族学的なさまざまな生活スタイルなどはそう変わるものではない。 国内において情報化の恩恵を享受している人も多いが、機会を得られないまま何の不自由もなく生活している人も多いのだ。誰でもがネットワーク社会に均等に参加できる機会を持っているわけではないし「情報」を得る技術を持たないとグローバル化の波に乗れないという社会ができるなら、それはまた新たな不均衡が生じる恐れもある。 3.ユニバーサルデザイン 商品の機能は多様化、複雑化する傾向にある。「キカイ」に弱い人の判断基準がビデオの録画ができるかどうかだったが、今はパソコンができるかどうかまで引き上げられ(?)た。しかしユニバーサルデザインの観点からは「誰もが使いやすい」ものでなければならないが大前提である。 高齢者を例にとって見ると一般に弱いと思われる点は@新しい概念に対する理解力・受容性、A複雑なものの記憶、B小さい文字・音の判別、C反射的対応、D異なる動作を同時にすること等々があげられる。しかし今のパソコンを見ると、高齢者でなくとも、とてもではないが使いづらいしわかりにくいものだ。 そもそも新しいソフトやOSを入れ替えるたびにトラブルが発生し、「それはあなたの責任です。」といわれるのだからユーザーはたまったものではない。メーカーはパソコンは道具であるという認識がないのではと思ってしまう。 4.デジタルコンテンツ デジタルコンテンツはゲームや映像、音楽などのほかに、世界中の文化遺産、本や百科事典、古文書、美術品、教育、医療、製品開発など、あらゆるものがその対象になっている。その背景にはデジタルカメラ、スキャナー、DVDなどのハードウエア・ソフトウエアの普及と「高速・大容量・低価格」のブロードバンドの出現が加速したからと考えられる。 デジタルコンテンツは加工が簡単にできる、複製しても品質の劣化がないなど極めて利便性が高いが、一方ではこのデジタルの特性が不正なコピーや作品の改ざん、無断配信などの社会問題を生んでいるのも事実である。 5.まとめ エンジニアは物を作ったりしかけを考えたりすれば終わりではない。どうやって使ってもらうか、そのためにはユニバーサルデザインの普及、ニーズの高いコンテンツの用意なども怠ってはいられない。そしてネットワークがシステムをこう変える、ビジネスがどう発展するという提案までもとめられている。ユーザーの要求とエンジニアからの提案。この二つの力がグローバリゼーションという大きなうねりをおこしているといえる。 2003年4月20日 oggi
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