Requiem for the Summer Game

Requiem for the Summer Game
(4.3.HP.2000)

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今回は ESSAY から
  野球人気はアメリカでは衰えているのですね。日本では考えられないことです。とすると、日本の一流選手がアメリカに行くってのは何なのでしょう?

プロ野球哀歌


語彙は主に『英辞郎』Ver.28から抜粋

BY CHARLES KRAUTHAMMER
 

大意

語彙

HP 野球の季節は戻ってきたが、人気は戻ってくるか?ああ、悲しいかな、野球は 死にかけている requiem : レクイエム,鎮魂歌
1 今年は春のトレーニングをしていないのだろうか?どこかでやっているのかも 知れないが、新聞を読んでもスポーツニュースをみても分からない。たった10 年前まで、記者にとっては、3月になれば、土臭いフロリダのキャンプへ取材に 行き、野球への詩情をつのらせるというのが義務みたいなものだった。今では野 球の記事を1行でもみつけられたら幸運というものだ。かつては春はカキーンと いうバットの快音、芝生の臭いだった。今は、春といえば、'春の熱狂'--大学バ スケットボールだ。 spring training : 春季トレーニング、 sportscast : スポーツ放送、 decade ago : 一昔前に、 obligatory : 義務的な,必須の、 pad down : 捜す、 funky : いかす,生き生きとした,嫌なにおいのする、 coverage : 報道、 hoop : バスケットボールのリング[ゴール]
2 野球界の大御所たちは人気は戻ってきているという。「かつてないほど盛り上 がっていますよ。」と、バド・セリグコミッショナーは、98年のマグワイヤー とソーサーのホームラン争いの後、自慢げに語ったものだ。確かにあの時の爆発 的な興奮は、野球の人気は戻ったとの印象を広く与えた。 baron : 大立者、 than ever before : かつてないほど、 boast : 自慢する、 commissioner : コミッショナー、 rebound : 回復
3 だがそうではなかった。野球は深刻な衰退の途をたどっている。観客数は破局 的な1994年のスト以来回復することはなかった。NFL のプレシーズンのゲー ムのほうが野球のレギュラーシーズンのゲームよりも人気があるというのがごく 普通になってきている。いやはや、モントリオールやカンザスシティのような小 都市に本拠地を置く弱小チームの観客動員数は、ワシントンの女子バスケットボ ールチームにも及ばない。 attendance : 観客動員(数)、 catastrophic : 悲劇的な、 preseason : シーズン前の、 NFL :National Football League、 routinely : いつも、 outdraw : 人気がある、 regular-season : 公式戦での、 draw : 引き付ける
4 そしてテレビでも野球は死にかけている。NBC は2000年の放送権を獲得す るのに4億ドル支払った。だが1997年のワールドシリーズの視聴率は破滅的 に悪く、NBC のドン・オールマイヤーは公然とどちらかの4連勝に終わることを 願った。野球、それもワールドシリーズの放送をしない方が視聴率はよいと考え てのことだった。 NBC :National Broadcasting Company、 rating : 視聴率、 bust : 失敗した、 pray for : 〜のために祈る、 sweep :一掃,《野球》連勝する
5 もし野球の人気が回復しているというのなら、どうして、ESPNを相手取って 裁判を起こすような事態が生じたのだろうか?ESPNは、日曜ナイターの放送予定 を取り消し、シーズン初めの NFLの試合を放映したためではなかったか。しかも ペナントレースが煮詰まり最も盛り上がる9月下旬のことだった。テレビで放送 されるためには裁判の力を借りなければならないということ自体、何かを如実に 物語っているではないか。 sue : 賠償訴訟を起こす、 ESPN : Entertainment and Sports Programming Network 娯楽・スポーツテレビ 放送ネットワーク、 bump : 〜に対して予約を取り消す
6 だが話しはまだ終わりではない。もっと悪い話しがある。野球の最大の問題は、 観客数でも視聴率でもない。それは沈黙なのだ。話しのねたがない。引きつける ものがない。ざわめきがない。ラジオのスポーツトーク番組では、シーズン中の 野球よりオフシーズンのアメリカンフットボールやバスケットの話題の方が多い。 究極の屈辱は、シーズン中の野球はそっちのけで、スポーツ番組が、NFLやNBA のドラフトを一日中生放送することだ。 rating : 視聴率、 buzz : うわさ、 off-season : シーズンオフの、 on-season : シーズン最中(の)、 humiliation : 屈辱、 around-the-clock : 24時間ぶっ通しで、 live coverage : 生中継、 NBA : National Basketball Association
