東北・虎毛山塊・皆瀬川春川本谷



1976.9.1〜4 佐々木、小野


 9月1日(曇り時々雨) 湯沢駅前のバスに乗り、終点の小安温泉から入山。虎毛沢にかかる橋は流され橋脚のみだった。雨が続いたのか虎毛沢の水量は多く、腰までつかって徒渉する。なぜか水が緑色している。踏み跡を拾っていくが、1キロほどで消えて沢に下る。意外に水量が多く、太ももまでの徒渉もあるが、流れが穏やかでヌルが少なく楽だ。右に左に徒渉の連続。

 竹の子森、山猫森の稜線が望まれるころ、河原にマムシを発見。さっそく捕殺して後で食うことにする。ピカピカに磨かれた側壁が現れてくる。まるでカンナをかけたようにツルツルだ。沢筋がやや狭まり、右に曲がるところ最初の滝3mがある。釜が深く、左は側壁が高い。右から垂れたワイヤーを利用して振り子トラバース気味に越える。かつてこの滝には桟道があったようだ。

 ほどなく、三つの滝が豪快に集中する三滝だ。本流の滝は10mで水量が多く、釜も深い。小野が左側をショルダーで登り、ゴボウで引っ張り上げてもらう。すぐ廊下状になって流れが早いので、右岸をそのまま小さく巻いて沢に下りる。右に曲がると気持ちいいナメ床となる。スラブの側壁は相変わらずすごい。

 やがて亀甲模様のついた岩床が現れて興味深い。不思議なものだ。須金岳からの枝沢はすべて滝となって注いでくる。右に左にと小さく屈曲していき、河原状となる。一本立てた際、小野は水際にいたサンショウウオをうまそうに生き飲みした。左岸からナメ滝を合わせると、やがて万滝沢が右岸から注ぐ。平凡な出合で、本流との水量は同比。流木の豊富な絶好のサイト地となっている。夜はマムシを焼いて食べた。

春川のゴルジュ 9月2日(高曇り後霧雨) 水量は昨日より減った感じ。水も澄んでいる。万滝沢出合を出発すると、すぐスラブ滝となる。側壁が高く、釜も丸く大きくて始末が悪い。右をへつり、微妙なバランスで越す。すぐ、8mほどの2段(左写真)。水勢が強く、側壁はますます威圧的。高巻きは小野が左から試みるも不可。結局、釜を泳いで越す。

 ザイルをつないだまま、左、右とナメ状小滝を越えて行く。すばらしい渓相となっている。再び幅広の釜をもつ滝が数個。ゴルジュ最後の滝は右から巻いて懸垂下降する。倒木の山を越えると二俣だ。右俣(西ノ又沢)の方が水量は多い感じだ。本谷の左俣は岩床となり、虎毛のドームが高く望まれる。

 左俣に入ると正面に水流のある30mほどの滝になるが、本流は左に直角に折れ、8mのツルツルの滝を落とす。すぐ上に10mの垂直滝が見える。手がつけられず、ザイルをつけ左の泥壁から10m滝も一緒に巻く。トラバースするところは緊張する。ここからやや平凡な樹林に覆われた沢となる。釜のある滝を左から越え、3〜8mの滝をクリアしていく。

 同水量の二俣は左に一旦入るがすぐ戻る。戻って再び二俣となり(同水量)、今度は左に入る。流木がからんで歩きにくい。再びゴルジュと側壁が現れ、釜にもはばまれ巻く。バンドが2本ある滝は、その上のナメ滝と共に右から巻いて懸垂下降する。巻き終わるとダイレクトルンゼがナメ滝となって注ぐ。水量は結構多い。20、30mとナメが続き、なかなかきれいだ。

 ゴーロとなり傾斜が強まる。振り向くと須金岳から竹の子森がよく見え、西ノ又右俣のうねり具合がわかる。10m滝は、右手のくぼから8mトヨ状も一緒に高巻く。ここで右から水流のある小沢が入り、本流には8m滝がかかるが、この上はナメが4段になって全体として30mほどの長さがある。いやらしいのっぺりとした5m滝を二つ左から巻く。さらに大きなチョックストンを持つ4m滝。直登は無理。高巻きもしんどそうなので、ザイルにハンマーを括り付け投げ縄にしてチョックストンに通し、ゴボウで登る。ここで大滝が見えた。もっと下からも見えていたが、正面の涸滝は本流ではない。

春川本谷大滝 100m位ありそうな大滝は右に直角に曲がっており、下段だけしか見えない。滝下は荒れたゴーロとなっている。奥壁のようで、どんづまりにも思えるところだ。ホールドはたくさんあるようだが、下段は直立しており、水線沿いは無理。右から登るとテラスがあり(左写真)、仰ぐ中段、上段が威圧的。8ミリ30mロープ1本では心許なく高度もあるので、右から潅木にぶら下がって巻くことにする。握力がなくなり、下向きに生える潅木にまたがって時々休む。

 落ち口を越したと思って沢に近づいたら、別の10m滝が見える。いったん沢に下りて左から巻き直す。大滝を巻いて沢に下るとき笹でスリップして、かばおうとした右手をくじいてしまった。もう薄暗く、幕場を探さねばならない。今日は4回の懸垂下降をするなど高巻きの連続で、かなり消耗してしまった。滝の上は沢幅が狭く、源流の様相だが、小滝がさらに続き、良い場所は見つからない。右手にスラブが望まれるころ、割といい砂地を見つけテントを張る。

 9月3日(雨) 様子を見ながら待機する。うっとおしいので虎毛の小屋まで行くことにする。テント撤収時に雨が強くなり、増水し始めた。傾斜が強まる上部の二俣で左が本流の感がするが、5mの涸滝が本流らしい。沢幅は非常に狭く歩きづらいので草地の中間尾根に上がる。70〜80m登ると池塘を発見する。進路を右寄りにとり、時々頂上を見渡しながらのヤブコギとなる。急に寒くなり、雨足もさらに強くなる。寒冷前線が通過したらしい。まだかまだかと思っていたら、ひょっこり小屋の青い屋根が見えてホッとする。夜になると、捻挫した右手首が腫れて痛んだ。

 9月4日(雨) 相変わらず風雨が強い。予定の虎毛沢下降、赤湯又沢溯行は増水で困難だろう。午前中、小屋でのんびりしていると、川崎から来たという単独行の人が小屋に来て、すぐ下山して行った。われわれも午後、赤倉沢登山口へ下山する。

 【コースタイム】 (9/1)小安温泉発8:10 虎毛沢出合10:45〜11:35 三滝14:05 万滝沢出合15:35〜(9/2)6:10発 二俣8:20 大滝下15:25〜55 1200m地点18:20〜(9/3)11:00発 虎毛山12:20〜(9/4)13:20発 赤倉橋16:00 秋ノ宮山荘16:50



HOMEへ1970年代の沢1980年代の沢1990年代の沢