林寧彦・大解雇展・2003
 2003年4月23日〜28日
 於:南青山「蔦サロン」


個展当日の、お持ち帰り用あいさつ文から


本日は、林寧彦の初個展「大解雇展」にご来場ありがとうございます。

「こっそり上達して突然デビューすればカッコイイように思うだろうが、
そういうので上手くなったためしがない。
未熟なうちから笑われけなされながらも平然と続けていくのが大事だぜ」、
という徒然草
150段に背中を押されて蔦サロンを予約したのは半年前のこと。

そのときに、まさか会社を辞めていることになるとは夢にも思いませんでした。

この2月、50歳の誕生月に26年間勤務した博報堂を希望退職しました
(募集期間が
3ヶ月に満たないときには「会社都合」となることが判明したので、
「大解雇展」と銘打ちました)。

個展をやることを決めたあとで、徒然草の151段を読みました。
50歳になっても上達しない芸は止めたほうがいい。
その歳になると周りも気を遣って厳しいことは言ってくれなくなるからなぁ」。
兼好さん、まったく余計なことを言ってくれるものです。

とはいえ、寿命も伸びたことだし、
工芸の世界では50はまだまだこれからじゃないか、と自分を励ましています。
厳しい意見も存分にいただきたいと思っています。
ただし、立ち直れないほどのものは丁重にご遠慮申し上げます。

個展のために数を作らなくてはいけないという初めての経験の中で、
新しい発見もありました。
それは、自分の中にないものは出てこない、という当たり前のことでした。
中を豊かにしてこそ、あふれ出て来るものも美しくなるのでしょう。
これは今後の宿題です。

スタート記念の個展になりました。
ここから何が芽吹いてゆくのか、楽しみにしていただければ幸いです。

                20034月吉日 


2003/04/30

初めての個展が終了しました。

芳名帳を開くと、ご来場いただいたたくさんの方のお名前があります。
友人知人はもちろん、僕の本を読んでメールを頂いていた方、
ホームページや雑誌で個展のことをお知りになった方など、

ものを作るというのはいいですね。
喜んでくださるものを手渡せるから。

手渡すというのは、広告作りの中では経験できなかったし
本を出した時ともかなり違う感情が湧いてくるのを感じました。

あの、分身たちが、それぞれの人の生活の中に入って
何か役割を演じ始めたのかと思うと不思議な気持ちになります。

いまは、心地いい虚脱の中にいます。

心から、ありがとうございました。