7 野球はどれほど地に落ちたことか?ちょっと考えてみればその理由も頷ける。 野球で一番劇的なものは満塁ホームランなのだが、極めて稀にしか見られない。 満塁ホームラン王はルー・ゲーリックだが、そのゲーリックでさえ生涯に放った 満塁ホームランの数はたったの23だ。20世紀に行われた15万ゲームの中で、 一人の選手が一試合2本の満塁ホームランを放った試合はたった9試合しかない。 130万以上あるイニングの中、1イニングに満塁ホームランを2本打った者は 一人もいなかった。 dramatic event : 劇的事件、 grand slam (homer) :満塁ホーマー、 all-time : 最高記録の
8 少なくとも昨シーズンが始まるまでは。昨年の4月23日、マーク・マグワイ ヤーの後を打つフェルナンド・タチスは、ついに1イニング2満塁ホームランを 達成した。だがもっと驚くべきことはこの偉業がほとんど注目を集めなかったこ とにある。タチスの1イニング2満塁ホームランの奇跡は翌日の新聞でほとんど 取り上げられなかった。アメリカ人なら皆ブランディ・チャステインを知ってい る。では、アメリカ人に、1イニングに満塁ホームランを2本打ったのは誰でし ょう、と尋ねてみると良い。 unremarked : 注目されていない、 grand slam : 満塁ホームラン
9 野球が王座にいた50年前なら、タチスの偉業は、ビッグニュースだ。36ポ イントの大活字の見出しが紙面を飾ったことだろう。タチスと同じような偉業か ら、野球の全盛期には様々なものが生まれた。偉業を讃え歌が作られた(ジョル チン・ジョー・ディマジオ)、伝説が生まれた(快音が世界にあまねく響きわた った一発)、選手名から形容詞が生まれた(Ruthian)、 選手名をとったキャン ディーバーが作られた。だが今日では夜のニュースは試合結果さえ報じない。 feat : 偉業,快挙、 legend : 伝説、 adjective : 形容詞、 coin :(新しい言葉を)作る、 ballplayer : 野球選手、 candy bars :チョコレートベースの棒状の菓子,スニッカーズもその一つ、 bother to : わざわざ〜する、 scores : スコア
10 何が起きたのか?それは、現在風のもの全てと同じように、テレビの出現と共 に始まった。野球はラジオ放送に向いた典型的なスポーツだ。プレイが非連続的 で、流れがゆっくりとしており、耳で聞いただけでも試合の様子を思い描ける。 野球は、テレビに完全に向いているアメリカンフットボールやバスケットボール にとって変わられたのである。テレビ画面に映し出されるアメリカンフットボー ルやバスケットボールはまるでバレーショーのようだ。 as with : 〜と同様に、 quintessential : 典型的な,、 discrete :不連続の、 deliberate : 慎重な,計画的な、 balletic : バレエ的な、 spectacle : 見世物,光景,壮観
11 だがテレビの問題が始まってからもう50年にもなる。野球の急低落はもっと 最近のことだ。それは新たに生じた有害な二つの事情に起因する。第1に、スタ ー選手は同じチームに居残らなくなった。FA 制度のもと、大物選手はチームを 渡り歩く。2000万ドルの大金でチームを渡り歩く億万長者にファンが夢や希 望をかけることなど、否興味を抱くことさえできるだろうか。実際そんなのは ほとんど馬鹿げている。 precipitous : 絶壁の,崖のような、 baleful : 有害な、 star player : 花形選手、 free agency : フリーエージェント制、 move around : あちこち移動する、 zillionaire : 超大金持ち、 carpetbag : 渡り者
12 もっと悪いことに新たなカースト制度が生まれている。間もなく開幕を迎える が半数のチームは、初めから勝算がない。財政的に勝負にならないのだ。ミネソ タやモントリオールやカンザスシティやフロリダは、マイナーリーグも同然だ。 マイナーリーグのような試合をするという意味ではなく、マイナーリーグと同じ ような機能を果たしているという意味だ。若手がスター選手に育っていくとすぐ、 ニューヨークとかボストンのような金持ち球団に高値で売り払われてしまう。 caste system : カースト制、 be out of the running :勝算がない、 financially : 財政的に、 minor league : マイナーリーグ、 develop into : 高じて〜になる、 stardom : スターの身分[座]
13 人気が失われていくにつれ、野球は、人々の思い出を利用してどうにか生き延 びようとしている。野球の大事な逃げ場は過去の栄光の名場面なのだ。それは時 と共に遠のいてしまうから、ますます頻繁にそして絶望的に過去の栄光を思い出 させようとする。往年の名勝負、往年の名選手、最高の思い出。去年のオールス ターでただ一つ心に残ったのは、始球式でマウンドに立ったテッド・ウィリアム ズの姿だった。彼が最後に打席に立ったのは40年前だった。ノスタルジアは店 をたたむ前の最後の売り物だ。 fade : 次第に消える,色あせる、 refuge : 避難所、 glorious : 光栄ある,名誉ある、 recede : 遠ざかる,薄れる、 desperation : やけくそ,絶望、 vintage : 古くて価値のあるもの、 mound : 《野球》マウンド、 first pitch : 《野球》初球、 at bat : 《野球》打席について、 nostalgia : ノスタルジア,懐古の情、 shutter : 〜を閉める


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