東北/南八幡平・小和瀬川中ノ又沢スズノマタ沢〜
葛根田川中ノ又沢下降〜戸繋沢



2009.10.10〜12 佐々木、永瀬


 当初、10月の三連休は太平山地の継続遡行に参加するはずだったが、メンバー1人が欠けたため以前から気になっていた小和瀬川流域から葛根田川へ継続する計画に変更した。はたして小和瀬川中ノ又沢はナメが連続する美しい沢で、楽しい沢旅をすることができた。

10月10日(晴れ)
 東京駅発6時の新幹線こまちで、田沢湖駅へ。今秋一番の寒気が入ってきており、盛岡付近で車窓から見た岩手山は初冠雪していた。山の寒さを思うと身が引き締まる。台風20号が北海道沖に抜けるのが1日遅かったら、この山行は中止となっていたことだろう。珍しく新幹線が遅れて田沢湖駅発9時20分発の八幡平行バスにギリギリ飛び乗る。

 田沢湖経由で宝仙湖畔の男神橋前で10時5分下車。橋を渡って対岸へ。2005年に開業した温泉宿(はなやの森)小和瀬川中ノ又沢がある。ピラミダルな男神山(858m)が印象的だ。天気は上々で紅葉も美しく、約3時間の林道歩きはそれほど退屈しなかった。

 中ノ又林道終点からこの先、しっかりした道が右岸沿いに取水堰まで続いているらしい。10分ほど進んでみるとどんどん高く上がっていくので、戻って林道終点から中ノ又沢に下ることにする。タツノクチ沢出合のすぐ手前だ。13時55分、遡行開始。地図上からは一本調子の平凡な沢を予想するのだが、すぐきれいなナメやナメ滝が次々と現れてうれしくなる。魚影は濃く一つの淵で十匹ほど群がるところも。沢は東から西に向かって流れ、午後の日差しが注ぎ底抜けに明るい。開放的な渓相に紅葉も映える(右写真)。難しいところもなく、沢幅いっぱいのナメを歩くのは至福の沢歩きだ。

 大倉沢が出合うとほどなく取水堰となり、左から越える。15時20分。やや水量も増えて30分も行くと今日の幕場予定の明通沢出合。スズノマタ沢へ少し入った左岸にツエルトを張る。15時55分。薪は豊富で豪勢に焚き火する。予報通り気圧の谷が通過したらしく夜半に雨が降る。

スズノマタ沢 10月11日(曇り一時雨)
 雨は上がったがどんよりとした天気で、7時15分出発。相変わらずナメと小滝が続く。水量比1対1の二俣を過ぎると比較的大きな滝に出合う(左写真)。幅広のボリュームある滝で左隅を慎重に越す。上はナメていて下から見るのと違い20mくらいの高さを感じる。5m滝の上はナメ床が連なり左岸から大沢森(1178m)からの沢が8m滝で出合う。さらに20m級のナメ滝を左から越していくと、まもなく上部二俣。連瀑となっている右沢に入る。2段6m滝の上には8m滝。どんどん高度を上げていく。振り返れば倉沢山(1299m)の稜線が望まれる。平坦になり、まぎらわしい枝沢を確認しながら、最後はヤブ漕ぎもなく曲崎山・大沢森鞍部に飛び出す。9時36分。

 今にも雨が落ちてきそうで肌寒い。稜線反対側は葛根田川滝ノ又沢源中ノ又沢の紅葉頭なので、大沢森へ向かって10分ほど進んでから中ノ又沢に下降する。こちらも大したヤブ漕ぎもなく沢床に立つ。いくつか小滝が出てくるが問題なく、これから長い長い沢下りだ。雨がパラつき始め雨具を着る。蛇行したり分流したりして大きな流れになっていく。この沢もイワナが多い。850m地点あたりから両岸とも広大な段丘が続く。このあたり特に紅葉が美しい(右写真)。いい加減、単調な沢下りに飽き飽きしてきたところで幅広のナメ滝が現れ、2段5m滝を下ると葛根田本流であった。13時10分。

 焚き火をしながらお茶を沸かす。上流の紅葉も見事だ。沼ノ沢出合の滝下を抜けると本流に3m滝がかかる。岩盤を右に左に下っていく(下写真)。20年ぶりの本流だが、下りながらの眺めは新鮮で、やはりきれいな沢であることを再認識する。14時20分、大石沢出合では陽が差して、明るく整地された幕場に泊まりたいと思ったが、なにせ薪がほとんどない。焚き火のできない夜もつまらないので、大石沢に入りながら適地をさがすことにする。

葛根田川本流下降 大石沢は本流同様の岩盤が続いて気持ち良い。戸繋沢に入ると両岸から滝を落とすゴルジュとなるが、簡単に通過。15時すぎ、河原状になった左岸にまずまずの場所を見つけて整地する。20時前に永瀬さんは一眠りといいながら、そのまま起きてこなかった。22時頃まで焚き火番をしていたが、さすがに寒くなりツエルトにもぐり込む。

 10月12日(曇り一時晴れ)
 沢旅も最終日。7時30分出発の直後に現れた沢幅いっぱいに水を落とすミニナイアガラ滝に驚く。高さは10m程度だが、幅は30m位あるだろうか。左から越すと滝上に広がる岩盤も見事。金堀沢を分けると水量も二分し、台風で倒れたばかりのブナ巨木が沢を塞いでいた。この山行はブナハリタケとナラタケくらいしかなかったのに、永瀬さんがついにナメコを見つける。先頭を歩いていても気がつかなかったからさすが。3分の1を残しても、それぞれ袋一杯の収穫だ。

 そろそろ左岸からの沢の確認に気をつかう。3本ほど水量の少ない枝沢を過ぎたが、実は2本目に出合った沢が蟹場分岐の西側に上がる沢だったようだ。苔むした沢から高度を上げいくと、稜線がかなり近ずいていて登りすぎてしまったことを知る。

 平坦になって両岸のヤブがうるさくなってきた。永瀬さんが、左岸小湿原の奥に赤テープを発見して踏み跡を辿っていった。10分ほどで戻って来ると、稜線に出られるという。テープに導かれてあっけなく1100m地点の登山道に出た。11時34分。蟹場分岐を経て蟹場温泉まで1時間もかからなかった。

 蟹場温泉に入り、バスで田沢湖駅へ。駅で空席なしといわれた「こまち」に立ち席のつもりで乗ったら、車掌からたまたま2人分空いているとのことで座席を確保でき、19時すぎには帰宅した。

 【コースタイム】(10/10)男神橋前10:05 滝ノ沢出合12:20〜35 林道終点(遡行開始)13:37〜13:55 取水堰15:20 明通沢出合15:52 スズノマタ沢BP15:55
 (10/11)BP発7:15 二俣7:15 奥の二俣8:35〜8:45 稜線9:36 葛根田川中ノ又沢下降点9:45〜10:05 中ノ又沢890m地点11:15〜11:30 葛根田川本流13:10〜13:45 大石沢出合14:20 戸繋沢出合14:35 780m地点BP15:02
 (10/12)BP発7:30 金堀沢出合8:30〜8:40 1020m地点10:35〜10:45 左岸小湿原11:15〜11:25 稜線11:34〜11:54 ガニ場分岐12:08 ガニ場温泉12:40



HOME1970年代の沢1980年代の沢1990年代の沢2000年代の沢